1840年代にこのチャイナタウンへ最初にやって来た中国系移民は、広東出身の商人で、パーク・ロウでタバコ屋を営んでいたそうです。その後、彼の成功に触発され、同じようにタバコを売って運試ししたいと考える他の移民も押し寄せるようになり、タバコの専売化が徐々に進んでいきました。最初の移民となった商人は、モット・ストリートの南に小さなゲストハウスを建て、チャイナタウンへやって来た初期の中国系移民向けに、二段ベッドを貸していたとも言われています。ゲストハウスのオーナーとして得た収入によって、パーク・ロウの店をなんとか拡大させ、これが現在、誰もが知るチャイナタウンへと発展することになりました。
ところが、それから間もなく、アメリカ西海岸で中国系移民が多様な職に就くことを阻止するという、人種差別を正当化する法律が制定されたため、そうなる前に多くの中国系移民は仕事を求めて東海岸へ移住し、レストランやクリーニング店などを経営するようになりました。
1965年に移民法が制定されると、より多くの移民をアジアから受け入れることが可能になり、チャイナタウンの人口は劇的に増加、中国系の人たちがいっそう暮らしやすい地域になっていきました。
こうした動きは、かつてのリトル・イタリーをほとんど根こそぎ吸収してしまう勢いの最近のチャイナタウンの拡張などにもみられ、ロウアー・イースト・サイドの多くが飲み込まれようとしています。メインストリートのモット・ストリートでは、生きたウナギ、四角いスイカ、ランブータンという毛むくじゃらな果物など、エキゾチックな食べ物を売る数百の屋台を目にすることができます。
また、キャナル・ストリートは安いジュエリーやおみやげ品で有名です。どちらのストリートにも、信じられないくらいバラエティーに富んだレストランがあるのでびっくりさせられると思います。中国本土のほぼ全地域と香港、さらにはタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアの代表的な料理を出すレストランやショップが軒を連ねています。アジア料理が好きな人は、どの店を選べばいいか苦労しますよ。
アジアの食材を買いたかったら、中国系の露店をのぞいてみましょう。お菓子から漬け物、さまざまなソース、東洋のレシピ向けの多種多様な材料はもちろん、中国語で書かれた処方箋付きの漢方薬、家庭用品、宗教関連グッズ、衣類にいたるまで何でも売られています。
こういう店は大抵、とても独特なにおいを漂わせています。キノコ、香草、膨大な種類の魚の干物や海産物など、売り物のさまざまな乾物が醸し出しているのです。よく、チャイナタウンは腐った魚のようなにおいがすると言われるのはそのせいです!
こういうものより、お茶を飲むのが趣味という人には、緑茶に紅茶、ハーブティーなど、いろんなお茶を売る専門店もあります。そして、チャイナタウン観光の一日の締めくくりに最高なことといえば、ご当地グルメのひとつである選りすぐりの点心をお茶と一緒に味わうこと、これに尽きます。
なお、この興味深い地区の歴史をもう少し知りたいという人には、近年オープンしたミュージアム・オブ・チャイニーズ・イン・アメリカに立ち寄ることをおすすめします。チャイナタウンの中心にあるこのミュージアムには、いくつもの展示ギャラリー、インタラクティブなキオスク、多目的ホール、研究センター、複数のワークショップに利用できる研修ルームがあります。
それから、もし偽ブランド品を探しているなら(当然、販売は禁止されていますが)、チャイナタウンは絶好の場所ですよ。
チャイナタウンはユニークで、独特の魅力にあふれています。ここへ来たら朝の賑わいを見逃してはいけません。地元の人たちが点心の店で朝食をとったり、買い物をしたり、通りでおしゃべりに花を咲かせている姿は、無料のカルチャーショーそのものです!
ロウアー・マンハッタンには重要な観光地が他にもあります。知名度はそれほどではないけれど、同様に素晴らしいものとして、ニューヨーク・シティ・バレエ団、メトロポリタン歌劇場、フィルハーモニー管弦楽団、リトル・イタリーなどがありますが、これらとともに名を連ねるのが言わずと知れたチャイナタウンなのです。