• 2016.06.07
  • ビール天国
1980年代から、クラフトビールを愛するすべての人の注目の場所となっているポートランド。
市内には醸造所が65もあって、その数はさらに増え続けています。ビール職人が世界一多い街でもあり、よく世界のビールの首都と呼ばれます。最近の米国の調査によると、ポートランダーのビール消費量はどうやら全米ナンバーワン。 「ビアバーナ(ビール天国)」という街の愛称にふさわしい理由がちゃんとあるのです。

ポートランドのビール市場はとにかく競争が激しいので、フレーバーエール(コーヒー、ハチミツ、ベリー、ベーコン、なんとカボチャまで!)、地元素材、季節限定物、革新的な醸造技術などで、どの醸造所も創意工夫しています。なかには特定の顧客層に的を絞って、セリアック病の人のためのグルテンフリービールを複数製造したり、お酒を飲まない人をターゲットにノンアルコールビールを多数用意している醸造所もあります。
  市の中心部からほど近く、ウィラメット川のすぐ東に位置する「Beer Row」(ビール街)と呼ばれる通りには、複数の醸造所やブルーパブ(ビール工場直営パブ)が徒歩圏内にひしめき合っています。ここで製造されているオレゴン産エールは試飲したり、その場で購入することができます。また、米国内はもちろん、世界中に出荷・販売されています。

ブルーパブ通いはポートランド文化のひとつです。この地域を訪れたら、ぜひ体験してみてくださいね。
  どのブルーパブも通常、50種類以上の生ビールを取り揃えていて、その大半は地元のクラフトビール。ファミリー歓迎のパブがほとんどで、多くの店には子供の遊び場があって、なかにはドッグパークを備えている所もあります。ポートランドのブルーパブには必ずフードメニューが用意されていて、ピザやホットドッグのような軽食から、4皿構成のフルコースまでさまざまで、それもほとんどがオーガニック食材を使った手作りです。地ビールメーカーはたいてい、完璧なビールづくりと同じようなこだわりを持ってフードメニューを提供しています。なにしろ、ポートランドはグルメタウンで、ポートランダーはおいしいもの食べることに情熱的ですから。 

 
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ビール・テイスティングができて、ファミリー歓迎のブルーパブがほとんど
  
     
  ポートランドは世界一ビール職人が多い街というだけではありません。街のカレンダーは1年を通してビールをテーマにしたイベントでいっぱいです。例えば、12月にはパイオニア・コートハウス・スクエアに暖房付きテントを設置してエール・フェスティバルが開催されます。 オレゴン・ブルーイング・フェスティバル(Oregon Brewing Festival)、スプリング・ビール&ワイン・フェスティバル(Spring Beer and Wine Festival)、ポートランド国際ビールフェスティバル(Portland International Beerfest)、ヴィーガン・ビア&フード・フェスティバル(Vegan Beer and Food Fest)など、最大級のビールフェスティバルも毎年行われます。
オレゴン・ブルワーズ・フェスティバルはウィラメット川のほとりで開催されます。西はポートランドの街並み、東はフッド山が背景となるこの場所は、5日間にわたる大イベントにうってつけで、85,000人以上の観光客が訪れます。このイベントでは全米の80を超える醸造所が競い合い、大勢の客にビールを販売してベスト・ブルワー・オブ・ザ・イヤー(Best Brewer of the Year)賞を狙います。
ヴィーガン・ビア&フード・フェスティバルはとても珍しいイベントで、地域ナンバーワンのヴィーガン向けクラフトビール、サイダー(発酵リンゴ酒)、ヴィーガンフードが並びます。フードカートや屋台、露店、地元レストランが販売する食べ物やビール、工芸品とともに、ライブ音楽やグループ対抗のゲームも楽しめます。

   
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ポートランドで毎月開催されるビールフェスティバル

  ポートランドのビールシーンは、ブリッジ・ポート・ブルーイング・カンパニーとウィドマー・ブラザーズ・ブルワリーが創業した1984年に始まりました。現在はどちらも、施設見学ツアーやビールの試飲会を毎日実施しています。翌年には、マクメナミンズ兄弟が最初の醸造所がオープンし、今では米国北西部各地で歴史的な建造物を利用した50軒以上の醸造所を展開しており、それぞれ趣は全く異なりますが、どの醸造所でも同じマクメナミンズ・ビールが提供されています。
1990年代になると、新規参入者が次々に現れ、街のビールシーンを彩るようになります。1993年にはロンパック・ブルワリーが、1994年にはラッキー・ラブラドール・ブルーイング・カンパニー(愛犬と一緒に楽しめるドッグフレンドリーなビアガーデン)がそれぞれオープンしました。
ホップワークスは再生可能エネルギーを100%利用したユニークなブルーパブです。利用者はパブの中央に設置された2台の固定自転車を漕ぐことで、店内の電力供給に力を貸すことができます。
ポートランドの人気のたまり場、ジャイガンティック・ブルーイング・カンパニーは街一番のインディア・ペールエール(IPA)づくりにチャレンジしています。エクリプティク・ブルーイング・カンパニーは、この街のビールシーンの新顔です。天体がテーマのブルーパブで、オーナーが情熱を注いでいるビールづくりと天文学を組み合わせています。星や星座の名前が付いた個性的なビールはすべて、占星術カレンダーに合わせて変わる豊富なフードメニューとペアリングされています。

市内にはヨーロッパスタイルのビールに特化した醸造所もあって、ドイツ、フランス、ベルギーのビールづくりの特徴を紹介するツアーを開催しています。地元のビールシーンの隠れた名店、アップライト・ブルワリーをはじめ、多くの醸造所では、クリームエールやスタウトといった正統派ヨーロッパスタイルのビールを中心に提供しています。アップライト・ブルワリーの地下にあるテイスティング・ルームでは、仕込みごとに新素材を採り入れた季節限定のおすすめメニューが味わえます。

なお、パブに行ったり、ひとつのツアーに参加するだけでは物足りない場合には、ビールツアー会社がビールバスツアー(日本語を含む複数の言語で実施)や、12人乗りのバーカウンター自転車を利用したユーペダルツアー(You-Pedal tour)を提供してくれますよ。

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ペダルを漕いでポートランドの醸造所をめぐるツアー
 
     



特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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