• 2022.12.14
  • 春は紫色の季節
日本で桜が咲く頃はとくに美しく重要な時期であり、多くの人が桜の花を見て過ごすものだというのはよく聞いています。
「ジャカランダ」の木に美しい紫色の花が咲き誇るシドニーの春も、やはり同じように、人々が自然の恵みに対して畏敬の念を抱く季節です。
シドニー市内の公園や道路沿いに生えている何百本、いや何千本ものジャカランダの木。通常これらが花開くのは10月中旬から11月末までの約6週間で、満開のピークは11月の中頃でしょうか。通りを彩る美しいパープルの花、そして花びらが歩道に散りゆく様は、まるで紫色の雨のようです。シドニーに限らず、もしも1年のこの時期のオーストラリアに滞在することになったら、何としても実際に見てほしい絶景です。

このライラック色の女神を溺愛するあまり、シドニーっ子はこれらがオーストラリア生まれの花だと勘違いしがちですが、実際はブラジルが原産地。シドニーにジャカランダがたくさん植えられた起源については諸説あり、新生児が生まれた家庭に対し、病院の院長がジャカランダの種をプレゼントしているうちに、いつしか街じゅうがラベンダー色に染まっていたという、おそらくは都市伝説的なものもあれば、20世紀初頭に都市の美化計画の一環として、市の職員が植えたのだという説も存在します。
この木がこの地にどうやって根づいたのか、真実を解明できるほどの情報は残っていませんが、少なくとも、最初のジャカランダの種は南米からブリスベンに渡ってきたということは確かです。探検隊の隊長たちが、おそらくは小遣い稼ぎのために地域の人々が関心を持ちそうな植物の種子を市場に持ち込んだのでした。19世紀、ブリスベンシティー植物園の園長を務めていたウォルター・ヒル氏が、探検隊長からジャカランダの種を購入して蒔いたようです。それからまもなく、その種がシドニーにも送られたのでしょう。
実はノース・ショアもジャカランダの花の名所です。この木はとても人気があるので、郊外の目ぼしい通りでは、ジャカランダの花を眺めるためのウォーキングツアーも数多く実施されているほど。とくにキリビリは、道路の両側からお互いに向かって伸びるジャカランダが頭上で紫色の天蓋を形作り、地面にライラック色のじゅうたんを敷き詰めた情景が、シドニーでも屈指の美しさとの呼び声も高いエリアです。
キリビリ以外では、より静かなのに美しさでは負けていないラベンダー・ベイやグリニッチなどの場所がお勧めです。シドニー・オペラハウスの巨大な白い帆のような屋根や歴史あるシドニー・ハーバー・ブリッジももちろん壮観ですが、ライラック色の花がこれらのアイコニックな建物に可憐な春の彩を添えています。
海岸線やザ・ロックスの石畳の道、フェリーの波止場とMCAこと現代美術館の間の明るく大きな森でも、ジャカランダの花が咲き誇っています。ちょっと視点を変えてサーキュラー・キー駅の上からの花見というのも、また違った趣で悪くありません。
それほど混み合わず(とくに週末には)、なんといっても車が通らない点がありがたいのは、シドニー大学のキャンパスにあるジャカランダですね。
最後に、ジャカランダを見るスポットとして忘れてはならないのが、やはりシドニー王立植物園でしょう。この植物園には、1850年に植えられたジャカランダの木があります。ここは当時、ジャカランダの花を眺められる唯一の場所でした。今でこそ数多くある名所のうちの1つとなり、一番有名な場所というわけでもありませんが、ハーバー・ブリッジが背景になる絶好の撮影スポットなので、インスタ映えの点ではピカイチの場所だと断言できますよ!


ジャカランダの木

特派員

  • アルベルト フェランド
  • 職業土木技師

みなさんこんにちは!私はイタリア出身ですが2012年からオーストラリアのシドニーで土木技師として働いています。
趣味は、海岸沿いの散歩、サーフィン、写真を撮ることです。
旅行が好きで、以前はブログを書いていたこともあります。
私はシドニーを拠点としており、アウトドア派でローカルイベントにも詳しいので、皆さんにシドニーの素晴らしさを知っていただければ光栄です。

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