日が長くなって気候も穏やかになり、ランチやドリンクをようやく「al fresco」(屋外で)楽しめるようになります。
そんな春のロンドンのお楽しみと言えば、何と言っても街路や公園一帯を彩り豊かに染める花々でしょう。
そんな季節にロンドンで開催されるチェルシー・フラワー・ショーは、フラワーデザイナーや花を愛でる人たちにとって、見逃せないイベントです。
ショー開催に合わせて、街の至る所に見事な花のディスプレイが施されます。
このショーは単なるガーデニング業界向けの展示会ではありません。さまざまな人々が一堂に会する儀式とも言える一大イベントで、毎年5月、チェルシー地区の中心部で開催されます。ガーデンや植物の愛好家、専門家、好奇心旺盛な人々、英国王室のメンバーが、自然と芸術が融合した空間に多数集まる祭典なのです。
そして世界中から来場者が訪れます。
今年の会場には、オーストラリアの庭師や日本のランドスケープデザイナーの姿が見られました。また、イタリアからは、このショーに興味を持った人や、出展者として参加した人など、たくさんの人々が訪れていました。
単なる趣味を超えた文化としてガーデニングを大切にしてきたこの国では、ガーデニングはもはや言語、哲学、そして癒しの一つの形にまで発展してきました。こうした歴史からも、チェルシー・フラワー・ショーは英国文化の極みを体現するイベントとなっています。
100年を超える歴史を誇る一方で、とどまることなく進化を続け、毎年、新しいアイデアやテーマ、環境に関する新たな課題に取り組んでいます。
毎年5月に開催され、人生で一度はぜひ経験しておきたいすばらしい催しです。
まだ来場されていない方のために申し上げると、もともとロンドンの春は観光などに特にお勧めの季節で、ましてチェルシー・フラワー・ショーの頃になると街は花々に包まれ、その魔法仕掛けの美しさにきっと魅入られることでしょう。
街を歩けばロンドンならではの色彩や創造性あふれる風景を存分に楽しめます。
花や緑をあしらった印象的な巨大なインスタレーションはすべて、持続可能性に向けた街の取り組みを表しています。ちなみに、緑地や豊かな自然を有する都市では、住民の幸福度が高く犯罪率が低いことが科学的にも実証されています。
毎年、チェルシー・フラワー・ショーではメインテーマを掲げています。そのテーマを現代の課題と関連づけ、コミュニティにおける特定の問題に対する関心や意識を高めるとともに、ショーそのものが環境や社会に利益をもたらし貢献することを目指しています。
また、チェルシー・フラワー・ショーと同時開催される地元の花のイベント「チェルシー・イン・ブルーム」では、今年のテーマは「フラワーズ・イン・ファッション(Flowers in fashion)」。ロンドンを代表するファッションの拠点であるチェルシーに、まさにピッタリのタイトルですね。
フラワーショーの開催前から開催期間中、周辺地域のバーやレストランでは、エディブルフラワーを使ったカクテルやスペシャル料理など、特別メニューを提供しています。
こうしてショーの開催前から街ぐるみで華やかな装飾が施されて、街はさらに美しさを増し、このショーが紡ぎだす素敵なストーリーにはなくてはならない存在になります。
英国の首都の中心部に花や植物のオアシスを作りだし、地元の人、来場者を問わず、すべての人にとって間違いなく壮観のイベントになっているはず。
ショーの会場ロイヤル・ホスピタル・チェルシーの近隣にある11ヘクタール(11万平方メートル)のガーデンでも、この時期、バラやユリ、ポピー、スイセンなどさまざまな花が咲き誇ります。
会期中には地元の小学生を招待した見学ツアーも催されます。ロンドン有数の美しいガーデンを訪れるこうしたツアーは、若い世代を対象に園芸や花のデザインに対する関心を高めるための取り組みの一環として実施されています。



2025年チェルシー・フラワー・ショー