• 2023.12.22
  • ロンドンで最高の贅沢~ハイティーを楽しむ
「英国の食べ物はおいしくない」なんて、誰が言ったのでしょう?
ロンドンに越してきて数年になりますが、この国の食べ物はいつもとてもおいしくて、自分でも英国料理のレシピをいろいろ試しています。
夢中になったレシピもあり、また、数々の名物料理に出会って、今や英国料理にすっかりはまっています。
さらに今年の夏、ハイティー仕様の誕生日パーティーに参加したときにも、うれしい発見がありました。ハイティーでは英国の伝統的な軽食だけでなく、スコットランドや英国のさまざまな地方の料理も振る舞われることを知ったのです。
英国文化で最も愛される飲み物といえば、もちろん、紅茶です。友人や同僚とのさまざまなひとときに登場するのも紅茶で、お菓子やセイボリーの(塩気のある)サンドイッチと一緒に愛飲されています。
その紅茶と共に、さまざまなおいしい料理や軽食、デザートが楽しまれています。

けれども、英国のあらゆる階級がこうした間食のひとときを楽しめたわけではなかったため、時代と共に2通りの楽しみ方が普及してきました。
庶民の間では「ハイティー」、一部の富裕層の間では「ローティー」の習慣がそれぞれ広まったのです。ロ―ティーは柔らかい肘掛椅子にゆったり腰掛けてペストリーと共にお茶を楽しみます。ハイティーでは夕食の代わりになる食事が供され、遅めの午後か夜に近い時間に取るのが一般的でした。
食事は手軽なバターロールやお菓子といった品々ではなく、もっとボリュームのある料理がお茶と共に出され、一日の仕事を終えたばかりの人たちがこれを楽しみました。
料理にはフィッシュパイも登場しました。トッピングにマッシュポテトや豆を乗せ、塩味のペストリー生地で包んでオーブンで焼いたパイで、締めくくりには手作りのケーキやジャムタルトが食されました。
ハイティーとロ―ティーの大きな違いは、使用する紅茶にあります。ハイティーでは大袋で買ったティーバッグを使っていました。リーフティー(ルースティーとも)の価格が高かったためで、一方、富裕層はリーフティーを愛用していました。
ロ―ティーではリーフティーを使うことが何より重要とされ、香りの強い茶葉を使い、豪華なティーポットに用意した熱湯に浸して紅茶を淹れました。

今回ハイティーを再発見して、新たに私のお気に入りに加わったご馳走をご紹介します。
・クラナカン(Cranachan)
古くからある伝統的なスコットランドのお菓子で、おいしそうな飾りつけが特徴です。結婚式やクリスマス、誕生日など特別な機会に供されます。
作り方は簡単で、生クリーム、オートミール(私はショートブレッドを砕いたものを使ってみました)、ウイスキー、ラズベリーを混ぜ合わせるだけ。とにかくおいしい一品です。
・タティー・スコーン(Tatties)
スコーンに似ていますが、こちらはセイボリータイプのポテトを使ったスコーンです(「tatty」はスコットランド語でジャガイモを意味します)。小麦粉とジャガイモで作った薄くて小さい、塩味の「袋」のような感じで、通常は揚げて出されます。
・ベイクウェル・タルト(Bakewell Tart)
アーモンド・クリームとカスタードを使った、フランジパーヌと呼ばれるペーストと赤いフルーツジャムで作ります。ベイクウェル・プディング(Bakewell Pudding)と似ていて、どちらもフィリングにジャムとカスタードを使っていますが、実物は見た目もフィリングの硬さも違います。
伝統的なベイクウェル・タルトは2種類あると聞きました。一つはチェリー・ベイクウェル・タルトです。普通は一人用の小さなタルトで、フィリングにフランジパーヌのペーストを使い、表面にアイシングをあしらってチェリーの砂糖漬けを乗せたもの(私も食べてみました)。もう一つはグロスター・タルト(Gloucester tart)で、フィリングにはフランジパーヌ以外に米も入っています。




以上ご紹介しましたが、こんなすてきな英国料理の数々がなかなか手に入らず、しかも特別な機会にしか食べられないなんて、残念なことです。どんな食事にもよく合う逸品であると私は思っています。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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