Interview

各界のスペシャリストにインタビュー。
意外な組み合わせで、OMOSIROI答えを探る。

Interview 石川真澄 画家・絵師×浮世絵 浮世絵表現で描く現代カルチャー

メタバース暮らし

仮想空間とリアルが交差する日常へ

今話題のメタバース※は、
人々の生活をどのように変えるのか?
VRアートの先駆者として国内外で活躍するとともに、
「World OMOSIROI Award 8th.」の
選考委員を務めるなど、ナレッジキャピタルの活動にも関わりの深いせきぐちあいみさんにインタビュー。
体験しなければ分からないVR独特の感覚や、
新しい分野でのビジネスの切り拓き方について話を聞いた。
※メタバースとは、「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語。いま続々と登場している仮想空間サービスの総称。作品画像提供:クリーク・アンド・リバー社

せきぐちあいみ

せきぐちあいみ

AIMI SEKIGUCHI

1987年神奈川県相模原市生まれ。クリーク・アンド・リバー社所属。劇団員、モデル、ダンサー、歌手、YouTuber、レポーターなど多岐にわたる活動を経て、2016年に「VRアーティスト」として活動開始。多種多様なアート作品を制作する傍らで、アメリカ、ドイツ、フランス、ロシアなど、世界各国でVRパフォーマンスを披露。2017年に「せきぐちあいみ世界初VRアート個展 Daydream Reality」開催。2021年3月、NFTオークションにて作品が約1300万円で落札され話題となった。

せきぐちあいみ

AIMI SEKIGUCHI

1987年神奈川県相模原市生まれ。クリーク・アンド・リバー社所属。劇団員、モデル、ダンサー、歌手、YouTuber、レポーターなど多岐にわたる活動を経て、2016年に「VRアーティスト」として活動開始。多種多様なアート作品を制作する傍らで、アメリカ、ドイツ、フランス、ロシアなど、世界各国でVRパフォーマンスを披露。2017年に「せきぐちあいみ世界初VRアート個展 Daydream Reality」開催。2021年3月、NFTオークションにて作品が約1300万円で落札され話題となった。

NFTのオークションサイト「OpenSea」に出品し、約1300万円で落札された『Alternate dimension 幻想絢爛』。
「World OMOSIROI Award 8th.」(2021)

ナレッジキャピタルのコアバリューである「OMOSIROI」を広めるための国際的なアワード。せきぐちさんは選考委員とオープニングのパフォーマンスで参加した。

器用貧乏からVRアートの開拓者へ

–– せきぐちさんは、それまで存在しなかった「VRアーティスト」という職業をつくった開拓者でもあります。どのような経緯で現状に至ったのでしょうか?

YouTuberやレポーターとして活動していた際、取材の一環でVRを体験したことがきっかけです。こんなにも心揺さぶられるものがあるなんて!と感動して、自分でも描き始めました。描いたものをSNSにアップし、だんだんと仕事になっていきました。

––以前は、舞台やダンスなど、他のさまざまな分野でも活動されていましたね。

もともと興味の範囲が幅広くて、VRに出合う前は「3Dペン」というペンにハマって、作品を作っていたこともあります。舞台もダンスもYouTubeも全部心から好きで、真剣に取り組んでいたんですよ。当時、周りからは「器用貧乏」とか「平均点とれても商品にならない」とよく言われましたが、周りにやめろと言われたからといって、好きなことを手放すのは違うと感じていました。結果的に、VRと出合ってからは、それまでやってきたことが全て繋がったと感じました。ライブペイントで見せたり、映像で伝えたりすることは、絵だけではなく、ダンスやYouTuberをやっていたからこそできたのだと思います。どんなことでも好きで真面目に取り組んでいたら、その人だけの色や形ができていくのではないかなと思います。

海外でのライブパフォーマンス。

“絵を描く”というよりも“別世界をつくる”という感覚

–– 仮想空間に絵を描くのと、いわゆる平面に絵を描くのとではどう異なるのでしょうか?

