ここは世界で最も有名な蝋人形館のひとつで、蝋人形館の代名詞にされることもあるほどです。
蝋人形館といえば、ロンドン、ローマ、ベルリン、アムステルダム、香港、ニューヨーク、ロサンゼルスなど世界中にたくさんありますが、おそらく、すべての中で一番人気があるのはロンドンです。なんといっても、世界で初めて一般公開された蝋人形館ですからね。
ロンドン市内で屈指の年間集客力を誇る観光スポットでもあり、観光客も地元の家族連れも1度は訪れたいと思っています。
ロンドン市民の中には、好きな歌手や俳優の誕生日に「敬意を表す」ために訪れたり、プライベートパーティー向けに貸し切ることもできるので、子供の誕生日を祝うために利用する人もいます。
1802年にフランス人女性のマリー・タッソーは、蝋人形のコレクションを展示するためにフランスからロンドンにやって来ました。職務の一環として、蝋で解剖模型を制作する腕のいいスイス人の内科医から技術を学んでいたのです。
マリーの母親はこの医師の家政婦として働いていたため、マリーも医師の家に住んでいたようです。
子供の頃から、蝋で成形する方法を学び、初期の作品はスイス人医師の力を借りて完成させました。
パリでこの医師が初めての蝋人形展を開催すると、すぐに大盛況となりました。
ロンドンのマダム・タッソー蝋人形館では、創立者本人の小さなマダム・タッソー像が、彼女の最初の作品であるルイ15世の公妾で、フランス革命で首をはねられたデュ・バリー夫人のすぐ隣に設置されています。
マリー・タッソーの最初の作品とされているこの蝋人形は、彼女がまだフランスに住んでいた18世紀の終わりに手掛けたもので、その後、ヴォルテールやベンジャミン・フランクリンの人形が制作されました。
マリーはパリで貴族の輪に加わり、なんとルイ16世の妹の美術の家庭教師としてベルサイユ宮殿に迎え入れられました。
フランス革命では、貴族と親しくしていたため処刑を宣告されますが、蝋人形師としての腕前を買われ、間一髪で処刑を免れました。革命家たちは首をはねられた貴族のデスマスクを制作する蝋人形家を必要としていたのです。こうした貴族の多くはマリーの友人でした。
マリーは19世紀の始めに一番下の息子を連れてロンドンへ渡り、ロンドンやその他のイギリス各地で展示ツアーを行った後、ベーカー街で初の常設展を開催し、世界最大の蝋人形館を設立しました。
ロンドンの蝋人形館では、過去から現在までの有名人を眺めることがきます。ヘンリー8世と彼の6人の妻、フランス革命の立役者のロベスピエール(処刑直後にマダム・タッソーがデスマスクを制作)、ヒトラー、そしてチャーチル、ガンジー、サッチャー女史、ジョージ・W・ブッシュをはじめとする20世紀の政治家たちにも会えます。
ビートルズの蝋人形
映画やテレビのスター、有名なフットボールのチャンピオン、その他にもさまざまなジャンルの重要人物が勢ぞろいしています。
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー
館内には宇宙の旅を3Dで体験できるプラネタリウムや、俳優がイギリスで最も悪名高い歴代の連続殺人鬼を演じる恐怖の部屋など、見ごたえのあるアトラクションが他にも用意されています。
さらに、浴槽ごと再現した美しいマラーの死、マリー・アントワネットの首をはねたギロチンなども展示されていて、ホラー好きにはたまらない場所です。
一番多くの蝋人形が作られているのは女王エリザベス2世で、複数の人形が展示されています。
エリザベス女王夫妻
プロのカメラマンに写真を撮ってもらうこともできますし、小さな映画館では『マーベルヒーローズ』の4D短編映画が英語で上映されています。また、スター・ウォーズの全作品から切り取ったシーンとキャラクターを蝋人形で再現したコーナーもあります。