• 2017.06.01
  • みんなネッシー大好き
迷信はどこの国にもあるものですが、スコットランドほど迷信が日常生活に根付いているところは他にないのではないかと思います。幽霊や伝説は、スコットランド生活におけるさまざまな局面に登場します。スカイ島にまつわる物語や、魅惑的な妖精の木のあるローモンド湖に潜む不思議な物語を見てもわかるように、ここには幽霊の気配がしない城などなく、妖精たちもそこここに顔を出すのです。また、エディンバラの伝説や、スコットランド神話で一番困った生き物であるケルピーの彫像にも興味深いものがあります。
では、ネッシーはどうでしょうか? ネッシーは、有名なネス湖の怪物で、何十年間にもわたって湖に来る観光客たちの興味をそそっています。
自然豊かな冒険旅に出かけ、城や聖堂、町や村などを訪れれば、スコットランドの歴史とその住民についての理解が深まるでしょう。多くの人は、ブレイブハートやアウトランダーといった映画を通してこの国の歴史に初めて触れるわけですが、当然ながらフィクションよりも現実世界のほうが複雑でより感動的です。エディンバラ城を訪れれば、王や女王たちが辿った運命やスコットランドの歴史を実際に理解できますが、スコットランドの隠された伝説のほうが、この国についてより多くを語ってくれると思います。

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魔法の伝説

それではここで、スコットランドで一番有名な伝説である、ネス湖の怪物ネッシーについてお話します。
ネッシーは、スコットランドの誇りです。
地元では通称ネッシーと呼ばれていますが、ロックネス・モンスター(ネス湖の怪物)というのが、インヴァネスの町近郊の深い淡水湖であるネス湖に住むと言われる伝説の生き物の名前です。多くの本では、この怪物は、湖畔を散策する人間を襲う巨大恐竜であると伝えられています。もしそれが本当に存在するならば、絶滅した海洋爬虫動物に類似している可能性があります。この湖に住む巨大生物または怪物の噂は何世紀にも渡り語り継がれているものの、未だに話の信憑性は薄いのです。地元の人々の多くは存在していると主張しますが、中には懐疑派もいて、観光業や土地の民間伝承に好都合だからそのような噂が今に存在するのだと主張しています。

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ネス湖城

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ロックネス(ネス湖) 「ロック」はゲール語で「湖」の意味。

この地に伝わる古い伝説で、ケルピー(水棲馬)と呼ばれる架空の生物が、ネス湖の怪物に関係していると考える人もいます。ケルピーはこの湖の深淵に住むと言われ、また歴史史料においては、この生き物はネス湖の怪物が持つ解剖学的特徴と同じ特徴を持っているということが強調されています。
ケルピーとネッシーには、体は大きいが俊敏という特徴があり、共に長い首とそれに不釣合いな小さな頭を持つと言われています。地元住民の中には、ネッシーを大変恐れ、悪魔に呪われた生き物だという人がいる一方、ネッシーが好きで、スコットランドのマスコットのように思っている人もいます。ネッシーが初めて目撃されたのは紀元前に遡り、ある伝説では、一人の男性が湖畔の村を訪れたのですが、それは湖で泳いでいる最中に怪物に襲われて亡くなった友人の葬式に出席するためだったと言われています。1930年代には、何人かの写真家が、いわゆるネス湖の怪物の存在を示す証拠をつかむため湖を昼夜監視したところ、そのうちの1人が初めてこの「生物」の「本物の」写真を撮りました。その写真は世界中に広まり、専門家の検証によりその信頼性が保証されました。
1970年代にネス湖の科学調査隊が派遣された際には、ソナーが湖底を高速で泳ぐ複数の巨大未確認生物の存在を感知し、それが魚の群れである可能性は排除されました。この事実は、ネッシーが1匹だけではないという仮説を裏付けることになります。
その後も怪物を目撃したという人々の証言が多く出ましたが、今のところ怪物の存在の確証は得られていません。ネッシーのぬいぐるみは、おもちゃの動物コレクションとしてスコットランドの子供たちに人気があります。そして今やネッシーはみんなのマスコットであり、また人気の観光土産にもなっているのです。

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子供向けのネッシー人形

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

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