3歳以上のスレンダーな馬たちが疾走するのは、3,000mの芝のサーキット。時には6ケタ台まで跳ね上がることもある賞金の85%は馬主、10%は馬の調教師のものとなり、功労者であるジョッキーの取り分は、なんとたった5%です。
国内外のセレブやVIPが一堂に会するオーストラリアの競馬大会は、閉会後にベストドレッサー賞が決められる一大ファッションイベントでもあります。
このイベントのために地元や海外のデザイナーに特注した、豪華で美しい、場合によってはめっぽう奇抜な帽子を着用するのが、女性たちのお約束になっています。
そう、一連の競馬の真の主役は、これらの帽子かもしれません。形も色も素材もサイズもさまざまの、優雅だったり地味だったり、エキセントリックあるいは奇天烈な、はたまた芸術的なものまで百花繚乱、アイロニーと非常識さのギリギリの境界線を狙ってくるご婦人がたの帽子に見とれたり物笑いの種にするのに忙しく、馬のことは記憶から消えてしまうほどです。
時期的に、今年の春のシーズンがちょうど満開の時期と重なったバラをはじめとする花々もまた、フレミントン競馬の名物と言えるでしょう。
オーストラリアでも有数の園芸家たちが、実に10,000本を超えるバラと200品種を超えるさまざまな花をこの数日間のために育てています。
ビクトリア・ダービー・デーには美しい青の矢車菊、メルボルン・カップなら黄色のバラ、オークス・デーのピンクのバラ、ステークス・デーの赤いバラなど、期間中のイベントごとに公式の花が決められています。
また、フレミントン競馬が行われる1週間は、コースの周りで航空会社やファッションデザイナー、百貨店、地元のプロデューサーがスポンサーとなって素敵なショーやライブコンサート、ファンキーで物議を醸すようなパーティなどが開催されます。これらのパーティではテレビの司会者や歌手、モデルなどの有名人の姿も見かけます。
このレースはテレビで放映され、全世界の視聴者数は毎年、何億人にものぼります。ビクトリア州の人々は祝日ですが、オーストラリアの他の州ではただの平日(休みを取る人も多いけど)。しかし、東西南北どの地域でも、午後3時にはあらゆる作業を中断してラジオやテレビ、インターネット、はたまたショッピングセンターの大スクリーン越しに、栄えあるメルボルン・カップを見守るのがオーストラリア人というもの。自分が賭けた馬の勝ちを祈りながら、ビールやバブル(スパークリングワイン)をガブ飲みしてグリル肉にかぶり付くのです。
馬に対する関心がなかったとしても、同時期に開催されるスプリング・レーシング・カーニバルはオーストラリア人が解放感に浸りながらファッションと娯楽を思い切り堪能する1週間のイベントで、これもやはり必見です。
アングロサクソンの国々における競馬は、何世紀も昔からパーティやアペリティフ、ファッションショー、ご馳走による饗宴など、社会生活のさまざまな場面と切っても切り離せない存在です。
手持ちの中でも一番の晴れ着をまとい、これ以上ないほどエレガントにドレスアップした人々が街に押し寄せます。
この大会が「国を停止させるレース」と言われる理由も、これほどの人気と関心の高さを見れば納得するしかありません。
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