• 2017.02.14
  • 銃を持てば安心
今回のブログ記事では、以前も何度か触れたことありますが、日本やオランダと比較した大きな文化的相違点についてさらにご紹介したいと思います。今回は、銃についてです。下記に述べる意見は、おそらくミシガン州の人々を代表する考えというわけではなく、私の経験や見聞、調査で分かったことをまとめたものですが、考えを進めていくうえでのヒントとなるはずです。
オランダで育った私は、人に重症を負わせたり殺したりする力を持つ銃というものを見たり、聞いたり、触ったりしたことがありません。発砲事故などはニュースにもめったに載らないし、ほとんどの一般人にとって銃は日常生活に関わりのないものです。銃の所有は、法律のもと登録されている狩猟者(約2万8千人)や射撃愛好者(約4万人)などに限られています。一般的には、ほとんどの人々は銃の公認には否定的で、よくアメリカの銃規制を批判しています。私も、銃の公認がアメリカでの殺人や発砲による死亡事故の発生率を高める直接的な原因となっているのは当然だと思います。死亡事故を大幅に減らせるなら、銃を持たなければよいのではないでしょうか。

合衆国憲法第2条(1791年成立)に記されているように、人民は自衛のため武器を保有しまた携帯する権利をもっています。ミシガン州憲法には、「いかなる人民も自身と国を守るため武器を保有しまた携帯する権利を持つ」と記されています。今日においてそのような権利を守ることがなぜ重要なのか私は少し理解に苦しみますが、大勢の人がこの権利を重要であると感じ、絶対手放したくないと思っているのです。

ミシガン州では銃は容易に手に入ります。18歳以上ならだれでも、犯罪歴や精神病がなければ「長銃」(66cmを超えるもの)を購入できます。ピストルは21歳になれば買えますが、その際、地元の警察署が発行する「購入許可証」が必要となります。購入時には、販売者と購入者ともにこの許可証に署名をし、それぞれ写しを保管します。さらに別の写しを2枚警察署に返送しなければなりません。ただし、有効なミシガン州コンシールド・ピストルライセンスを持っている場合には、この書類は不要です。銃と弾丸の値段は千差万別ですが、小さなピストルなら130米ドルくらいから、弾丸は1箱5米ドルほどのものもあります。

ミシガン州では、成人のほぼ3人に1人が銃を1丁(または2丁)所有していており、狩猟をしたり(鹿狩りをしてその肉を漬け、冬季の食料にします)、射撃練習場で練習して楽しんでいます。また、スポーツとして射撃を行い、「カウボーイ・アクション」や「3ガン・マッチ」、「IDPA(国際防衛拳銃協会)」、「Fクラス・ライフル射撃」などの特別イベントに参加するコレクターもたくさんいます。

カウボーイ・アクション・シューティングは、参加者がカウボーイ服に身を包み、複数の標的を決められた順番にできるだけ速く撃つイベントで、馬に乗って行うこともあります!
3ガン・マッチは、ライフル、ピストル、ショットガンの3種の銃を使って、その速さと技量を競う競技です。
IDPAとは、International Defensive Pistol Association(国際防衛ピストル協会)のことで、この機関は、現実に起こりうる事態をシミュレーションしたうえでの自己防衛目的の射撃の実施を統括しています。IDPAの競技会では、一部の標的だけでなく、射手自身も動く構成となっています。
最後のFクラス・ライフル射撃は、長距離射撃のことで、ときには1キロ以上離れた距離から撃つこともあります!そんなに遠く離れた標的に命中させるには、相当優れた精度が要求されるのだろうと思います。

補足ですが、射撃の測定では面白いことにメートル法がよく採用されます。たとえば、銃の射距離について述べるときなどです。アメリカでは皆あまり、センチメーター、メーター、キロメーターといった単位で長さを測らないので、射撃のような特定の分野でそのような単位が使われているというのは興味深いですね。

銃の所有が権利として守られ、銃の購入が「容易」で、射撃が娯楽かつ真面目なスポーツとして扱われている環境で育つことをかんがえると、ミシガン州の人々が銃を持つことに抵抗感がない理由がだんだん分かってきます。銃の所有権というのは、アメリカの歴史の中で明らかに大きな意味をなし、現在も重要な文化とされています。私はオランダ人女性として、銃はとても危険だから誰もが手にするものではないという考えを変えることはありませんが、その反面、オランダにもソフトドラッグや売春など(いまだに)合法なものがたくさんあり、私はそれらをごく普通なものととらえて育ちました。日本にも、外国人には奇妙に見える慣習が大なり小なりあります。たとえば、電車内での居眠りや、AKB48などのアイドルグループの人気ぶりが「子供っぽい」女性こそが魅力的だというイメージを植えつけていることなどが挙げられます。各国それぞれ、その国をかたどる独自の文化を持っており、それを批評するのは簡単です。しかし、多少びっくりするようなことでもよく見てみれば、異文化に対する理解は深まり、そこに住む人々と分かり合えるようになるのです。

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特派員

  • マルタ・ ヒッキー
  • 職業教師、イラストレーター

マルタは生まれも育ちもアムステルダムですが、日本語と日本文化の研究の一環で2年半の日本在住経験があります。オランダ人と日本人の間の文化とコミュニケーションのつながりについて、特に強い関心を持っています。現在はミシガン州ノバイに拠点を移し、文化の違いをより広く探究しようとしています。

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