ロンドンでタクシーと言えば、すぐ思い浮かぶのは黒いタクシー、通称ブラックキャブ。数多くあるこの街のシンボルのひとつにもなっていますが、おそらくこの街で最も高価な交通手段です。
ブラックキャブの運行は車体に機械的な欠陥がないことと、ドライバーが身体的・精神的に健全であることの両面において厳しく管理されています。
ゆったりとした空間を持ち、ほとんどが黒塗りの車で(でも最近は緑やダークレッドなど他の色の車があったり、ブラックキャブでも広告に完全に覆われていたりするものもあります)、乗客とドライバーの間には仕切りガラスがあります。車体はすごく長持ちするので、20年間使用される場合もあります。
ロンドンのタクシードライバーはよくキャビーと呼ばれます。
緑のバッジが提示されていないタクシーには乗らないようにしてくださいね。それから道の途中で車を止めて、タクシーを使わないかと声をかけてくるような人には注意してください。まともなドライバーはこんなことはしませんし、こういう人は恐らくライセンスを持っていません。
車体のルーフにある「TAXI」のランプが点灯していれば空車、消えていれば間違いなく既に利用者がいます!
タクシーをつかまえるときはバスを止める要領で手を横に挙げます。
定員は最大5名です。
イギリスのタクシーの起源は1600年代、貴族の有料の移動手段となっていた馬車のお古を使用した公共馬車が初めて導入されたときにまでさかのぼります。
タクシーがライセンス制になったのは1662年のことです。
これが1820年頃に登場したフランスの馬車の先駆けとなりました。
キャブという言葉はフランス語のヤギに由来していますが、これは馬車がとても軽く、通りを跳ね回るように走っていたからです。
馬を使わず電気を使った最初のタクシー、バーシーが導入されたのは1897年で、その後、内燃機関を搭載した最初のタクシーが1903年に現れました。
1947年には最後の馬車タクシーが姿を消し、タクシー業の規制がロンドン警察、いわゆるロンドン警視庁の規制に基づいて制定されました。
1891年、ヴィルヘルム・ブルーン卿が距離と時間を測定して乗車距離を計算し、料金に換算するタクシーメーターを発明し、タクシーという言葉が使用されるようになりました。
タクシーメーターという言葉は実はフランス語のtaxe(料金)とギリシャ語のmetron(測定)に由来しています。
ところで、このタクシーメーターですが、当時のロンドンのすべてのドライバーに受け入れられたわけではなく、実際にはテムズ川の底に投げ捨てられたものもあったと言われています。ブルーン卿のこの発明品は今なお、世界中で利用されていますけどね。
ロンドンには現在、ミニキャブという個人タクシーもありますが、乗車するには予約が必要で、通常はドライバーが所属する取次店、正確にはミニキャブオフィスに配車を依頼することになります。
ミニキャブは、イギリス国内や世界中で熾烈なタクシー競争を繰り広げているウーバーのサービスが登場したことで直接的な影響を受けているようです。
ミニキャブのドライバーもパブリック・キャリッジ・オフィスが交付するライセンスの取得が義務づけられていますが、ブラックキャブとは違って普通の車を使用しています。ミニキャブにはタクシーメーターが搭載されていないので、前もって料金を聞いておくことをおすすめします。個人タクシー(ミニキャブ)が合法でライセンスを所有していれば、フロントガラスと車の後部に丸い黄色のステッカーが貼られています。
タクシーでロンドンを回れば、当然地下鉄やバスよりもずっと高くつきますが、この街にやってくる観光客にとっては特に、ブラックキャブに乗ることは大きな憧れなのです。
ブラックキャビー