19世紀、そして現代に至るまでの数世紀にわたり、この街で人々がどのようにして移動をしてきたかを学び、タイムスリップしたような体験が楽しめます。
展示車両には、ロンドンの象徴の一つとして世界中に知られている有名な二階建てバスだけでなく、世界で初めて地下を走った蒸気機関車や、世界初の地下鉄とオリジナルの路線図、1800年代初めに使われた馬車などもあります。
そんなロンドンの交通機関に、今また新たな変化が訪れようとしています。
EU離脱によって英国では多くのことや習慣が変わってきましたが、今年からは伝統にもさらに衝撃的な変化があるかも知れません。
ロンドンを象徴するバスといえば、1950年代からさまざまな型式でロンドンを走ってきた赤い二階建てバス。そんなバスに近い将来、丸みのあるより伝統的な外観を備えた電気自動車というライバルが登場することは、ほぼ間違いなさそうです。
ロンドンの公共交通事業を所管するロンドン交通局(Transport for London)は、「ieTram」と呼ばれるトラム型のバス20台を導入する計画を発表しました。まずはプレミアリーグに加盟するプロサッカークラブの本拠地であるロンドン南部のクリスタル・パレスと南西部郊外を結ぶ路線で限定的に運行され、後にシティ全域に拡大される予定です。
この新型バスは、運行と運行の間にわずか10分で充電できるのが大きな特徴の一つで、ターミナルに設置された充電ステーションの上部からアームのようなパンタグラフを車体の屋根部分に降下させてバスに接続し電力を供給します。
現在、ロンドン市内を走る約850台の電気バスの大半は、車庫で一晩かけて充電を行いますが、ieTramは革新的な新技術を使って車体の屋根から充電ステーションに接続して充電します。
シティセンターを走る二階建てバス
各ルートの終点に充電ポイントが一つ設置される予定になっており、10分以内の充電でロンドンの最長バスルートを再び走行できるようになります。
ieTramバスは2024年春から運行を開始する予定ですが、ロンドン交通局が雑誌「Londoner」に伝えた情報によれば、今年は試行計画の延長予定はないそうです。
でも、走行ルートが今後、ロンドンの南部と東部を結ぶ一つだけなんてことがあるのでしょうか? 見当がつきません。
また、ケント―エセックス間にも、テムズ川の下を走る路面電車用の路線を建設する計画があります。
さて、先ほどのieTramですが、最新版の二階建てバスも含めて現在ロンドンで運行中の他の電気バスと比較した場合、バッテリーの充電が短時間ですむことは、最大の強みといえます。
実際のところ、現行のバスはいったんバッテリーが切れると倉庫に入れ一晩かけて充電しなければならないのですから、柔軟な運行が難しくコストもかかります。
ロンドン市街に新たにお目見えするのは、トラムとバスを掛け合わせたような車両で、USBソケットやWi-Fi、荷物用の棚、情報ディスプレイなど、あらゆる快適装備が整っています。
全長12m、乗客定員は最大105人で、最長350kmの自律走行が可能な、新型車両ieTram。ロンドン市議会がロンドン交通局と共に掲げた、2034年までに完全なゼロエミッション車両を導入するという目標に大いに貢献するでしょう。
現時点では試験的なプロジェクトとして実施されていますが、効率性の高さが実証されれば、計画を拡大してグレーター・ロンドンエリアの他の多くのルートにも利用されることになるでしょう。
私個人としては、せめて展示用に数台は二階建てバスを残してほしいなと思っています。