オーストラリアっ子からは「ブリッシー」とも呼ばれているブリスベンの街から70㎞ほど南にあるのがゴールド・コーストです。
初めてこの街を訪れたとき、ゴールド・コーストは何も悪くないのですが、私はちょっぴり失望したのでした。
良い噂をたくさん聞いていた私は、ゴールド・コーストに着いたらすぐにでも海に飛び込み、スカイラインの眺めを満喫する気満々だったのに、あいにく数日間雨が降っていたのです。これぞまさに、クイーンズランド州ならではのエキゾチックな熱帯性気候なんですけれどね。
というわけで、私は2回目の訪問に賭けることにしました。
旅のスタート地点は、この街の最南端であるパラダイス・ポイント。まっすぐでこれといった特徴もない退屈なハイウェイから離れると、まさに極限の世界に解き放たれました。大きな邸宅群、銀色に輝く高層ビル、緑あふれる公園、そしてあらゆる種類のアミューズメントパーク。ここにあるすべてが想像を超えていたのです。そしてもちろん、人もたくさんいました。
犬を散歩させる人々、ローラースケートを履いた女の子たち、カラフルな風船で飾られた監視塔、まるで誘っているような波。海に続く入り口を見かけるたびに足を止めてみましたが、どれもそれぞれ違っていたし、そこから見える高層ビル群の眺めも異なっていました。
ここの海水は温かく、波と戯れる喜びと言ったら! 波に飛び込んだり潜ったりして海に包み込まれるのは、楽しいなんてもんじゃありません。大きい波がやってきたときはちょっぴり大変でしたが。波に跳ね返され、倒れたり回転したりして、気がつけば水着の中に砂が何kgも入っていました。
とくに魅力的なのはミック・シャンバーグ公園で、ここの木製の遊歩道からはゴールド・コーストの素晴らしい眺めを楽しむことができます。一方にはまるでレゴブロックを積み上げたかのような高層ビル群が立ち並び、もう一方にはバーレイ・ビーチの静かな湾が広がります。ここは、テーマパークや巨大なラグジュアリーホテルとは遠く離れた、地元っ子のためのビーチです。風が多いところなので、暑いときはここに来て風に当たるのがいいかも知れません。
その場の思いつきで写真を撮ったりしてから、私たちは海岸をずっと探索し続け、バーレイ・ヒルまでたどり着きました。
ここは眺めの良さで知られる、いわゆるインスタ映えスポットとしても有名なところですが、個人的には前述したミック・シャンバーグ公園の方が好みでした。バーレイ・ヒルから見ると、海岸は月のような形をしています。紺碧の海と長いビーチを取り囲む緑の間に、白い月が浮かんでいるように見えるのです。
私は遠くに見えるビーチの眺めに夢中なあまり、10センチほど離れた場所に巨大なトカゲがいることにも気がつきませんでした。ヒガシウォータードラゴンという種類のそのトカゲは、グリーンと黄色、黒のきれいな体と生命力に満ちた目の持ち主で、通りかかった虫を捕まえようと待ち構えていたのです。その隣にはオーストラリアでは定番のオーストラリアクロトキがいました。白い胴体に黒くてシワシワの首を持つ非常に大きな種類のトキで、ゴールド・コーストと周辺地域ではどこにでもいる、ほかの場所で言えばハトのような存在です。
ゴールド・コーストのエンタメとレストランの中心地、サーファーズ・パラダイスは、のんびりとくつろげる場所ではありませんが、素敵なところです。
ものの値段も高いし、人混みもひどいと何年か前から言われていますが、今でも十分に魅力あるエリアです。ここではゴールド・コーストのナイトライフも楽しめるし、ドライブ旅行や日帰り旅、ウォータースポーツなどの目的に合わせて選べる様々なホテルがそろっています。友人同士の旅も楽しいものですが、ロマンチックな休暇や家族での旅行なら、ニュー・サウス・ウェールズ州方面に南下したあたりの海岸沿いに宿を取るのをおすすめします。