ロンドンは、実に多様な表情を見せる都市です。ロンドンという街そのものが巨大な国際都市として常に変化し続けていることは以前にもお伝えしましたが、ではこのイギリスの首都に、どれほどイギリスらしさが残っているのでしょうか?
最先端の若者文化が溢れるショーディッチやイーストエンド、音楽が盛んなカムデン、国際色豊かなソーホーを擁する一方で、ロンドンにはエレガントな「英国的」気質もしっかりと健在します。英国の首都ロンドンには、いわゆる英国的「ステレオタイプ」に出会えるエリアがいくつか存在します。
ロンドンにあるオールドイングリッシュ様式のファサード
ピカデリーサーカス、ハイドパーク、オックスフォードストリートに囲まれた
メイフェアは、ロンドンの中心に位置するエリアです。この一帯がロンドン屈指のショッピング街として観光客に大人気の地域であることは、説明の必要もないでしょう。その一方で、最大級の百貨店が立ち並び、平日には多くのロンドンっ子が働くこの界隈は、地域住民で賑わう商業地区でもあるのです。オックスフォードストリートに出来た長蛇の列に並んでロンドン随一のショッピングモール、セルフリッジズに足を踏み入れ、ボンドストリートのショーケースをちょっと眺めてみるのもおすすめです。セルフリッジズは、簡単に昼食を調達できる場所としても絶大な人気を博しています。地下フロアに広がるフードコートで美味しいテイクアウトメニューを選んだら、界隈のビジネスマンのように、近くの公園でランチをとるのもいいでしょう。ハイドパークとグリーンパークという2つの王立公園に近いメイフェアには、100年に及ぶ樹齢を誇る木々やベンチのあるバークレースクエア、グロブナースクエアなどの広場も点在しているので、周辺の英国式庭園を眺めながらひと休みするのもいいでしょう。グロブナースクエアから2ブロック進むと、何軒かのビルの陰にひっそりと佇む、とっておきの緑の空間が待っています。かつて墓地であった場所に作られたこの庭園がそうであるように、過去の名残を求めて通りを歩けば思いがけない発見に満ちている、それがロンドンという街なのです。メイフェアは高級ホテルや、ザ・リッツ・ロンドンのティールームに代表される伝統的アフタヌーンティーの名所が集中する場所としても有名です。ショッピングに関しても選択肢に事欠きません。地下鉄のボンドストリート駅の近くにあるモルトンストリートは、ジョーン・バーンスタインが1970年代に開業し、アレキサンダー・マックイーンなどのイギリス人デザイナーの商品を扱ったことで知られるブラウンズを始め、おしゃれなショップが立ち並ぶ歩行者天国です。数々のギャラリー、英国的イギリス文化の名残として知られるショッピングアーケードなども、メイフェアならではの魅力的な存在です。例えば1819年にオープンしたバーリントンアーケードなどは、今でも営業しています。有名人も数多く居を構えるメイフェアですが、とあるワンベッドルームのアパートメントの家賃は約1,500ポンド…1週間でですよ!
年代物の風格を放つメイフェア地区のビル
ロンドンで最も「ポッシュ(高級)」な場所のひとつに数えられる
チェルシーは、ロンドン自然史博物館やヴィクトリア・アンド・アルバート博物館など、ミュージアムの宝庫です。これらのミュージアムの何が凄いかと言えば、入場料が無料なのです!天気があまり良くない時など、博物館や美術館で何時間かを過ごすロンドンっ子(とくに子供連れのファミリー層)は少なくありません。見事なコレクションが揃うミュージアムでは、訪れるたびに新たな発見を無限に得られるからです。チェルシーを歩くと優雅で落ち着いた雰囲気を感じることができますが、近年では、世界的なスポーツシーンで重要な役割を担う有名サッカーチームがあることでより広く知られています。チェルシーはかつて、アーティストや画家、詩人たちのための町で、彼らは独特の自由奔放な雰囲気をこの地に創り出しました。それが今やロンドンで最も気品あるエリアとなり、またサッカーチームの人気も相まって、多くの有名スターたちが住むようになりました。彼らの住居の大半は、テムズ川の河畔に集中しています。ここの住人であったローリング・ストーンズやビートルズのメンバーに思いを馳せながら歩くチェルシーは、ひときわ感慨深く感じられるでしょう。ブリティッシュ・パンクロックが産声を上げたのも、ここチェルシーだったのですから、何とも不思議な思いに駆られますね。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
リッチモンドは何かにつけてロンドンの富裕層の町だと言われますが、実際にその通りです。清潔な道路や白の美しいファサードのある建物の佇まいは、この地域のカラーを雄弁に物語っています。しかし、ロンドンが誇るユニークな至宝と呼ぶべきリッチモンドパーク(その面積はNYのセントラルパークの3倍です)のような素晴らしい公園のあるリッチモンドを、ここの住民ではないからと言って素通りする手はありません。この公園には600頭以上のシカと、140種もの鳥たちが生息しているのだから驚きです!ラグビー好きにおすすめなのは、リッチモンドパークを出てすぐの所にあるトウィッケナム・スタジアムです。イギリスラグビーのナショナルゲームが開催されるスタジアムは、この最高のスポーツに捧げられたミュージアムも併設しています。「クレイジーな」夜遊びシーンとは無縁の閑静な住宅街リッチモンドにも、週末になればライブミュージックを楽しめる典型的な英国式パブが数軒あります。テムズ河岸を2つ擁する唯一の地区で、エリア内の緑の豊かさも堂々一位のリッチモンドは、中世以降、各種のスポーツ競技が行われてきたという歴史を持ちます(リッチモンド宮殿とその劇場の遺構は見学可能)。プロ・アマを含め300隻以上が集結するヨーロッパ最長距離のボートレースの開催場所も、ここリッチモンドです。リッチモンドの手つかずのイギリス原風景は、ターナーやレイノルズといった画家によって不朽の名声を与えています。
リッチモンドパーク