お盆・帰省・藪入り|山田 進|ナレッジワールドネットワーク|アクティビティ|ナレッジキャピタル

  • 2017.08.30
  • お盆・帰省・藪入り
この時期、こんな言葉がよく登場しますが、海外に住んでいると気軽に帰郷するわけにもいかず、久しぶりの一時帰国ともなれば半年以上前から、いつ、どこで、誰に会って、何を観て、何を買って、何を食べるか、を考えて旅行日程を練っていくことになります。

表向きは親類縁者や知人友人との再会が第一目的…と“ええ恰好”しても本当の楽しみは食べ物かもしれません。しかし昨今の和食ブームでスペインに居ながらそれなりの日本の味を楽しめる時代となり、加齢によるものぐさ症候群も手伝って、帰国時の食生活も変わってきました。以前の様に、グルメガイドに掲載されるような寿司や天ぷら、割烹料理の有名店よりも、生まれ故郷の懐かしご近所ラーメンや精肉店のジャガイモコロッケ、コンビニ・チェーンの進化を続けるサンドイッチ等、肩肘はらず普通に美味しいものを求める今日この頃です。

進 山田 - S.Yamada写真1EDAMAME
この夏はまっている日本の味。盛夏の折、ビールのアテに最強の枝豆です。
“EDAMAME”500g1.6ユーロ(約210円)。


また駅弁も滞在中のお楽しみ、新幹線の座席に座って、おかず多めのご当地駅弁とキオスクにぶら下がっていた乾き物おつまみセットを前に缶チューハイのプルタブを“ぷしっ!”と開ける至福の瞬間がたまらないですね。その新幹線体験、単なる移動手段としてだけでなく、車中のプチ宴会とか、車内清掃部隊の迅速かつ丁寧な作業ぶりに感動したり、ホームでの待ち時間中、目の前を猛スピードで通過する“のぞみ”の圧倒的な迫力を体感したりするのは“百均店探検”と並び大きな帰国理由の一つです。

その、世界に誇る我らが日本の新幹線、1964年、東京オリンピックの年に開業した東海道新幹線は東京と新大阪間515kmを開業当時は4時間(現在は最短2時間22分)で結んでいました。ちなみに1992年、バルセロナ・オリンピックの年に運行開始したスペインの高速鉄道AVE(※)は、マドリードとセビリア間472kmを2時間45分、現在は最短2時間20分で走ります。30年程後発のスペイン高速鉄道ですが開業時の状況は日本と似通っていますね。

似てると言えばスペインの線路事情も日本と同様、高速鉄道のレールの幅が在来線と異なっているのです。新幹線・AVE両方ともレール幅は1435mmで世界水準の標準軌、ところがスペインの在来線は1668㎜と広く、日本は1067㎜と狭いので両国とも高速線と在来線が相互乗り入れする場合には台車を変えるか、レールを一本増設して三本で対応する三線軌条にするか、それとも車輪の幅を変更できる軌間可変車両にするか、という話になります。

じつはこの三番目の解決策である軌間可変車両、日本でも話題に上るFGT(フリー・ゲージ・トレイン)と呼ばれている電車、スペインではすでに1968年から実用化されています。レール幅の違う隣国フランスとスムーズに行き来する際に車輪の幅を変換する技術が必要だったのです。初期、変換するのは動力のない客車の車輪幅だけで機関車はそれぞれのレール幅に合うサイズの車両に取り換えていましたが、現在では先頭と末尾に駆動車を連結した編成や、客車に動力のある列車でもすべて自動変換できるようになりました。

進 山田 - S.Yamada 写真2.スペイン高速鉄道網
スペイン高速鉄道網


そもそもカーブの多いスペインの在来路線を安全かつ速やかに走行できるようにTALGO社がすでに開発していた特殊な電車は各車輪が独立しているタイプで、車軸両端に車輪のついた通常の車両よりも軌間可変仕様に変更しやすかったようです。そして1992年、レール幅の違う高速鉄道AVEが国内に出現して以来、国際列車だけでなく国内の在来線との接続も必要になり、鉄道車両メーカーであるCAF社も参入し現在2つのシステムを使って幅の違う路線での相互乗り入れ運行が可能になりました。

2013年時点でスペイン全国17箇所の変換施設で24基の変換装置が稼働しています。配置図をご覧いただくとポルトガルとの国境には設置されていないのがわかります。ポルトガルはスペインと同様の広軌を使用しているので、スペインとの相互乗り入れには問題がありません。

進 山田 - S.Yamada 写真3変更装置配置図
自動変換施設配置図(ADIF・スペイン鉄道基盤施設管理公社のHPより)


また、ヨーロッパ各国が標準軌を採用している中、ロシアの在来線も線路幅が1520㎜と広いのでヨーロッパとの接続に手間取っていましたがスペインTALGO社のフリーゲージトレインが採用され、2016年12月17日モスクワ・ベルリン間の運行が開始されました。それまでは約25時間の所要時間を5時間短縮して稼働中とのことです。

レールの幅が違っても電車が自由に行き来できるこの技術を使って、ロシアで開通100周年を迎えた極東との懸け橋である世界最長のシベリア鉄道、樺太経由で北海道新幹線に接続できれば東京駅の発車標に『欧州特別急行・モスクワ・ベルリン経由リスボン行』という表示がでることもあるかな?まさか!

猛暑のマドリード、脳内が沸騰寸前土手鍋状態で見た妄想、真夏の夜の夢でした。

進 山田 - S.Yamada写真4記録更新
近所の金物屋さんの温度計、昨年は49度でしたが今年は51度と記録更新中です。


(※)AVE とはAlta Velocidad Española の頭文字で、読み方は“アベ”、意味はスペイン高速(鉄道、電車、路線)です。スペイン語のave は“鳥”の意味もあり電車のシンボルマークは翼を広げた鳥がデザインされています。この“アベ”は異なる線路幅が“ミックス”された路線を行き来できるので“アベのミックス”とも呼ばれている、という事実は確認されておりません。

進 山田 - S.Yamada写真5AVE到着車両
最高時速は310kmに達するAVE、
運転席のフロントガラスに鳥(ave)が張り付くこともあるそうです。
到着車両の先頭部をバケツの水を掛けて清掃中の作業員も写っています。




特派員

  • 山田 進
  • 年齢寅( とら )
  • 性別男性
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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