• 2023.01.06
  • 味も見た目も実にさまざま!リグーリアのパン
おいしくて栄養もあるパンは、さまざまな粉や植物の種子などの材料で作ることができます。
フランスにはみなさんご存じのバゲットがあるし、アメリカには一般的にロールとかバンズと呼ばれるパンが存在しますが、これがイタリアとなると、話はちょっぴり込み入ってきます。
私の場合、サンドイッチを作るときには大型の食パンや小さなバンズを買うのですが、イタリアでパン屋さんに行くといつも頭がこんがらがってしまいます。呼び方も分からないさまざまな形をした、実に多くの種類のパンが並んでいるのですが、売り場にはパンの名前が書かれたフダさえないんですから。
それでも地元の人たちは、どれがどういうパンなのかしっかり頭に入っているようです。
そんなこんなで、パンはとりわけ地域色が濃い食べ物でもありますから、リグーリアゆかりのものを中心にいろんなタイプのパンを調べてみることにしました。
その結果、ロゼッタ(「小さなバラ」の意味)というパンはイタリア全土で広く食べられていることや、リグーリア地方でとくに馴染みのあるパンがチャッペと呼ばれていることを知ったわけです。

チャッペ(Ciappe、複数形)は、もとはリグーリア地方の西海岸生まれ。小麦粉で作る薄いパンで、明るい小麦色をしていて歯ごたえがよくおいしいパンです。チャッパ(Ciappa)はリグーリアの方言で「スレートの板のように薄く平たい石」を意味します。
お次は、カネストレッリ・ディ・タッジアというパン。リグーリアにはカネストレッリという名の、粉砂糖をまぶしたビスケットが別に存在するので若干ややこしいのですが、カネストレッリ・ディ・タッジアは、このビスケットと同じく直径10㎝ほどの円形をしていて、歯ごたえとわずかな塩味が特徴のパンです。地元名産の貴重なタッジャスカ・オリーブを搾ったエクストラバージン・オリーブオイルを使っているため、とても軽くてサクサクした食感が楽しめます。
ジェノヴァ市のパンで最も代表的なのは、「小冊子」という意味の名を持つリブレットです。
長方形に焼き上げるパンで、真ん中でカットすると、ちょうど冊子のように見えるからこの名前が付いたそうです。長方形というよりもほぼ正方形なので、サンドイッチにぴったりのパンです。
私はまだ食べたことがないのですが、大麦でできたパン・ドルデュは、特徴のある小麦色をした堅いパンです。
その歴史は非常に古いもので、人々が季節ごとに移動しながら放牧を行っていた頃、このパンを水に浸してトマトやバジル、アンチョビなどの材料を合わせ、家畜が移動する季節の祝祭で食べていたということです。

ヒヨコ豆や小麦の粉で作った平たいパンのファリナータやフォカッチャについては、過去に投稿した記事で詳しく書いたことがありますが、小さくて丸く、柔らかくて味も良い、リグーリア名物のジャガイモのフォカッチャ、ファジーノをご紹介するのは今回が初めてですね。このパンは、シンプルで質素な材料の組み合わせでも、おいしさとボリュームを兼ね備えた流行に左右されないものを作ることができる見本のような存在です。
言い伝えによれば、このパンは薪ストーブを使って焼くと最高においしいのだとか。真ん中が空洞になっているので、そこに何か詰めることもできるそうです。基本のレシピに手を加えた集落ごとのバリエーションもあり、味の変化も楽しめるところが魅力です。
小さな丸いフォカッチャスタイルのパンは、リグーリアじゅうで親しまれています。ジャガイモや小麦粉で作るもの以外に、フガセッタと呼ばれるトウモロコシ粉でできたフォカッチャもあります。フライパンのような土鍋、テステッティを火にくべて焼き上げるこのパンは、塩漬肉と一緒に食べることが多く、とくに豚の脳みそや脂肪、軟骨、皮などを月桂樹の葉とともに煮て型に入れ、スライスした「テスタ・イン・カセッタ(「箱の中の頭」という意味)」と呼ばれる冷製肉の付け合わせとしてよく登場しますです。
私はベジタリアンなので、この料理を試した経験はありませんが、このフォカッチャのパンがよく黒キャベツと一緒に出てくるのは知っています。
キャベツの話題が出たついでと言ってはなんですが、もともと質素な食材として知られるキャベツは、遥か昔からとくに貧しい家庭の人気メニューだった栗のパンとの相性が良いことも付け加えておきましょう。
「貧乏人のパン」とも呼ばれる栗のパンは、長年にわたり、リグーリア地方の内陸部に住む人々にとってなくてはならない栄養源の代名詞だったのですね。


私のための大きなパンの塊!

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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