カフェ、メーカーなど4者コラボで実現!
アレルギーフリー食品の自販機が誕生!
今年梅花女子大学は、アレルゲン不使用の食品の販売やカフェ事業を手掛ける(株)Mutter、冷凍技術を強みとする(株)えだまめ、自動販売機業界を牽引する富士電機(株)とともにアレルギーフリー食品が購入できる自販機をプロデュース。『人に寄り添う自販機』としてザ・ラボ内のブースで展示を行っている。商品は(株)Mutterと管理栄養学科がレシピを開発。サイネージや、ラッピングデザイン等はこども教育学科の学生が担当、こどもにもわかりやすい内容で食品アレルギーのしくみを解説するアニメを流すなどさまざまな工夫が見られる。自動販売機は2025年2月まで展示予定! お見逃しなく。
スイーツ冷凍自動販売機
1,200円(冷凍にて販売)
――藤原さんは2011年以降約370件の多種多様なコラボレーションを大学側の責任者として実現していますが、どのような形で始まったのでしょうか。
私が関わり始めた当初は産学連携というと、ロボット開発のプロジェクトならメーカーと工学部の研究室といったように、同じ分野の人たちが共同で何かを開発するものがほとんどでした。ですが、せっかく取り組むなら、今までと全く考え方の異なる、本学の特色や女子大学の個性を活かした産学連携をやってみたいと思いました。そこで、鋳物メーカーと心理学科の学生や、家電量販店と国際英語学科の学生をコラボレーションというように、まったく違う分野での産学連携に挑戦したのです。もちろん、食品のレシピ開発のように専門知識が必要な案件の場合は、親和性の高い学科をマッチングすることもあります。イノベーションが起きやすいのは、専門性や着眼点が異なる分野と連携をしたときです。プロジェクトを数多く経験するうちに、異分野のコラボレーションの力と面白さを実感しています。
――異分野の学生とのコラボは、企業にとっても新しい試みだったと思いますが、反応はいかがでしたか?
目からうろこが落ちるような、「今までありそうでなかったような面白いアイデアが生まれる」という評価を各方面からいただいています。本学の場合、女子のみ、かつ学生ならではの面白さもあります。同じ女性でも、企業内の女性社員は企業風土や業界知識があるので、突拍子もない意見を出すことを躊躇してしまう。その結果、どうしても採択されやすい平準化した意見に落ち着きがちです。女子大学生にはそのようなバイアスや忖度が一切ありませんから、斬新な意見が飛び出しやすいようです。
――企業とコラボする時、プロジェクトメンバーはどのように選ばれるのですか?
新しい視点を取り入れるために関連性の少ない分野の学科を選んだり、ゼミの担当教授との専門性を考えたり、その時々で選択の基準は違ってきます。本学は1学年495人の少人数の大学です。全学生が在学中にかならず産学連携に取り組みます。はじめは「そんなに多くの連携先を見つけられるかしら」と思っていましたが、さまざまな企業様から声をかけていただきます。最近は本学のホームページを見てご連絡いただくことも増えました。プロジェクトの実施期間は大学の半期の授業(1回90分の授業×15回)や通年で実施することが多いです。授業に合わせてスケジュールを組んでいますが、商品化に進む場合などは、初めの半期でアイデア出し、次の半期で開発、というように期間を持ち越すこともあります。
――藤原さんは中学校から大学卒業まで梅花で過ごされましたが、卒業後は母校に関わる仕事に就きたいと考えていたのでしょうか?