まず根本的に360°どこから見ても成り立つところが違います。2Dの世界ではある位置を正面と決めて対象を切り取って描きますが、3Dのアートは、裏側だからといって空白にするわけにはいきません。動物を1つ描くにしても、お尻の裏側ってどうなっているんだろうとか、これまで意識したことがなかった場所も観察するようになりました。

3D空間で描いている様子。
3D空間で描いている様子。

–– VRアートならではの魅力はどんなところですか?

無限の広がりを持つキャンバスに3Dで描いていくのですが、描いている側からいうと「絵を描く」というより「別世界をつくる」という感覚なんです。その自分の作った世界に、人が入ってこれるというところが魅力かな。VRゴーグルさえあれば、誰かを見たこともない世界に連れて行けるって、すごいことだと思うのです。

ナレッジキャピタル9周年を記念して描かれた作品。せきぐちさんはナレッジキャピタルについて「著名人から学生まで、知的好奇心旺盛な人が集まる場所。ビジネスだけに留まらない、人間としてワクワクさせられる出会いがたくさん」と、意義を語る。

–– メタバース上に誰でも訪れることができる美術館を作っていましたね。ただ見るだけではなくアートそのものに入り込めるというところに、新鮮さを感じました。

美術館『Museum-Of-Vrpainting』を作ったのは、緊急事態宣言真っ只中のこと。知り合いのクリエイターと協力して、「こんな時だからこそ!」とリリースしました。無料で入館でき、アバターの姿で訪れて絵に入り込んだり、新しい体験ができる美術館です。来場者同士がチャットで会話をしながら鑑賞したり、作品とともに記念写真を撮ることもできます。お子さんから大人の方まで、世界各国さまざまな層のお客さんが来てくれて、アートやエンタメのこれからの形として注目していただき「ヴェネチア国際映画祭」の企画にも選んでもらいました。

メタバース上の美術館を訪れた人々が撮影した記念写真。絵の中に入り込み、描かれた対象に極限まで近づいて鑑賞するという新しい体験ができる。

実は親和性が高い!?日本文化とメタバース

–– 神社をモチーフにした「Crypto Zinja」は、どんな作品ですか?

「Crypto(クリプト)」とは日本語で「暗号」という意味で、暗号資産を扱う神社です。神社自体はインターネット環境さえあれば誰でもアクセスできるのですが、さらに興味を持っていただいた方には、鳥居に名前を刻む権利をNFTで購入することで、作品に参加してもらうことができます。
メタバースって、生まれたばかりの新しい概念なので、いろんな可能性を秘めつつも、現状はそれをどういう形で運営していくべきか、みんな正解を模索しているようなところがあると思うんですよね。無法地帯だと挑戦しにくいし、規則で縛りすぎるのもつまらない。「神社」をモチーフにしたのは、自然と神聖さが感じられる場所だから。お互いを思いやる気持ちをもって訪れてほしいという思いを込めました。

メタバースに建てられた『CryptoZinja』。PCやスマホからもアクセス可能。https://conata.world/zinja

–– せきぐちさんの作品には和のモチーフが多く登場します。制作する際に、参考にしているものなどはありますか?

作品の空間構成は、日本庭園を参考にすることが多いです。日本庭園って、ある一点から見て素敵だと思った景色を、そこから数メートル歩いた別の場所から見てもいいと思えるじゃないですか。平安時代に書かれた『作庭記』には、奥ゆかしさを出すための、石組みや橋の配置のバランスなどが具体的に書かれていてとても勉強になります。考えてみれば生け花や盆栽も3Dで楽しむものですし、日本人ってそういう空間意識がもともとあるのかなと思います。

–– メタバースは、日本人の感覚や日本文化と親和性が高いということですか?

