• 2021.09.29
  • 「スキットルズ」で遊ぶ
スキットルズというと、イギリス出身でない人なら色とりどりのキャンディがすぐ頭に浮かぶでしょう。でも、ここイギリスでは別の意味になるんです。
スキットルズとは、特にイギリスの居酒屋でとても人気のあるゲームです(私はそう思っていますが、イングランドだけなのか他の所でもプレイされているのかはわかりません)。
遊び方はボウリングと似ていて、プレイヤーは「cheese(チーズ)」または「cheeses(チージズ)」と呼ばれる木製の球を交互に投げます(どちらの呼び方も聞いたことがあります)。
「チーズ」を投げてノーバウンドでピンに当てなければならないというのが、このゲームの難しいところ。
地元のパブでは営業用にこのゲームが置かれていて、私もプレイすることがあります。チャールズ・ディケンズの最初の長編作品『ピックウィック・クラブの遺稿集』(『(通称『ピックウィック・ペーパーズ』)に「beer and pins(楽しいことばかり)」というフレーズがありましたが、仕事帰りに一杯飲んでそんな楽しい夜を過ごすのが私は好きです。
9本のピンを並べることから「ナインピンズ」とも呼ばれるこのゲームは、実は世界中で現在楽しまれているテンピン・ボウリング(ピン10本を使用)の前身であり、イギリスの宿屋で古くから親しまれてきました。
一般的には、木製ピンが数本立つレーンの奥めがけて、プレイヤーが交互にチーズ、すなわち木製の球を投げ込み、ピンを全部倒そうというゲーム。
ただ、イギリス各地に色々なバージョンがあり、過去にはもっと沢山の遊び方がありました。
さらには、年月を経るうちに、この種のボウリングゲームは地域によって変化していき、ピンの形や大きさ、投げ手からピンまでの距離、センターピンの使用の有無、ボール(チーズ)の形や大きさが変わり、プレイのルールもイギリス中でかなり大きく変わり始めています。
ロンドンでは重めの「チーズ」を投げてピンにノーバウンドで当てにいきますが、イギリス西部ではボールをレーンの端から端まで転がしてピンを倒します。また、イギリス中部ではレーンが長く、球またはチーズはワンバウンドしてからピンに当てるというルールになっているケースも多いです。
こうして様々なバージョンが発達するかたわら、昔ながらの多くのイギリスのゲームと同じく、このゲームも小型化されていきました。


スキットルズのピン

こうした小型化はよくあることで、パブのオーナーが、ボウリング用レーンを取り払って広いスペースを使わなくても以前と変わらず客にゲームを楽しんでもらうことを目的としています。
さて、卓上タイプには今も大人気のものがあり、特に人気があるのは「Tabletop Skittles」。
従来サイズのゲームだと、丸ピン9本は100%木製で高さ35cm、投げる球は重さ4kg超(ノーバウンドでピンに直接届かせなければならないことを考えると、結構な重さです)となっています。
球をピンまで届かせるにはかなりのコントロールと力が必要です。あと気になるのはプレイ中に大きな音を立ててしまうかもしれないことですね。といっても、周りはビールを飲んで大声で会話するのに夢中で誰もゲームの音なんて気にしないでしょうけれど。
何かで読んだのですが、ドイツにも何世紀も前に似たようなゲームがあったそうです。物を投げてターゲットに当てようとするのは、現在ある、最も距離を要するゲームの一つではないかなと思います。私の記憶が正しければ、確かマヤ人も似たような球戯をしていたはず。
ともかく、イギリス人はスキットルズが大好き。地元のパブなら、ダーツやビリヤード、卓球などと一緒にこのゲームにも挑戦できますよ。
総じてイギリス人はお酒を飲むと色々な遊びをして大いに楽しむようですから、こういったゲームをパブに置いてみんなが交流して楽しく明るく過ごせるようにするというのは素敵なアイデアですよね。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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