Knowledge Innovation Award Knowledge Innovation Award

受賞作品

interview

KIMI crew -キミクル-
人の気持ちとビーコン、モノを繋いだ次世代IoTサービス

Vislab OSAKA(組込みシステム産業振興機構)/WINK2020事務局:新谷輝、
神戸電子専門学校:伊藤由偉、会田圭吾

視覚に頼るヘルプマークは、障害物などに遮られると助けや配慮が必要だと訴えにくいが、発信デバイス「キミクルビーコン」と受信デバイス「キミクルエフェクト」、送受信可能な「キミクルアプリ」を使えば、助けや配慮が必要だと周囲に伝えることができる。組込みシステム産業振興機構主催のビジネスコンテストWINK2020で優勝したアイデアだ。

01ビーコンの技術を使いたくて、試行錯誤

――この企画が生まれたきっかけを教えてください
伊藤さん(神戸電子専門学校学生)
5月後半からはじまった授業はすべてオンラインベースで、クラスメイトとの距離を感じるなか、組込みシステム産業振興機構主催「WINK2020」の募集を知りました。ミーティングに参加したのが会田君と私の二人だったのですが、アイデアを話し合ったところ、発想に似ている部分があったので、共同開発することにしました。
まず、人を助ける技術を開発したいという想いがあり、そのためにビーコンの技術を使おうと考えました。ビーコンは面白い技術なのですが、日本で普及しづらい要因として、位置情報が間接的にわかってしまうなどプライバシーの問題もあるのではないかと考えています。
そこからは試行錯誤でした。当初は技術ベースで考えており、例えばアミューズメント施設でお店を通り過ぎたときに、空いているアトラクションの情報を受信できるシステムや、花畑など荒らされては困る観光施設の入り口に設置して、入ってよい場所はどこかを知らせてはどうかなどと考えました。
キミクルのアイデアが生まれたのは、助けを必要とする方がつける「ヘルプマーク」の認知度が低く、現実的に機能しづらいと気づいたからです。ヘルプマークをお持ちの方にキミクルのアイデアを話したところ、「とても欲しい」と言っていただけました。
――どのように開発を進めたのでしょう
会田さん(神戸電子専門学校学生)
具体的には2020年7月の終わり頃に、ビーコンを使って人助けする技術を開発しようと決めました。そこからはオンラインで思いついたことを言い合い、良いアイデアが出たらインターネットで調べながら深掘りし、形にしていきました。様々な思いつきのなかで、新しくて良いアイデアがキミクルでした。ようやく形になったのはエントリーの2日前です。
1次審査のときはまだ粗削りで、具体的なことは決まっていませんでしたが、慶應義塾大学のシステムデザインマネジメント研究科に提供いただいたオンライン研修を通じてブラッシュアップし、アイデアがまとまってきました。

02チームを作り、開発を加速

――今後どのように開発を進めますか
伊藤さん
キミクルは助けや配慮が必要だという気持ちを発信するビーコン、受信するエフェクト、受信と発信の両方できるアプリの3つのプロダクトから成り立っています。エフェクトは既存設備に取り付けるもので、視覚・聴覚・触覚に訴えます。ビーコンやアプリは持ち歩けるもので、ビーコンについてはモバイル端末を所持していない高齢者や子供を想定しています。私たちはそれら3つのプロダクトを連携させ、サービス提供に向けて開発を進めています。私は助けや配慮が必要な気持ちを送受信したり、助けられた人から「ありがとう」といった反応が届いたりするアプリを開発しています。今現在、ビーコンの発信まで開発が進みました。会田君は3つのプロダクトを管理するサーバーを構築してくれています。
2年生からクラスメイトがチームとなって開発を進める機会がありますので、キミクルのアイデアを一緒に実現したい人を募集したところ、数人が手を挙げてくれ7人のチームになりました。これで開発を加速させていけるのですが、セキュリティに強い人材が不足しています。インターネットを経由しますので、セキュリティを保ちつつ安心安全にサービスをユーザーに提供できるよう勉強を進めていきます。

03サービス利用者を増やすために

――キミクル普及のための課題を教えてください
伊藤さん
人を助けるものなのに収益化していいのか迷いはありますが、コストやマネタイズを考えないわけにはいきません。キミクルのアイデアに共感し、協賛してくださる企業様を募り、広告やクーポンをアプリ内で配信する代わりに、店舗でビーコンを販売してもらったり、エフェクトの設置をしてもらったりなどを現時点では考えています。
まずはエフェクトとアプリを導入し、ビーコンをいつでも受信できる環境を作っていかなければならないと考えています。エフェクトは施設に設置してもらえるよう交渉をし、受信アプリは無料で提供。そのほか、助けられた人から「ありがとう」といった反応が届いたり、助ける側の活動状況が見えたりする仕組みづくりなど、今はお金のことはあまり考えず、まずエフェクトとアプリを導入してもらえる方法を考えています。
また、受信者に対し、具体的にどうやって情報を伝えるかも考えながら開発を進めています。エフェクトはLEDを光らせるなど、「普通じゃない」と周囲に認知してもらえる方法を考えています。転倒して起き上がれないといった緊急を要するヘルプには、緊迫感を与える伝え方をし、緊急でないヘルプは「近くに助けを必要としている人がいます」などの文字に加え、振動やチャイムのようなちょっとしたプッシュ通知で伝えるなど、臨機応変に切り替えていけたらと考えています。
――キミクルが普及すればどんな世界になると思いますか?
会田さん
困っている人がいても、周囲の人は気づかないかもしれませんし、気づいても助けて良いのか迷ってしまうことがあります。でもキミクルがあれば、相手の「助けてほしい」という気持ちが明確に伝わるので、優しい行動を促せると思います。
最初からサービスの対象を広げるとどういったサービスなのかが分かりづらくなるので、まずはヘルプマークやマタニティマークの利用者など、助けや配慮を求める人を対象に実証実験していきますが、その他のマークやシンボルに関しても、将来的にはキミクルで一元化して管理できるといいなと思っています。また、プライバシーの配慮は必要ですが、電柱にエフェクトを設置し、ランドセルにビーコンをつければ、児童がどこにいるのかわかるシステムも構築できたりなど、様々な応用ができるのではないでしょうか。
キミクルの技術が実現すれば、どんな場面で人助けが必要か、またどんな場所でヘルプが多いかといった統計も集まります。そのデータは他の分野でも使えると思っています。

新谷さん(組込みシステム産業振興機構:WINK2020事務局)
WINK2020審査委員のみなさんも期待されているアイデアですので、できる限りバックアップしていきたいと思います。
  • 問い合わせ
  • ナレッジイノベーションアワード事務局

    〒530‒0011 大阪市北区大深町3‒1 グランフロント大阪 ナレッジキャピタル7階 K708
    株式会社スーパーフェスティバル内(担当:松田)
    Tel:06‒6131‒6881 (平日10:00~18:00) / Mail:kia@kc‒i.jp

PAGE TOP