イタリアではサッカーは(英語では「football」あるいは「soccer」とも呼ばれる)、主に男子のスポーツとされてきました。けれども、世界的に見ると、女子の競技人口がかなり増加しています。
これは、スポーツにおいてここ20年で最も注目を集める動きであることは間違いなく、私にとっても興味深い現象です。
その原動力は、女子サッカーがまず北米で、特に学生レベルで急速に普及したことにありました。さらに人気は高まり、まずはイングランドへ、さらに他の国々へと広がりを見せています。
さて、「サッカー・マム」(soccer mom)をご存じでしょうか?
サッカーの練習に娘を送り迎えするために走り回る母親のことで、米国では文化現象になっているばかりでなく、政治においても選挙などでしばしば支持獲得のターゲットとされています。
試合中のサッカー・マムを見ているのはとても楽しいものです。
イタリアではこうした現象はまず見られません。
ただ、英国の場合、サッカー・マムは単に声援を送ったり、ゴールを決めるよう励ましたりするにとどまらず、「娘のサッカー」という関心事を共有し試合の前後に食事やお茶の機会を持つ、本格的な集まりです。
また、サッカー・マムであるということは、特定の社会階級に属していることも意味します。
10代の娘を持つ40代の女性が多く(さらに少し年下の娘を同伴している場合もあります)、学校対抗の大会を観戦し、夜は他のサッカー・マムと親睦を深めます。
中には、自分たちの活動はれっきとした仕事だと主張する母親もいて、夜はサッカー談義、昼はサイドラインの外側で控え目に応援にいそしみます。
でも、「サッカー・マム」の対象は、もはやサッカーだけにはとどまりません。
働きバチのように飛び回る母親は皆「サッカー・マム」と呼ばれていて、子どもたちを車に乗せ、複数の課外活動につれて行くために一日中走り回る多忙な母親のことを指しています。サッカーが含まれているかどうかは関係ありません。
例えば、サッカー・マムの誰かに「お子さんはどんな課外活動をしていますか?」と尋ねれば、スポーツなら水泳からフェンシング、スキー、サッカーに至るまで、さらに趣味なら音楽、演劇、ダンス…と、まるで買い物リストを読み上げるように、すらすらと名前を挙げてくれるはずです。
ただ残念ながら、こうしたさまざまな活動は、子どもたち自身ではなく親の意思によって推し進められているのが現状です。
数々の課外活動に超熱心に取り組むことで、実力社会で競争を生き抜けるようになってもらいたい、高い競争力を身につけてほしいと願っているのです。
私自身、実力社会には賛成ですし、子どもにとっても時間を無為に過ごすよりスポーツをしたり課外活動に熱心に取り組んだりするほうが良いとは思います。けれども、活動の数があまりに多いと子どもたちは圧倒されて、何一つ集中できないままに数ばかりをこなしてしまうのではないかとの危惧も残ります。
この件について、私は適切な意見を述べることはできませんが、先日読んだ記事によれば、英国では子どもの大半が宿題に加えて週5日は課外活動に忙しく、家族と過ごす時間が大幅に減り親子関係が悪化することになるだろう、とのことでした。
私は、子どもはもっと自由な時間を持ち、遊んだり仲間と友人関係を築いたりするべきだと思います。
課外活動が多すぎて、親から求められる活動量の膨大さに押しつぶされ、時間を持て余すことやだらだら過ごすことの楽しさやありがたみが理解できなくなるかもしれません。
忙しすぎて、一番大切な時間を失う子どもたち。自分自身、そして他者を知る貴重な時間が失われています。
課外活動が減れば、創造力は伸びるかも?