オーストラリアでこの騒ぎが始まったのは今をさかのぼること数週間前、まだ強制隔離政策が実施される以前のことですが、その後、アメリカをはじめとする世界各国でも、おそらくオーストラリアの後追いのような形で(なんたってこの「トレンド」はオーストラリア発ですから!)この現象が見られるようになりました。
スーパーマーケットは新型コロナウイルスの拡大にともなってトイレットペーパーの在庫が奪い合いになっている状況を発表し、インターネットではほとんどスッカラカンの商品棚の前で小競り合いをする人たちの動画が拡散され、SNS上では消毒用ハンドジェルやアルコール消毒液、その他の個人向け消毒グッズなどとともに、トイレットペーパーは突如としてラグジュアリーアイテム同然に扱われ始めた物品を象徴するミームの一種になりました。
最初に私が不思議に思ったのは、今回のような伝染病の流行やあらゆる緊急事態に備蓄すべきものはたくさんある中で、なぜトイレットペーパーが選ばれるのか?ということでした。
こんな形であらわれる強迫観念の正体を知りたいと思い、備えについて、またこの非常事態に自宅用に買いだめをしたアイテムについて、オーストラリア人の同僚たちに聞いてみたのです。念のために言っておくと、スーパーマーケットは決して閉鎖もしていなければ、そうなる恐れもありません。
大半の同僚たちは、みんながパニックになっているせいで自分もパニック状態になった、だから用心のためにトイレットペーパーを買った、と話してくれました。このウイルスの話のポイントは衛生管理だから、個人用衛生用品を備えることが重要、トイレットペーパーも然りと、ある人は言っていました。残念ながら、こんな事態にもかかわらず人の弱みに付け込むようなことをする無慈悲な人間がいて、そういう連中が、誰にとってもいずれは必要になる「生活必需品」のトイレットペーパーを大量に買い、高値を付けてネットで売っていることを嘆く人もいました。
少なくとも現時点のオーストラリアで食糧不足の心配はありませんが、個人的にはこれがいちばん気になる問題です。
しかし、みんなが殺到しているのはどういうわけかトイレットペーパーなわけで、それはおそらく、食べものなら外に出ればたくさん売っているし、各地の倉庫の食料が底を尽きるのはまだ先の話だからでしょう。
トイレットペーパーも同じことで、みんながそんなに早くトイレットペーパーを使うわけがないし、主要商品の工場はまだ稼働しているし、この先何年も出られないシェルターにいるみたいでめちゃめちゃ不安になるのがわかっているので、なにも焦って自宅をトイレットペーパーだらけにすることはないと思っています。
あいにく我が家のトイレットペーパーがまさに切れてしまったのですが、ほとんどのスーパーではお1人様1パックまでという決まりがあるし、在庫のある店を探すのもひと苦労という有様です。
SNSで友人たちがこの話題について話したり、トイレットペーパーを売っている店を教え合ったり、情報を手に入れた人がそれを買いに走ったりする様子は見ていて面白いですよ。
正直な話をすれば健康に良い食品とともに、このしんどい日々にテレビの面白いシリーズ番組の友となってくれるティムタム(オーストラリアの美味いチョコレート菓子)、ポテチやドリンクなどのおいしいあれこれをストックするほうが、私にとってはもっと重要なことなのです。