• 2021.10.28
  • ワクチンパスポート導入にNO
イングランドでは当初、10月1日にワクチンパスポート(接種証明書)が導入されることになっていて、近ごろ営業を再開したナイトクラブや大きなイベント会場などが大きな打撃を受けるはずでした。
実際、導入の予定が発表されたときには、自由民主党と同じくナイトライフ業界もすぐさま異議を唱えました。「グリーンパス」とも呼ばれるワクチンパスポートを、自由民主党は「国民の間で分裂が生まれ、非実用的であり、費用の負担が大きい」と反発していました。
ですから、ジョンソン首相が「No(導入しない)」を発表したときには大勢の人々がこれを支持しましたが、少なからず批判の声が上がったのも事実です。
自由民主党は、この決定に至るまでの躊躇の期間があまりに長すぎたとジョンソン政権を非難し、自らを今回の決定の功労者であると言っています。
とはいえ、ワクチンパスポートを導入しない本当の理由はナイトクラブやディスコ、大きなイベント(スポーツイベントやコンサート、各種ショーなど)に及ぶ被害を回避するためだろうということには変わりありません。ワクチン接種のおかげで人々の健康状態が完全に落ち着いた状態にあるから、というのが理由ではなさそうです。
現在、イングランドでは一日に確認される新型コロナウイルスの新規感染者が3万人を超えて(イングランド政府の公式サイトに掲載されている9月末時点の更新データ参照)いますから、新型コロナウイルスが本当に落ち着いているわけではありません。また、連合王国のそれ以外の3地方、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはイングランドとは異なる施策をとっています。
スコットランドは10月1日からワクチンパスポートを導入する予定で、ウェールズも同様の予定ですが、証明書の名称はCOVIDパスとするようです。
導入予定のない北アイルランドとしては方針変更を望んでいないようですから、この方針を維持するのでしょう。
いずれにしても、ジョンソン政権は冬季に向けた新型コロナウイルス対策の計画の準備があることをすでに発表しており、計画の主な目的として、新たなロックダウン実施の回避と国内の医療サービスひっ迫の緩和、ワクチン接種キャンペーンのさらなる推進を挙げています。
首相は、他国ではワクチン接種を奨励するためにワクチンパスポートまたは「グリーンパス」(EU圏内ではそう呼ばれています)が導入されていることを明らかにしました。
対照的に、グレートブリテン内では16歳以上の全人口の80%以上がすでにワクチンの2回接種を完了して十分な免疫を獲得しており、90%以上が1回目の接種を終えているため、ワクチンパスポートは不評であり不必要であると語っています。
さらに、今後やらねばならないことは接種対象年齢の最終グループである16歳から17歳の若者を対象に接種キャンペーンを加速させることだと述べました。現在この年代の接種率は60%に到達しています。
入院患者数はかなり減少してきており、これを主な理由として、政府はディスコや大規模なイベント会場にワクチンパスポートを導入しないことを決定しました。ワクチンパスポートの導入は個人の自由の侵害と捉える人が大勢います。
また一方で、マスクを外し、ソーシャルディスタンスをとらずに、若者たちが集まって踊ったりお酒を飲んだり話に興じたりするのを見るのは、やはりいいものだな、ということも認めざるを得ません。これはきっと、連合王国全体、あるいは少なくともイングランドの「正常な状態に戻るための新たな一歩」になるはずです。
海外からの渡航者にロンドンで「パンデミックって覚えてる?」と尋ねられる、なんてこともあるかもしれません。
イタリアの実家の家族には、今ではだれも往来でマスクをつけていないことがまだ信じられないようです。イタリアでは屋外でのマスク着用は義務づけられてはいなかったのですが、実際には着用している人がある時期までたくさんいましたから。
政府があらゆる状況下でのマスク着用の義務づけ解除を宣言した7月は、みんなまだかなり用心して対応していましたが、今やお店やスーパーではだれもがノーマスク。ただしロンドン市内の地下鉄などでは保健当局がマスク着用を推奨しています。
イングランドの各大学も、始まったばかりの今年度はパンデミック前の教育形態に戻す、すなわち対面式授業を行いマスクの着用やソーシャルディスタンスの確保を不要にして大学の活動を全面的に再開するとコメントしています。
新聞でも新型コロナウイルス感染症に関連するニュースをほぼ見かけなくなりました。あえて探さないと関連記事に出会えないこともあるほどです。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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