「水石(すいせき)」って知ってますか? 室内で石を鑑賞する日本文化なんですけど、石を山や川に見立てて愛でたりするんですよ。これだって雄大な自然を、自分の手元に置いて楽しみたいという欲望の表れで、メタバースと共通点を感じます。アニメ文化も進んでいるし、日本人の感覚や文化がリードできる部分はたくさんあるのではないかなと思います。

せきぐちさんが所有する水石。台座や水盤に砂を敷いたものに石を配置し、形や模様を鑑賞する。

メタバースがモノの見方や人生観を拡張する

–– VRアートとの関わりのなかで、心境の変化はありましたか?

モノの捉え方や人生観が拡張したと感じています。日常的にモノを見る時、3Dで捉えるよう意識するようになりましたし、NFTに関わってからは、デジタルデータという虚構にも思われがちなものを、きちんと保管していくことについて考えるようになりました。
みなさんも、例えばお金の形が、現金からクレジット、電子マネーと変わっていくなかで、感覚が変化する体験をしていると思います。SNSが登場してからは、ネット上での自分と、現実の自分を行き来していますよね。仮想空間のアバターは、性別も自由で、むしろ人間ではない姿だっていいわけです。恋愛とか人との関わり方も、また変わるのではないかなと思います。

–– 技術の進化は体感していますか?

VRデバイスは年々スタイリッシュになり、手軽になり、画質が上がり…と進化しています。テレビやネットの動画ではその進歩が伝わらないので、ぜひ実際に技術の進歩を体感していただきたいです。今まで回線やデバイスがネックでしたが、回線は5Gの登場で快適になりつつありますし、VRに欠かせないゴーグルも、すでに海外では眼鏡と区別がつかないほどのものが登場しており、日常にVRやメタバースが溶け込むのも、時間の問題だと感じています。

–– これからどんな分野で活躍すると思いますか?

あらゆるジャンル、分野で活用できる技術です。誰もが新しくビジネスを始めるチャンスがありますし、既存のビジネスをもってくることもできます。一見、関係なさそうな大企業の経営者も注目しているのは、一過性の流行で終わらないことを確信しているからこそだと思います。
私は、ハンディがある方もネット環境さえあれば、今までできなかった何かを体験できるというところに魅力を感じています。以前、介護施設で車椅子の方にVRを体験してもらう機会があったのですが、その方は「普段小さな段差さえも乗り越えられないのに、見たこともない世界や宇宙に行けてうれしい」とおっしゃいました。私自身がいつか病室から出られなくなったとしても、メタバースを通じてお墓参りに行ったり、孫と会えたり、世界と繋がれたらいいなと思います。

–– 最後に読者へのメッセージをお願いします。

メタバースに興味がありながら、何も行動していない人が多いのは本当に残念です。ネットに情報は溢れていますが、ゴーグルをかけてみないと技術の著しい進化や凄さは理解できません。頭で考えるよりも、まずはぜひご自身で体験してみてください!

–– 体験から世界が広がっていくのですね。貴重なお話をありがとうございました!

今からメタバースの世界
に触れるなら?

ゴーグルがないと
できないの?

ゴーグルがなくてもスマホやパソコンで手軽にメタバースの世界が体験できる「Cluster(クラスター)」というプラットフォームもあります。ゴーグルを使ってみたいという人は、ワイヤレスで楽しめる「Meta Quest 2(メタクエストツー)」が低価格で、ひと通りのことはできるのでいいと思います。AppleやMetaも近年開発に力を入れているのでこれからのデバイスにも注目してみてください。

一度体験してみたいけれど、
どこかでできる?

東京のお台場にある「TYFFONIUM(ティフォニウム)」をはじめ、徐々にVRの体験スポットができてきていますよ! デートなどにもぜひ利用してほしいです。はじめての体験を大切な人と共有するのって素敵じゃないですか。

グランフロント大阪北館の「The Lab. みんなで世界一研究所」にはVR体験ができる展示も! まずはWebをチェック!

The Lab.

グランフロント大阪北館の「The Lab. みんなで世界一研究所」にはVR体験ができる展示も! まずはWebをチェック!

The Lab.

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