• 2018.04.13
  • 街の中心で18マイルの本を揃えるストランド・ブックストア
ニューヨークシティは素晴らしい街、これには誰もが納得しています。
この街に飽きることなんてあり得ませんが、私はチューリップや桜が満開になる春こそがベストシーズンだと思っています。やっとスカーフや重たいジャケットを脱いで、アウトドアを楽しめるようになりますからね。でも、夏だって秋だってすべてが素晴らしく思えるんですよ、雨が降り始めるまではね。
誤解しないでほしいのですが、ビッグアップル(ニューヨークシティの愛称)では雨の日だってやることはたくさんあります(ちょっとだけ例を挙げると、ミュージアム、ショー、限りない食事の選択肢など)。でも地元の人間としては、ちょっとお金を節約しつつ、混雑地の喧噪から逃れたい気持ちになる時もあります。
最初の雨の日が霧と曇り空に覆われていたら、ストランド・ブックストアのような大型書店に行って、とっておきの本を買う絶好のチャンスです。
グリニッチ・ヴィレッジに位置するストランド・ブックストアの問題点といえば、店に入ることではなく店から出ることにあります。書店が誇るキャッチフレーズは「18マイルを超える本」の提供。つまり、メートルに換算すると約29kmにもおよぶ蔵書を取り扱っているのです。
希少本を扱う世界最大の書店ともいわれていますが、それは店に入る前からよく分かります。例えば、アガサ・クリスティの初版本や70年代の興味深い写真集が見つかる棚がいくつもありますから。
店員が厳選した1ドル本のコーナーもあって、甲乙つけがたい本が並んでいます。 1ドル本の棚から離れ(1冊も買わずに!)、店内の他のフロアへ移動するだけでも一苦労ですが、いったん書店の中に入り込んでしまったら、そこから抜け出すことなんてほとんどできません。
昨年、創立90周年を迎えたシンボリックなこの書店は、かつては現在の位置からほんの数ブロックの所にありました。そのストリートには何軒もの書店が集まっていたので、書店街として知られていましたが、時代の流れとともに銀行やチェーン店に取って代わられました。今でも1軒だけ残っているのがストランド・ブックストアで、オーナーのバス家が店を開いた当初から家族経営を貫いています。この界隈でたったひとつの書店であり(残念!)、「パパママストア」でもあるわけです(そうはいっても1ブロック丸ごと店舗!)。
現在、書店を経営しているバス家の娘、ナンシーにニューヨークのジャーナリストが最近インタビューしたところ、店内で一番高価な蔵書は、挿絵を描いたマティスと著者ジョイスのサインが入った『ユリシーズ』の初版本で5万ドルするそうです。書店は地上3階、地下1階で構成されていて、どこへ行っても膨大な本に触れることができ、アート、写真、歴史、料理、SF、数学など、詳しく読んでみたいあらゆる本がそろっています。
本はジャンル別、著者別に分類されていますが、特設コーナーとしてベストセラーが並ぶテーブルや、地元の著者の作品を集めたコーナー、ギフト本や先ほどご紹介した1ドル本のコーナーなどもあります。
さらに、店員おすすめの新刊が並ぶ特別な棚もありますが、ここでぜひお伝えしておきたいのは、この書店には本の虫のような店員ばかり、200人以上も雇われているということです。
なお、地階では音楽、映画やちょっとした便利グッズなどが売られていますが、独立店であるこの店は、最近では本以外のあらゆる製品も売るようになった他のチェーン書店の様相とは一線を画そうとしています。
本好きや目利きのための書店となることを目指し、最新の本にも昔の本にも精通した店員を配置しています。店内にはお客が自分の好みに合わせて本を検索したり、買いたい本のヒントを得るのに利用できるパソコンも設置されています。ほらね、雨の日のこれ以上ない過ごし方でしょう!

特派員

  • クラウディア・ ディアス
  • 職業ニューヨーク大学教授

私は、ニューヨーク大学でスペイン文学と演劇の教授をしていますが、もともとはカリフォルニア出身です。余暇には長い時間散歩をするのが好きです。ニューヨークでは常になにか新しいものをあちこちで見つけることができるので、それが本当に大好きです。この街のお気に入りの季節は秋です。秋にはセントラル・パークの紅葉が素晴らしく、私の大好きなハロウィーンもあるからです。
私のブログを通してみなさんにニューヨーク市と、私の住むブルックリンに興味を持っていただきたいと思います。また、ここに住む人間の目から見たビッグアップルについての新たな視点を紹介したいと思います。

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