ブロードウェイはマンハッタンを斜めに横切る唯一の大通りです。タイムズスクエア周辺では、この有名な通りはシアター・ディストリクトとして知られていて、有名なミュージカルの本拠地にもなっています。シアター・ディストリクトは20世紀初頭の30年間で発展し、ピークを迎えた1927年から28年には80もの劇場が運営されていました(現在ブロードウェイで運営されている劇場は49)。ところが、不幸にも世界大恐慌がブロードウェイにも襲いかかり、多くの劇場が映画館やバーレスク劇場に姿を変え、安価な再上映映画やアダルトショーなどを提供していました。70年代には麻薬取引や犯罪、売春が横行する場所として知られていましたが、80年代から転換が見られ、90年代全体を通じて改良されていきました。1980年には地域振興、治安改善、経済発展支援を目的にタイムズスクエア・アライアンスが設立されました。現在のタイムズスクエアは各段に清潔・安全になり、高い収益性を生み出しています。そして毎日、何千人もの観光客を迎え入れています。
タイムズスクエアはスクエア(正方形)というよりは、ブロードウェイと7番街の2つの主要な大通りからなる交差点といった方がしっくりきます。この地域は19世紀まではロングエーカー・スクエアと呼ばれていて、馬車の製造工場や鍛冶屋、馬小屋、馬市場が並んでいましたが、地下鉄の開通に伴い名前が変更されました。今ではタイムズスクエアはニューヨークで最も観光客の多い場所となり、ネオンの洪水や巨大なLEDスクリーンを見に数え切れないほど多くの人が毎日訪れています。ブロードウェイの42丁目から47丁目までの区画は歩行者天国になっていて、最近、自治体が誰でも利用できるパラソルやテーブル、椅子を設置しました。今ではニューヨーカーもここに来て椅子に腰掛け、興奮と熱狂に包まれた名所の風景を楽しんでいます。タイムズスクエアは大晦日を盛り上げるイベントでも有名です。タイムズスクエアにある尖塔のてっぺんからニューイヤーズ・イブ・ボールが降下するのと同時に、カウントダウンが始まります!
多くの歌手、俳優、ダンサーにとって、ブロードウェイの作品に出演することは、その人のキャリアにおいて最も重要な実績になります。ブロードウェイでの出演は、逃してはならないチャンスであることは疑う余地がありません。ミンスコフ劇場で上演されているライオンキングはおそらく最も有名なミュージカルで、10年以上のロングランを続けています。
ブロードウェイ屈指のウィンターガーデン劇場は、もともとは馬市場があった場所です。この劇場ではウエスト・サイド・ストーリーやピーターパンなど数々の重要な作品が上演されてきました。シカゴ、スパイダーマン、ウィキッド、マンマ・ミーア、シュレックなどブロードウェイの重要作品は他にもたくさんあります。数十年にわたり公演が続けられた一番有名な作品はおそらく「キャッツ」でしょう。より子供向けのミュージカルもあれば(メリー・ポピンズやシュレックなど)、完全に大人向けの作品もあります(ブック・オブ・モルモンやシカゴなど)。
ブロードウェイを北から南に向かって歩いていくと、すべての劇場を目にすることができます。また、脇道を選んでも著名アーティストによる素晴らしい作品を上演中のオフ・ブロードウェイの劇場に立ち寄ることができます。ハーレムやワシントンハイツからブロードウェイを歩き始めると、ドミニカ系のミュージカル劇場がいくつかあり、こうした劇場は若手作家たちが手腕を発揮する新たな舞台となっています。ワシントンハイツでは、デイヴィッド・レターマンのショーをはじめとする有名なTV番組を収録する劇場をすべて見つけることができます 。その場に行くだけで誰でも無料でTV番組に映れる可能性があるので、こうした劇場の前では番組に出ようとする人たちの長い列をよく見かけます。
さらに南に向かって歩くと、マーティン・シーガル・シアター・センターに行き当たります。ここはニューヨーク市の重要な演劇場であるとともに、世界中から多くの劇作家たちがここに来て学んでいます。ニューヨークのショーは舞台にとどまりません。さらにじっくり観察してみると、ブロードウェイと映画とのつながりを発見することができますし、ブロードウェイの劇場内でとてもたくさんの映画の撮影が行われていることも分かるでしょう。ブロードウェイは都市の中にあるファンタジーワールドであり、華やかな演劇の世界を愛する人たちの生活と情熱を結びつけている存在です。