• 2016.06.07
  • ウィークエンド、シンゴ&ビデオアート
嬉しいニュースが舞い込んだ。ヨーロッパで長年の友人である映像芸術家シンゴ ヨシダのビデオアート作品が、ドイツで最も重要な美術館であるベルリニッシェ・ガラリー(Berlinische Galerie)、アカデミー・デア・キュンステ(Akademie der Kuenste)、そしてフルーエントゥーム(Fluentum)のコレクションとして収蔵されることになった。
彼と最初に会ったのは、onpaの女性スタッフが催した4、5年前のバーベキューパーティーでのこと。パリ、ベルリンと、活動拠点を変えながらも、一貫した主張とユニークな視点でクリエイトされる映像作品が特徴。そんな作品とは別に、シンゴ ヨシダ本人の人柄そのものに、当時からすごく憧れてしまっていた。会話の運びがとても愉快な序・破・急によって構成され、たったひとつの旅のエピソードを聞くだけで、彼の人生観が印象的かつ滑稽さを伴って伝わってくる。そんな彼の人間性にとても惹かれ、尊敬すべきアーティストの一人である。
『ウィークエンドギャラリー』という年に一度のベルリンの街を上げてのアートイベント。そこに彼の作品はあった。場所は、onpaがリリースした音楽ソフトを販売しているショップ「ライラ・エム(LEILA M.)」が入り口に鎮座する映画館「バビロン(BABYLON)」だ。ここは旧東ベルリンで一番古い歴史ある映画館。彼が、ウィークエンドギャラリー会期中、映画館バビロンの「ビデオアートatミッドナイト」に出品する機会を得たのは、2011年、MOMA館長のKlaus Biesenbach、ポンピドーセンターのキュレーターでもあり来年のヴェネチアビエンナーレの総合キュレーターでもあるChristine Macel、そして、プラダ財団の『キュレートアワード』で私をファイナリストにノミネートしてくれたHans Ulrich Obristの3名が企画したベルリンで最も前衛的で伝説となった展覧会『Based in Berlin』にシンゴ ヨシダが参加し、そこで「ビデオアートatミッドナイト」の企画者Olaf Stueberと会ったのがきっかけだったという。

さて、気になる作品の内容はというと、ロシアの赤十字チームと共に極東シベリアの日付変更線と北極圏の交差する地点まで視察し、そこでシベリアにまつわる「渡りガラス」の民話からインスパイヤーされた映像、南米チリの南、パタゴニア近くの小さな島で単独で宇宙人の伝説を探しに行った時の映像、そしてブラジル、アマゾンにてサバイバルをした映像の3本。もう素材が良い意味でクレイジーである。
こう聞くと、どれだけ彼が面白いエピソードの持ち主かが分かるだろう。またそれらは不安定な人生の足場を、うまくバランスを取りながら地に足を付け、しっかり踏みしめてこそ得られるものでもある。そしてそんな彼に、作品にとってのあるべきポジショニング、落とし所を提案してくれる人々が世界中にいるその多幸感は比類無き価値だと想像する。ぜひ多くの人々に、彼の作品をドイツでも鑑賞して欲しい。

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特派員

  • 羽生 和仁
  • 職業キュレーター、メディアアートマネージメント

2001年ベルリンにて、メディアアートのキュレーションレーベルonpa)))))を設立。世界各国のアーティストやフェスティヴァルとの人脈を構築。ベルリンと東京のジェットセッターとして活動中。

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