昔から、アメリカで最も注目されてきたスポーツがベースボールです。スピード感があるとは言えませんが、それでもエキサイティングで、観る者を魅了します。多くの人にとって最高の「アメリカの娯楽」であるベースボールは、何十年もの間、国民を楽しませてきました。ワールドシリーズともなると、1941年の時などが特にそうですが、アメリカの文化の一ページとして語り継がれます。ジョー・ディマジオやベーブ・ルースといった偉大な選手たちの名前が人々の記憶から消えることもありません。
というわけで、ニューヨーク・シティーでベースボール観戦することには異論のないことがお分かり頂けたと思います。。この街を本拠地にしているのが、メッツ(クイーンズ区)とヤンキース(ブロンクス区)です。ヤンキースはおそらく世界で最も有名なベースボールチームでしょう。ニューヨーク・ヤンキースのロゴ「NY」のついたベースボールキャップを見たことがないという人はいないのではないでしょうか。もちろん、どちらのチームの試合を観戦しても、忘れられないひと時を過ごすことは間違いありません。
スタジアム未体験の人や外国から来られた方は、試合を観るために自らブロンクスに足を踏み入れていいものかどうか、戸惑う方も少なくありません。でもご安心ください。スタジアムまでのルートは100%安全ですし、試合のある日には一帯を警察官がパトロールしています。周辺地域もかつてと比べればずい分と安全になりました。それにスポーツイベントはそもそも安全なものです。(そうではない国もありますが)アメリカでスポーツは、人々を平和に集めるものなのです。地下鉄に乗って、試合を観に集まった人たちに囲まれる。それだけでも他では味わうことのできない貴重な体験です。テレビ中継ではとても感じられない雰囲気を体感できます。ヤンキースタジアムに行くには、アップタウン行きの地下鉄に乗って、ブロンクスの「ヤンキースタジアム」駅で降ります。
2008年9月、旧ヤンキースタジアムで最後の試合が行われ、その月のうちに取り壊しが始まりました。2009年に完成した新しいヤンキースタジアムは、旧スタジアムの跡地に隣接しています。収容人数は若干少なくなって「たったの」50,000人ですが、旧スタジアムの良さは保たれ、新スタジアムに引き継がれています。収容人数が少なくなったのは、シートが大きくゆったりとしたものに変わったからです。
1913年以降、ニューヨーク・ヤンキースはマンハッタンを本拠地としていましたが、1920年にベーブ・ルースを獲得すると、ファンが増え、チームは新スタジアムの建設を余儀なくされました。マンハッタンかクイーンズで土地を探していたのですが、結局ブロンクスで見つかった広い場所に決まりました。それから一年あまりでスタジアムが建設され、「ルースが建てた家」と呼ばれるようになります。ベーブ・ルースが加入したおかげで建てることができたからです。
ベースボールの他にも、旧ヤンキースタジアムでは、アメリカンフットボールのニューヨーク・ジャイアンツの試合が何シーズンにもわたって開催され、サッカーのトップリーグの試合も五年間行われました。
さらにスポーツ以外でも、旧スタジアムを舞台に、ローマカトリック教会がミサを三度執り行い、9.11同時多発テロの公葬があり、U2やローリングストーンズといったバンドが素晴らしいコンサートを開いています。
スタジアムでの観戦中に気をつけたいのは、時計を気にしないということです。ベースボールには決められた試合時間がありません。二時間で終わることもあれば、四時間続く場合もあります。スタジアムでは、アメリカの雰囲気を胸いっぱいに吸い込むことができます。発泡スチロールでできた大きな指型の応援グッズを抱えた熱烈なファンや、国歌を熱唱する家族、ホットドッグ、ナチョス、ビール、巨大なスクリーン、バトン、途中で要求される拍手、音楽、スタンディング・オベーション、喝采。
ニューヨークでメジャーリーグのベースボールを観戦する際は、できるだけ早くチケットを購入することをおすすめします。そのほうがたいてい安く買えます。
ベースボールのもう一つの魅力は、数あるアメリカの素晴らしいスポーツの中で、唯一夏に行われるという点です。地元の人も観光客も比較的自由な時間がたくさんある7月から8月にかけて、ベースボールはこの街がお届けする最大のスポーツショーです。