この旅のすべてについてお伝えしたいのですが、まずは私が乗った飛行機(そう、今はマスクなどの装備が万全なら飛行機でも安全に移動することが可能です)が降り立った場所、今回の旅行の出発点となったパースの話から始めましょう。
パースの街が築かれた1839年、西オーストラリア州には手つかずの自然が果てしなく広がり、住んでいるのはいにしえのアボリジニ族だけでした。
英国人たちは、かつては多くの鉱床のあったこの土地に小さな都市を造ることに決め、ここの調査を始めたのです。
鉱床に多くの金が眠っていることが判明し、大量の出稼ぎ移民が押し寄せた結果、街は劇的に発展して現在のような姿になりました。
採掘業は今でもこの地域の経済を支える大きな柱のひとつですが、それと共に観光や農業などの産業が急成長してきたのです。
パースは最も近い町であるアデレードからでさえおよそ2,500 km離れていて、世界でも有数の孤立した大都市です。
暮らしやすく整えられた街の空間と、自然と野生が残り、リラックスできる周辺地域との素晴らしい共存関係が保たれているのも、これだけ離れた場所にあるからこそ。オーストラリアで最も天候に恵まれた都市として知られるパースは、夏は高温で乾燥し、冬は寒くて湿潤という地中海性気候です。
この気候と、川からも海からも近い地の利のおかげで、173万人の住民はのんびり落ち着いて暮らせるのです。
パースのおもな特徴のひとつとして、海岸が誰でも立ち入りできる公有地とされていることが挙げられます。
海岸の美しさはもちろんのこと、街を流れるスワン川の魅力もまたパースのユニークさにひと役買っています。
川の北側の流域はキングス・パークで、黄金時代を偲ばせる見事な家が川沿いに並んでいます。ビーチを目指して下流に進むと海に面した新しめのエリアになります。
パースの街の中心部は、のっぽの摩天楼とコロニアル様式のエレガントなお屋敷が共存しています。CBD(セントラルビジネスディストリクト)と呼ばれるパースの経済の中心地は、店舗やショッピングセンターがひしめく歩行者専用区域になっています。アートとファッションで知られるお洒落なキング・ストリートや、有名な宮殿やスポーツセンターがある本通りのセント・ジョージズ・テラスもここにあります。
英国植民地時代のパースの遺跡でもあるセント・ジョージズ・テラスは、ヘルシーフードと美味しいワインが楽しめるスポットとして有名。ヘイ・ストリート・モール、マレー・ストリート・モール、フォレスト・プレイスなどの商業施設も充実しています。
マレー・ストリート・モールからヘイ・ストリート・モール、セント・ジョージズ・テラスまでは、屋根付きギャラリーと歩道が続いています。
街の中心地が終わるあたり、セント・ジョージズ・テラスの端まで行くと、聖ジョージとドラゴンの戦いの場面とともに15分毎に鐘を鳴らすビッグ・ベンのレプリカを頭上にいただいたカルーセル(回転木馬)が現れます。
体長25mのクジラの骨、11トンほどの重さの隕石、メガマウスザメなどが見られる西オーストラリア州立博物館は、ぜひとも足を運んでおきたいところです。この州のアボリジニ族や宇宙の起源にまつわる展示もあれば、恐竜や鳥類、蝶、哺乳類全般、海洋世界の展示室まであります。また、1856年に完成してから1888年までスワン川の開拓移民たちが使用していた旧刑務所も、この博物館のある複合施設の中にあります。
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