• 2018.01.18
  • ロンドンの大きい猫と小さい猫
ロンドンと聞いて真っ先に思い浮かぶのは恐らく猫ではないでしょう。 実際、イギリスの首都について考えてみたとき、ロンドンと動物(特に野生動物)を結びつけることなんてめったにないと思いますが、この街はこの数年、大型のネコ科動物のプロジェクトを開始したことと、小さな(でもとても特別な)野良猫の物語のおかげで有名になりました。

近年、この街では絶滅の危機に瀕している野生の大型のネコ科動物を救うための特別プロジェクトを開始し、野生動物を保護してきました。
このプロジェクトはキャット・サバイバル・トラストと呼ばれていて、ロンドン郊外の敷地面積12エーカー(約48,562m2)の公園をチャリティーで運営しています。この施設を運営しているのはボランティアのみで、資金集めのイベントの主催から事務所の管理までいくつもの業務をこなしているほか、より多くのプロジェクト資金を得るためにおみやげ屋さんで商品の販売もしています。また、特別訓練を受けた一部のボランティアは大型のネコ科動物の世話をしたり、それらを収容できる建物を設計したりしています。


このプロジェクトはボランティアスタッフの参加を常に歓迎していますが、もちろん訪問客も施設の成功に欠かせない役割を果たしています。またプロジェクトでは自然環境保護と絶滅危惧種に対する意識向上も促進しています。
このようなタイプのプロジェクトはイギリス初で、普通の動物園とはかけ離れた施設となっています。


さて、今度は小型の猫についての話ですが、野良猫のボブは間違いなく特筆に値します。

この猫は、2012年に発売され大ヒットした『ボブという名のストリート・キャット』という本に登場し、ロンドンでとても有名になりました。
この素晴らしいトラ猫の話をするためには、飼い主のジェームズ・ボーエンのことから説明する必要があります。彼はアルコール依存症と薬物依存症の過去を持つストリートミュージシャンで、本が出版されるまではロンドンのコヴェント・ガーデンのショッピングエリアでギターを弾き、それを聴いてくれる心優しい人たちに支えられて生活していました。
ジェームズは2007年に傷ついて怯えている野良猫とめぐり会い、手当てをして、ボブと名付けることを決めます。しかし、彼は生活が苦しいため 、ボブが元気になると外へ放しに行くしかありませんでした。ところが、ボブは離れるのを嫌がり、ジェームズの後をいつでもどこでもついて来るようになります。
こんな具合で、友情と分かち合いの美しい物語が始まります。
ジェームズは薬物依存症を治療・克服するために日々苦戦を強いられるので、これは孤独と立ち直りの物語でもあります。
切っても切れない友情で結ばれたコンビが、かつて芸を披露していたロンドン一帯では、ボブとその飼い主を知らない人はいません。
イギリスでたちまちベストセラーになったこの本の売上のおかげで、ジェームズとボブは新たな生活を手に入れました。この本はその後も他の多くの国でベストセラーとなり、映画化もされました。
本の発売日には著者のサインと、とりわけボブの手形によるサインをもらうためにファンが書店に列を作りました!
従順なトラ猫は、その姿を一目見ようと殺到するファン全員にかわいがられました。ジェームズがかつて話していたように、両者はお互いの命を救い合ったのです。
これは素晴らしい物語だと思います。シンプルですがとても感動的で、読んでみる価値はありますし、読めばきっと多くの人が野良の動物に対してだけでなく、苦境に立ち向かっている人に対しても、いっそう理解を示すようになることでしょう。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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