• 2016.11.22
  • 時の流れないあの空間に入るためには?
住んでしまうと身近にある観光スポットを訪れ損なう経験が皆さんにはありませんか?
私には、ミラノに住み始めた当初から行こうと思い続けて 20年もが経ってしまった場所がミラノ市内に少なくとも二カ所あります。

今日は、KWNの特派員に採用されたことを感謝すべき訪問をしてきました。ミラノの記念墓地に行くゾと思いながら20年間も先送りにしていたので、ミラノの情報をお届けする特派員であることを良いきっかけにして訪問することにしました。11月1日はキリスト教における諸聖人の日の祝日であり、先祖様のお墓参りをするミラネーゼ達に混じって、この墓地に入ることになりました。 

ここ数日中の朝晩に、ミラノは濃い霧に包まれました。今朝は霧が少なめでしたのでホラー映画に出てくるような、墓場と立ちこめる霧というシチュエーションでの墓地訪問にはなりませんでした。冗談はさておき、この記念墓地はなぜに観光客から、そして在住者から重要視されているのでしょう。それは一言で言えば芸術品の宝庫だからです。天国とつながっている美術館とも呼べるでしょう。

白色の石畳の大きな広場を前に白色大理石で出来たゴシック式の記念礼拝堂がおごそかに建っています。この光景を眺めるだけでも、ミラノ市内の他の場所との隔たりを感じるのですが、更に内部に進んで行くにつれて、ミラノ市内にいる事を忘れるような空間へと導かれて行きます。時が存在しないようなこの空間、そう、墓地なのですが空間と呼ぶ方がふさわしいように思えます。木々が生い茂る広大な敷地内には目を見張るような彫刻で一杯なのです。最後の晩餐をブロンズで再現したレプリカや十字架の道を再現した塔などなど、実に表現豊かな彫像で溢れています。気がつくと、どこから見て回ったらよいのかわからなくなるくらいの無数の彫像に囲まれていて、これらの芸術品に魅せられて鑑賞して回っている内に迷子になりそうです。迷子になったと思ったら実は違う次元に入っていた、ということもありえるのでは?と思い始め、、、そのせいなのか、入り口で手に入れた墓地の地図を持つ手に力が入り、自分を見失わないように地図を何度も見直しながら歩くのでした。

この記念墓地は、生きている全ての人に開かれています。でも、亡くなった人全てに開かれているわけではありません。亡くなった人がこの墓地に入るには、厳しい審査を通過しなくてはなりません。イタリアの名誉のために戦った戦没者、イタリアで大業を成し遂げた実業家、著名な芸術家、イタリアに貢献したスポーツ選手や政治家、ヘブライ人やカトリック信者でない人が、試験を合格してこの静けさの中に納まっています。 死後の世界も意外な面で楽ではなさそうです、、、

 
161122_mikami

特派員

  • 三上 由里子
  • 年齢戌(いぬ)
  • 性別女性
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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