実は大学卒業後は、3年ほどアパレルメーカーで営業をしていたんです。ずっと女子校育ちだった私にとって、男性と一緒の環境は小学校以来のこと。私が新入社員として働き始めたころ、女性が社員のお茶を入れなくてはならないという、今では考えられないような風潮がありました。それがどうしても理解できなくて、上司に「おかしいと思います!」と直談判したんです。「営業で結果を出してから意見を出すように」といわれたので、その言葉を額面通りに受け取って、自分なりに結果を出して、また上司に意見しに行ったことも(笑)。営業職は成果が見えやすいのでやりがいがありましたが、将来的な展望が描けなかったこともあり、早い段階で会社を辞め、起業することを考えていました。でも、「石の上にも三年」といいますから、3年間はがんばろうと。退職後は1年半程度を起業のための準備期間と決めていました。
退職してから半年間は、シルバーアクセサリーデザイナーの友人と一緒にタイに行って海外の仕入れを経験したり、ひょんなことから断食明けのブルネイを訪問したり、マレーシアに行ったり、さまざまな人に出会い文化に触れました。周りから見ると、そんな私は暇そうに見えたのでしょう。大学時代の恩師から「賞の実務を手伝いに来て欲しい」と声がかかりました。当時は自分で起業する気でいましたから、大学の仕事はお手伝いの1週間だけのつもりでした。それが、今までずっと働き続けて、本学のブランディングや広報をさせていただいているのですから、人生って本当にわからないものです。
梅花人生の始まり:梅花中学校入学時
――常に新しいことにチャレンジされていますね。ナレッジキャピタルにも開業当時から参画されています。
2013年からナレッジキャピタルのザ・ラボで展示やイベントを行っています。ザ・ラボは新しい価値を見つけて、いろんな人と協力し、実験しながら何かを作り上げていきます。その価値観は、約150年前の梅花創立時の理念や、梅花女子大学のコンセプトにぴったりなのです。一番初めのコラボはザ・ラボでお隣のブースだった凸版印刷(現:TOPPAN)さんと作成した19世紀の貴重書でロンドン万博の土産本であったしかけ本を一度デジタルに取り込み、19世紀の3Dを拡大版でアナログに表現したプロジェクトでした。これはナレッジキャピタルのイノベーションアワードでグランプリをいただきました。開業から10余年、ナレッジキャピタルは、交流・創造の場として、成熟、進化し続けていると思います。ここでの出会いが次のご縁を呼んで、新しいコラボレーションが生まれることも数多くあります。
――産学連携から生まれたアイデアが、実際に商品となって各地で販売されていると伺いました。
ナレッジキャピタルのプロジェクトで出会った鉄製品の製造開発をしている池永鉄工さんとのコラボ商品「テツタマカロン」は、異分野のコラボレーションだったからこそ生まれた製品だと思います。テツタマカロンはハート形のマカロンのような形をした鉄玉ですが、鉄の専門家にとって、その形に鋳型を抜くのは常識的に考えらえないことだったそうです。池永社長やデザイナーの方たちも「できるはずない」と考えていたようなのですが、何度も話し合いと試行錯誤を繰り返してくださり、そのありえなかった製品を生み出すことに成功したのです。日本経済新聞社が大学発の商品を紹介する「キャンパス発 この一品」ランキングで全国第2位にも選ばれました。「こんなのが作れるとは思わなかった。鉄の業界にとっては革命に近い」ととても喜んでいただけました。
超アナログ!でも3D? のぞきこみシアター
超アナログ!でも3D?
のぞきこみシアター
TOPPAN株式会社
梅花女子大学の図書館が所蔵する貴重書で19世紀のイギリスで作られた蛇腹型絵本を巨大サイズで再現。TOPPANの最新技術で丁寧にスキャニングし覗き込める絵本に作り上げた。アナログでありながらまるで本の世界に迷い込んだような3D感覚を味わえる。
TetsutaMacaron(テツタマカロン)
TetsutaMacaron
(テツタマカロン)
池永鉄工株式会社
スイーツボックスを思わせる箱に鎮座するハート型のかわいい鉄玉。鉄分が不足しがちな女性も、鍋やヤカンに入れてお湯を沸かせば、簡単に鉄が補給できる。マカロンのふっくら感が女性ユーザーの心をがっちりつかんだ。
――異分野の人たちがチームを組んで、スムーズにプロジェクトは進むのでしょうか?
