観光産業は今、史上最悪の世界的危機に苦しんでいますが、こんな状況下でも希望や明るさを感じさせてくれるニュースはあります。
実際、また自由に外出できるようになる日を待っている間に、オンラインのプラットフォームのおかげで、ソファにいながらクリックひとつで目的地を旅してまわれるような新たな試みもたくさん現れています。
言うまでもありませんが、旅行代理店や事業者もソーシャルキャンペーンを行っていて、業務再開を待つ間も顧客に企画やアドバイス、休暇プランなどの提案を求めることで、彼らの旅のイメージを必死にかき立てようとしています。
ウイルスによって制約されている限界を超えた提案を発信することに目を向けた、さまざまな試みが展開されています。
例えば、ソファの上から移動することなくロンドンの中心地を旅することだってできます。
美術館は敷地全体が閉鎖されたため、今はデジタルプラットフォームを駆使して、視聴者が家から出ることなくアクセスできるようにしています。
イギリスでは多くの美術館が「デジタルへの扉を開放し」、訪問者を惹きつけ、人々の関心をつなぎ止めるよう努めています。
芸術や文化は食べ物のような生活必需品ではありませんが、心にも何らかの方法で栄養を与えることも間違いなく必要です。
ロンドンの大半の博物館もオンラインで見られるようになっています。大英博物館はロゼッタストーンやイースター島の石像、エジプトのミイラ、パルテノン神殿(他にもいろいろありますが)などをデジタルで展示しています。
大英博物館のコレクション
ロンドンのサウスバンクセンターの中にあるヘイワード・ギャラリーは現在、建物は閉鎖されていますが、以前から予定されていた展覧会の「ウォークスルー・ツアー」をバーチャルで実施しています。
より伝統的なチャネルに目を向けると、かの有名な英国のテレビ局、英国放送協会(BBC)では、パンデミックの間も自宅で芸術を楽しめるよう、主要な芸術・文化をあらゆるプラットフォームで配信するサービスを計画していると発表しました。
BBCは「隔離中のカルチャー(Culture in Quarantine)」というバーチャルの芸術フェスティバルも主催しました。
テート・モダン美術館はポップアートの父、アンディ・ウォーホルの大回顧展を企画していましたが、ほんの1カ月足らず前に始まった展示は数日後には非公開となってしまいました。一般公開が始まったのは3月12日でしたが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でその後すぐに閉鎖され、多くの来場者を呼び込むことはできませんでした。
当初の予定では9月6日に幕を閉じるはずだったアンディ・ウォーホル展は、ポップアートの父の生涯にわたる作品を100点以上そろえ、彼の探究が芸術だけでなく、その時代の人々の精神や社会に与えた影響を振り返る展示になっていました。
この展示は特別ガイドツアーをオンラインで実施していて、美術館の2人のキュレーターが、ウォーホルの人生と芸術における重要なテーマ、すなわち当時の移民の置かれていた状況、ウォーホルのアイデンティティや死と宗教に対する考え方を中心に紹介しています。
ある意味、この素晴らしい展示を実際に見に行くチャンスは失われてしまったわけですが、その代わりにキュレーターの詳しい説明のおかげで芸術家自身やその作品についていっそう深い知識が得られます。きっとガイド(たいていすごく高額だったり観光客のみを対象にしたりしています)なしで訪れたらそれほど詳しく知ることができなかったかもしれないウォーホルなどの芸術家について、一人ひとりがより深く理解することができます。
有名なトラファルガー広場にあるナショナルギャラリーでも現在、バーチャルツアーを開催していて、パソコンやスマートフォン、タブレットから参加することができます。
ナショナルギャラリーのバーチャルツアーは数年間にわたって実施されてきましたが、これほど人気が出たことはもちろんありません。
このツアーではセインズベリー・ウィングも、バーチャルリアリティビューアを使って(運よく手元にある人は)館内を見て回れる施設のひとつとなっています。最先端のテクノロジーによって数世紀前の作品を全く新しい現代的な方法で再発見することができますよ。
新型コロナウイルス感染症がまん延する前のナショナルギャラリー