• 2023.07.28
  • イタリア語にちなんで
学生時代に習ったカンツォーネで得た印象では、イタリア語は開放的な響きの言語。単語が母音で終わるからなのでしょう。

住み始めてテレビのニュースなどを視聴するようになってから得た印象は、プリプリした弾けるような響き。意味を大して理解せずに音として聞いていると、深刻な内容を放送しているにも関わらず、悲劇的な雰囲気が伝わっては来ないのでした。

イタリア語の単語の特徴には、アクセントがあります。一つの単語の中に、重点を置いて強く発音する音節とそうでない音節をはっきりさせます。3、4個の音節で成り立つ単語に、大抵は決まり切った規則があってどこに強くアクセントをつけるかはわかりやすいのですが、例外もいっぱい。

日本語の単語にアクセントを付けようとするのも、イタリア人。私の名前は「ユリーコ」という風に「ゆ」と「こ」はほぼ消されて、「り」だけが10倍に強調されて発音されます。

ところで私が苦手なのは、RとLを数個含んだ単語。それも時々、Lが2個続いたりすると発音につまずいてしまい、舌を噛みそうにしながら発音をする私の顔をじっと凝視するイタリア人に出会ったりすると、脳みそも口も緊張で固まってしまうものです。例えば、PARALLELA。並行という意味のこの単語は、何度使っても緊張してしまう。だからと言って、他の言い回しが出来るような単語でも無いので、閉口しながら並行という単語と付き合っていく次第です。

さて単語が母音で終わるのが特徴のイタリア語。名前や苗字も、勿論母音で終わるのが典型的。ですが近年、カトリック教の聖人の名前を付けずに英語圏の名前をつけたりするのがイタリアで流行っているらしく、Brianとか、DavideにはしないでDavidにしたり、DanieleでなくDanielというイタリア人の知り合いがいます。

面白いのが、苗字の方。苗字も、大抵、母音で終わるのが特徴なのですが、時々、母音で終わらない苗字のイタリア人。祖先が外国人なのかしら?と単純に思っていましたが、そういう場合もあるのですが、実は意味深な事情が隠されて子音で終わる苗字があることを知りました。それは遥か昔に、税金を払わなかった人の苗字から、罰として最後の母音を取り上げてしまうという時代があったというのです。「あの子のお爺ちゃんは税金を払わなかったんだねぇ、だって、苗字が子音で終わってる」とこんな風に近所で囁かれた時代もあったという訳です。今でこそ、この由来を知らないイタリア人が殆どでしょうけれど、知る人ぞ知る祖先の置き土産なのです。人生、悪事を働かずべからず。

ところで、自分の子供に変わった名前をつけて物議を醸し出す事件は日本でも時々ありますが、勿論イタリアでも。アニメが大好きなイタリア人は大勢いますが、好きが転じて、子供にDoraemonという名前をつけたいと申請した親でも出てきたのでしょう、「Doraemonはダメ」と禁止の名前リストに載っているそうです。禁止されていなければ、「あの時代はアニメで使われる名前が流行ったんだね」とDoraemonという名前を持った祖先のことを思い返す時代も来たかもしれない。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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