企業と先生や学生を引き合わせるだけでは、うまくいきません。とくに異分野間の連携では、間を取り持つコーディネーターの調整力が大切だと思います。自治体や企業と大学では、風土や文化が違いますし、互いの価値観も異なります。そのような場合は、両者のコミュニケーションを円滑にするために、翻訳者のような役割が重要になります。また、プロジェクト進行中に両者の“Win”を見つけ、お互いが納得できる状態にチューニングすることも大切な仕事です。企業も学生も、互いにメリットを感じられる環境の方が、モチベーションも上がり良いアイデアへ結びつくと思います。取り扱う件数が多くなって、業務をシステム化しようとも考えましたが、産学連携は生きもの。案件ごとに業界も課題も異なりますから、パターン化するのは難しいです。今でもすべてのプロジェクトに一度は顔を出し、コーディネートに関わるようにしています。
こども教育学科の学生と(株)Mutterによる自動販売機開発時のミーティング
――コラボの相談はどのようにもちかけられるのでしょうか。
ケースによりさまざまですが、進め方も具体的に何をやりたいのかわからないという段階でお話をいただくこともあります。一緒にディスカッションしながら、目標を見つけていくことができますので、何も決まっていない段階でお声がけしていただいても大丈夫です。むしろ答えやアイデアを用意せずにスタートしたほうが、よい結果を生むこともあります。従来型の産学連携ではやりたいことや答えが先にあって、それに向かってやっていけばよかったのですが、いまは何が正解なのかの答えのない時代です。個人のキャリア形成でも、大きく価値観が変化していますし、企業の課題も大きく変化しています。今は、すでにあるものに新しい価値を加えること、イノベーションを起こすことが、課題になっている業界の方が多いと感じます。答えのないことに向かって進むのは勇気がいりますが、だからといって、昔ながらのやり方に固執していると新しいものは生まれません。目標や条件設定は明確にしておく方がいいですが、そこに辿り着くための手段は、規定しない方が、斬新なアイデアの種が発見できるケースが多いと実感しています。ただ、仕入れ先や費用に制限があるとか、必ず考慮しなといけない条件がある場合は、具体的にしておく方がいいですね。
――藤原さんの目から見て、正解のない時代のキャリア形成に大切なものは何だと思われますか?
――藤原さんの目から見て、正解のない時代のキャリア形成に大切なものは何だと思われますか?
一つひとつの出会いに感謝して、一生懸命取り組むことだと思います。その上で自分自身の個性を見極めることは大事だと思います。アイデンティティをしっかりと確立することで、自分とは異なる考え方を尊重し、お互いに高めあっていけるからです。女子大学の企画や広報をする中で真のダイバーシティについて考えますが、他者との違いを知り、認め合うことで実現すると思います。また、自らの個性を表現するセルフブランディングも大切です。大学も企業も人も、自分の特長を知ってもらうためにはブランディングが欠かせません。本学も自分自身も個性をより磨き、学び続け、これからも挑戦を続けていきたいと思います。
――日本の経済発展も個人のキャリア形成も、既存の型にとらわれずに新しい価値観を見つけていく時代ですね。藤原さんが起こす、次のイノベーションも楽しみにしています。
個性を“磨く”藤原さんのセルフブランディング
略語をなるべく使わない
「チャレンジ&エレガンス」を掲げる大学の広報担当ということもあり、学部や学科名をはじめ、物や場所の名称は略さずに、できるだけ正式名称を使うようにしています。普段からエレガンスを意識して習慣にしておくことを心がけています。
夜中に舞踊のお稽古
3歳からバレエや日本舞踊を続け、今も時折夜中に練習しています。幼少期からいろんなものを観せてもらったりしていた自分の経験は、仕事でも活きていると思います。人生に無駄な経験はないと感じます。
新橋演舞場の
舞台に立つ藤原さん
チャレンジする事は面白い
時代の変化を常に面白がるためにも、学び続けることは大切だと思っています。京都大学の経営プログラムを受講するなど、学び続けることの楽しさを実感しています。
産学連携の事例を公開中
女子学生と企業・自治体の多彩なアイデアをチェック!
「BAIKA coLAB.」
梅花学園は明治11(1878)年、現在の大阪市西区土佐堀裏町に大阪初の女学校として誕生。創立当初から、女性の自立を実現するカリキュラムで女性が社会で活躍することを推進してきたという。明治42(1909)年、都市開発で文教地区となる北野(現在のJR大阪駅北側=うめきたエリア付近)を経て現在は豊中市と茨木市にキャンパスをおく。
大学では管理栄養や看護、口腔保健など生涯を通じて女性が働きやすい分野に特化した学部や学科を設置し、主専攻だけではなく副専攻や教養科目を通じて学生に幅広い選択肢や、生涯、知識・教養が内側から豊かにあふれでるような自立した女性をめざすカリキュラムを用意している。2028年の創立150周年に向け、2026年4月には梅花歌劇団「劇団この花」創立10周年を期して「舞台芸術表現学科(仮称)」を構想中。このほか「国際教養学科」の名称変更など、教育のさらなる進化と拡充をめざす。
うめきた付近にあった梅花女学校
北野校舎(1908年~1926年)
梅花女子大学 プラムガーデン