- 2015.06.26
- リグーリア州の夏のフードフェスティバル
ジェノヴァ周辺だけでなくリグーリア州全域には定年退職者が数多く暮らしていますが、ひっそりとしたこの地域も6月の声を聞くとにわかに一変します。寒い季節は静かで休眠状態だった地域が、海沿いの各地や田園地帯の町々でフェスティバル、食のお祭り(サグラ)、野外コンサート、テーマパーティが毎日開催され、人で賑わうイベント会場へと変身するのです。
カプチーノをすすりテレビばかり見ながら大半を家の中で過ごすという怠惰で平穏な冬を終え、リグーリアの人々は今、長く穏やかな理想的な気温の中、外を散策しながら夏の夜を過ごす準備ができています。一晩中オープンしているビーチでは無料の映画上映、ライブコンサート、ダンスパーティーといった数多くのイベントが催されます。また、それぞれの町の守護聖人「サント・パトローノ」を祝し夏の間ほぼ毎晩打ち上げられる花火を楽しむにも、ビーチは最高のビュースポットです。
昔からイタリアの伝統の一部でもある食のお祭り「サグラ」は、歴史的には神々に感謝を捧げて来たる季節の好運を願う行事でした。事実「サグラ」という名前はラテン語で「神聖な」を意味する言葉が語源です。祝賀の宗教的な側面はかなり前から失われていますが、夏と豊穣を象徴し、そして勿論、イタリアで開催されるあらゆるイベントでほぼ例外なく主役の座を占める「食」を象徴するため、現在でも、イタリア人であればこうしたイベントに参加することは必須の約束事だと考えられています。
「サグラ」では、テーマに沿った食べ物の屋台が登場し、オーガニック製品を使って見事に調理した自家製の地元料理が1種類か2種類だけ販売されます。とても陽気で気さくな雰囲気の中、みんな料理を手にしてひなびた木製の長テーブルにつき、年齢にかかわりなく初めて出会った人々と交流します。夏が到来した今こそ、冬の物憂い気分を一掃する時です。日頃は素っ気ない内向的な性格で知られるリグーリア人も、今や陽気で快活になり、日焼けしていく肌を見せつけ、「サグラ」仲間とバケーション・プランを練る準備も万端です。
わたしのお気に入りは決まって村が中世までさかのぼって当時の光景を再現する中世サグラです。この時期は、おじいさんやおばあさんが暮らす静かで小さな村を舞台に中世風の出し物や馬上槍といった競技、鷹狩り、歴史再現ショーが繰り広げられます。
伝統的な音楽で村が活気づき、衣装をまとった地元ボランティアの人々によっておとなも子供もゲームや競争に参加し、町の至るところで開かれる工作場で陶器やアクセサリーといった伝統的な手工芸品の手作りを体験するよう勧められます。
友人の間では「サグラへ行く?」ではなく、「いつサグラへ行く?」と尋ねます。人込みの中で友達や親類や同僚にばったり出会って、行動を共にするグループの人数が段々増えていくことも珍しくありません。協力し合い、一緒にパーティの雰囲気を楽しみ、夏の終わりに日焼けと共に褪せることのない永遠の想い出を作るのがまさにこの時期です。