• 2016.05.20
  • 2016年の「王様の日」
その日は家の外に出た瞬間から、あちこちから色んな音楽が聞こえてきます。どっちに向かって歩き出すかを決めれば、朝から晩まで歩き回ることになる一日の始まりです。

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国王の誕生日である4月27日はKoningsdag(「王様の日」)と呼ばれ、オランダでは特別な国民の祝日です。オランダ中の人々がロイヤルカラーであるオレンジ色を身にまとい、共にこの日を祝福します。アムステルダムでは毎年、各地から集まった人々(外国の観光客も含む)がこのお祭りを楽しむ姿が見られます。

王様の日に堅苦しい決まりなんてありません。国中がひとつの大きなフリーマーケットと化し、街は大小のライブパフォーマンスで溢れ返り、運河を運行するボートはダンスに興じるお客さんで一杯になります。この日のアムステルダムは、誰もが見たり参加したりできるお楽しみが至るところで見つかるので、前もってどこに行くか決めなくても大丈夫です。毎年ほぼ例外なく街中が人でごった返すため、たとえ自転車であってもA地点からB地点への移動には時間がかかります。この日は(できればビール片手に)徒歩で動くのが正解なのです。

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私が子供の頃から大好きなのがフリーマーケット。通りに並んだテーブルや絨毯の上で、洋服から花瓶、本、その他あらゆるものが売られています。目に留まったものがあれば、売り手に値引き交渉をしてみましょう。出店が集中する人気スポットもたくさんありますが、物を売る場所は特に決められていないので、誰でも自分の好きな所で販売することができます。朝の6時から屋外で売り始める人、とっておきのお宝を求めて早起きして来る人もいます。このパーティは、安い価格でアイテムを売ることを身上とします。利益を得るのはこの行事においては二の次とされる(またはそうあるべき)ことなのです。私も小学生時代、朝早くから通りの端っこでお店を出したものです。ほんのお小遣い程度の儲けが出たら、あとは他の人たちの売り物や仕事ぶりを見て回っていました。老いも若きも大いに楽しめるのがフリーマーケットのいいところですね。

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ショッピング以外に、ゲームを楽しみにやって来る人もたくさんいます。ゲームはとりわけ小さな子供たちに人気があります。卵投げ、1分間ビスケット食べ比べ競争、バケツの水に浮かべたオレンジの上にコインを置くゲーム(3秒以内にコインが滑って落ちたら負け。3秒キープできれば2倍得点ゲット)など、きわめて単純ながら楽しめるものばかり。フリーマーケットの物色やゲームの見物に疲れて一息つきたくなったら、行く先々にある屋台で飲み物や食べ物を調達してエネルギーをチャージします。

国王と王妃、3人の王女たちも、この特別な日に重大な役割を果たしています。彼らは毎年、異なる場所を訪れます。今年の訪問先はオランダ東部の都市、ズウォレでした。訪問先では地域の伝統と風習の展示物を用意して国王をお出迎えします。やって来た国王一家を一目見ようと集まって来る人々で街は賑わいます。私たちの国王は概して国民から非常に愛されていますが、王様の日は間違いなく、この良好な関係性を保つのに一役買っています。

残念ながらアムステルダムの2016年の王様の日の天気予報がとても悪く、通常に比べて少ない人出となりました。とは言え、気温は低めで時たま霰(あられ)も降ったりしましたが、人々はみんな街のあちこちを歩いたり、踊ったり笑ったりして目一杯楽しんでいました。自分たちが誇りにしている王国の一員として、オランダ人が我が国を謳歌している姿を発信する特別な日、それが王様の日なのです。


特派員

  • マルタ・ ヒッキー
  • 年齢巳年(へび)
  • 性別女性
  • 職業教師、イラストレーター

アムステルダムで生まれ育ち、研究のため日本に2年半住んだことがあります。オランダ―日本間の文化的なつながりやコミュニケーションにとても興味があります。その他、自転車に乗ることや、教師やイラストレーターとしての仕事、友達と新しいカフェに行ったりすることを楽しんでいます。2014年にライデン大学を卒業し(アジア/日本研究修士)、現在は日本人向けのオランダ語学習教材を作っています。この学習教材では両国間の文化的な違いも紹介しています。

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