大変な時期が続いています。
オックスフォード大学ジェンナー研究所の研究室で開発中のワクチンは、新型コロナウイルス根絶に向けた、最も現実的な希望の一つとなっています。これは、金銭と科学的な研究とが奇妙に組み合わさった共同開発であり、900年の歴史を誇り、公的支援を受けて抗新型コロナウイルス研究を進めてきたオックスフォード大学の科学分野における意図と、製薬業界の意図とが共通する関心の対象を通して結びついたことによって成り立っています。
言いかえると、今回の開発事業では、大学が掲げる高尚な理想や気高い思考と、製薬業界の利益重視の倫理観とが不思議にも一体となっているということです。
実際に自分が接種するかどうかはともかく、だれもが今、ワクチンの完成を待ち望んでいます。
さて現在、少なくともイギリス国内、特にロンドンでは、人々は出来るだけ自宅で過ごし、人込みを避けて生活しています。
悲しいかな、市内のイベントや人気のレストラン、新しいパブなどを定期的に掲載しているサイトであるロンドニスト(Londonist)も配信休止を決定し、それとともに友人との外出やコンサート、ショーや娯楽なども自粛の方向に。
実はエンターテインメント産業は、諸産業の中でもこの危機によって最も大きな痛手を受けており、次いで観光業がその痛手に苦しんでいます。
新型コロナウイルスの大流行による大きな打撃にあえぐロンドン。大きな公共施設や独立した会場は軒並み閉鎖され、安全確保のために各種イベントは延期または中止されています。
エンターテインメントと旅行が大好きな私ですが、この先行きの見えない時期に自分のいる街とここでの生活を全般的にどう楽しもうかと、現在、新しい方法を模索中です。
といっても、「家に閉じこもって自己隔離」イコール「外出の楽しみもあきらめよう」とはなりませんよね。
自由な外出は認められていないものの、ロンドンの素敵な才能豊かなパフォーマーやアーティストたちが、自宅にいる私たちにお楽しみを届けてくれています。
イベントやワークショップのストリーミングによるライブ配信、フェスティバルのオンライン配信などが盛りだくさんに提供されていて、配信予定もどんどん告知されています。
こうしたイベントのライブ配信は、困難な時期に直面しているエンターテインメント産業やサービス業で働く人々への支援や寄付を募る絶好の方法でもあります。
例えば、英国ロイヤル・オペラ・ハウスではバレエ公演をオンラインでライブ配信して鑑賞することができますし、地元のジムではエアロビクスなどのレッスンを公開しているところも多く、自宅でワークアウトができるんです。美術館ではネット上で館内を立体的に移動できるようにして、企画していた展覧会を予定通り開催しようと取り組んでいます。
こうしたイベントは通常、有料ですが、寄付も同時に受け付けている場合があります。劇場や劇団では現在、デジタルアーカイブを開放しています。今なら自宅のリビングにいながらにして、一年間にロンドン市街を出歩いて実際に見に行くよりもたくさんの劇やダンス、オペラを観ることができるでしょう。
有料の動画配信プラットフォームからYouTubeを使ったストリーミング配信まで、今や観られるものは驚くほどたくさんあります。
ハロウィンが近づいてきました。確かに今年はこういう状況ですから、何もかもが例年に比べて残念なことになるでしょう(おまけに夜の10時からは夜間外出禁止令!)、大勢の人が楽しむあのコスプレパーティーも今年は断念せざるをえません。でも、この国の首都はあきらめていません。コロナウイルス対策のルールを守って、たとえわずかでもちょっぴり怖くて、とても楽しいハロウィンの雰囲気をきっと愉しむことでしょう。
友人の多くは、今年の10月31日のハロウィンはパーティーには行かずに家でハロウィンのホラー映画を見ると言っていますが、それ以外にも2020年のこのイギリス伝統のイベントを(日中でも)祝う方法があるんです。
いろんなルールや規則を守りながら昼間から営業している場所でハロウィンの特別な雰囲気を楽しむなら、例えばロンドン塔やハンプトン・コート宮殿、ハリー・ポッター・スタジオがおすすめです。ロンドン塔には陰謀や幽霊の怖いお話以外に千にものぼる秘宝があるそうです。ハンプトン・コート宮殿はヘンリー八世の居城として最も有名でハロウィンにはぴったりのスポットです。宮殿内の数ある広間では、数世紀前の宮廷や近衛兵たちの様子が思い起こされ、そしてさまざまな奇妙な出来事や逸話がよみがえることでしょう。ハリー・ポッター・スタジオには「禁じられた森」があり、ありとあらゆる魔物たちが身を潜めて待っていますよ。
- 2020.11.12
- ロンドンの新世代エンターテインメント