「horse(馬)」と「sports(スポーツ)」という2つの英語の組み合わせを見て、真っ先に競馬を連想する人は多いでしょうが、ポロを思い浮かべる人はそんなにいないはずです。でも、エキサイティングで興味深く、人と動物、チームのメンバー同士がユニークな駆け引きを展開する競技という点では、多くのスポーツの中でも上位にランクインすると思います。ポロに対するありがちなイメージとして、世界のエリートたちが集まって楽しむような、いわゆるお高くとまった人々の競技、金持ち専用のスポーツというものがあります。競技人口が少ないスポーツであることは間違いありませんが、選手だけでなくそのファンと馬のブリーダーによって構成されるポロのコミュニティが、ポロに対する惜しみない愛に満ち溢れ、懐の広さと深さを誇る集まりだというのもまた事実です。これは私見ですが、今やポロは、この現代社会にありながら、未だに経済的な利益の追求を主眼とせず、試合中の純粋な精神を重んじる数少ないスポーツと言ってもいいと思います。実際にゲームを見に行けば、きっと誰でも、すぐにポロの魅力の虜になるでしょう。チケットは手に入りやすい価格だし、フィールド近くの席に陣取れば、選手と馬の汗の匂いが入り混じった草の香気の中で観戦することができます。ポロの試合は、馬上の選手たちがサーカスのアクロバットのようなポーズを披露して始まりを告げます。4名の選手はそれぞれ竹のスティックを手に馬を操り、サッカーの3倍の面積のフィールド中を駆け巡りながら、2本のポールで出来たゴールをめがけて木製のボールを打ち合います。試合終了時により多くのポイントを稼いだチームが優勝で、各試合は「チャッカー」と言う単位に区切られています。ポロのルールでは選手と馬の安全が非常に重視されていて、たとえば選手はチャッカーごとに馬を交替して休ませなければなりません。ポロの規則では、選手が同じ馬を使っていいのは2回目のチャッカーまでで、なおかつ連続するチャッカーに出場させてはいけないことになっています。ハードな練習や精進を怠らないこと、乗るべき馬を見極める能力を持ち、それぞれの馬と共に十分な訓練を積むことなど、ニューカマー(新顔)とも呼ばれる初出場の選手と馬には、クリアすべき準備が多くあります。試合運びや対戦相手に応じて馬を変えながら戦うポロは、まさしくチームスポーツの極致であるという点で、ドライバーのコンディションに応じて車の形状まで変わるフォーミュラ・ワン(F1)と似ています。1回の試合で1人の選手が4頭ないし5頭の馬を使うことも珍しくありません。フィールドの中でも外側でもフェアプレイに徹することが重要視されるのは、ラグビーにも共通する特徴です。
試合が終わったらクラブハウスに移動して、勝者と敗者の両方に対し、その家族や友人も含めて今日の健闘を称えました。シャンパンの瓶の入ったバケツをお供に、様々な人たちが交じり合う様子は草の上のピクニックといった趣で、フォーマルなスポーツクラブには大抵ドレスコードがあるものですが、その日は誰もが普段着姿で楽しい時間を過ごしていました。ポロは馬と馬術に関する深い知識が求められる競技なので、自分もやってみようと思うなら、まずは乗馬のレッスンを受けないことには始まりません。もともと英国の騎兵隊が行なっていた運動に改良を加えたものがポロだと言われていますが、この競技の起源はさらに古く、実際には紀元前500年頃のペルシアで既に行なわれていたと伝えられています。その後の数世紀は歴史から姿を消していたポロですが、後にイギリスで、騎兵隊のスポーツをヒントにしつつ、現代的な種目に進化する形で復活したというわけです。生まれ変わったポロは、まずはイギリス国内で、やがては大英帝国統治下の各地に広まり、植民地の貴族階級や王家の人々にとっては思い出深いスポーツとなったのです。