英語のことわざに「Sharing is caring(分かち合いは思いやり)」というものがあります。この考え方に賛同する人には、社会的側面だけでなく日常生活面でもロンドンは正にうってつけの場所です。
シェアリングエコノミーを活用して生活することはよく知られており、ハウスシェアリングや自転車シェアリング、カーシェアリングといったサービスを、現在では誰もが普通に利用しています。ところが、こうしたサービスは議論の的となることも少なくありません。公的または民間の輸送手段、あるいはホテルや朝食付き宿泊施設(B&B)の納税をめぐって、不公正な競争がいくぶん生じているためです。とはいえ、私は公正と不公正の線引きをしたいと考えているわけでは決してありません。実際のところロンドンは、新たなシェアリングエコノミーにふさわしい場所となっているのです。そこで、シェアリングに関する革新的モデルを3つご紹介したいと思います。ライバルを過剰に妨害するようなものではなく、コミュニティを支えて「富を分配する」素晴らしいアイデアばかりですよ。
市の中心部で実施されている自転車シェアリング
ロンドンでは現在、コワーキングスペースやシェアリングワークプレイスがはやっていて、多くの小規模企業は事業スペースにかかる(高額な)費用を分担し合って、共存するスタイルを選んでいます。広いオフィススペースへの継続的な需要、賃料の急上昇、技術開発によって、ロンドンではこの数年の間にコワーキングスペースの利用が急速に広まっているのです。企業の中には、収支をやりくりするためにオフィス内のキュービクル(パーティションで小さく区切った作業スペース)を貸し出しているところもあります。また、こうしたシェアリングに対するニーズをビジネスにする企業まで現れていて、使われていない倉庫や廃ビルを利用したシェアードワークプレイスが造られています。シェアリングエコノミーでは、企業はオフィス家具から電話線、コピー機に至るまで、あらゆるものを共有します。これは特に、事業を立ち上げようとしているスタートアップ企業や小規模企業にメリットをもたらします。長年にわたり、カフェはインターネット接続サービスを提供してきました。そして、何百人ものフリーランサーやビジネスマンが利用するワークスペースや会合場所へと形を変えてきました。現在では交流イベントを推進したり、ビジネスミーティング用にスペースを貸し出すカフェも出てきています。ところで、市の中心部で駐車場を見つけようとすると、高くつくうえに不便だったりしますよね。この問題に対処するために、土地所有者が駐車スペースを賃貸できるようにするパーキング事業があります。シェアパーキング事業は、主要地下鉄などの交通ハブ周辺に住む利用者にとって儲かるビジネスであるとともに、多くの人に通勤費の節約をもたらしています。
シェアードオフィスは珍しくない
私はシェアリングエコノミーのトレンドを頭に入れていたので、市内で古本屋を探そうとしたときに、無料で本を提供したり、持ち帰ったりできる場所をたくさん見かけても、たいして驚きませんでした!ご存知ない方のために説明すると、ブックシェアリングとは公共の場所を活用して、無料で読み終わった本を提供したり、読みたい本を持ち帰ったりすることができるしくみです。規制のない非公式な物々交換みたいなものです。ロンドンではオフィスに本を共有するための専用の棚が設置されることは珍しくありませんが、多くのカフェやショップでもこうした取り組みが始まっています。中でも「Books on the Tube」というソーシャルメディアを立ち上げた取り組みは群を抜いています。2012年に設立されたこのコミュニティは、ロンドンの地下鉄を一種の移動図書館にみたてて、お気に入りだった本を回し読みできるようにするというアイデアに基づいています。唯一のルールは、見つけた本は読み終わったら地下鉄内に返却し、新たな読者の間で共有できるようにすること。彼らのサイトでは、コミュニティの管理人が地下鉄の座席に置いてあった本の写真を送ってくれるよう読者に求めています。利用者は「寄付」したい本に貼るステッカーをもらうこともできます。なんと、ハリーポッターの映画で有名なエマ・ワトソンもこの取り組みを推進していて、地下鉄車内に何冊もの本を寄付しているのです。
日常化しているカーシェアリング
最後にもうひとつ耳寄りな話を紹介したいと思います。スキーやサーフィンなどのスポーツはすごく楽しいですが、とにかくお金がかかってしまいますよね。協力的な消費経済で盛り上がっているトレンドとして、使わなくなってしまうスポーツ用品をレンタルするというものがあり、ロンドン周辺にはこうしたサービスを提供する専用ショップもあります。しかも、これらのショップでは預かっている間にレンタル用品の一部を紛失したり、盗まれたりした場合に備えて、スポーツ用品を提供するオーナーに保険まで用意しています。