キリスト教の祝祭がイタリアの伝統的な慣習を表していることが多いのは言うまでもありません。それらの祝祭はもちろん信仰を表しているのですが、最近では社会的な意味合いも強くなり、地域の結束を意味したりもしています。
イースターは、イエス・キリストが死後3日で復活したことを祝う祭日で、灰の水曜日から40日間続く、四旬節と呼ばれる懺悔期間を過ぎた最初の日曜日にあたります。多くの人は、キリスト教の主な祭日はクリスマスだと思っていますが、伝統としては、キリストの復活を祝うイースターこそが一番大切な祭日なのです。イースターのお祝いは、イースターの日曜日の1週間前にあたる棕櫚(しゅろ)の日曜日から始まります。棕櫚の日曜日という呼び名は葉付きの棕櫚の小枝に由来しており、この日に行われるミサでは、その1年の平和と献身のシンボルとして、掲げられた小枝に祝福が与えられます。この時期だけの小枝売りたちが街角にたくさん出没しますが、なかには凝った形やデザインをしたとても芸術的なものもあります。棕櫚の小枝は初めは緑色をしており、次第に乾いてきますが、次のイースターが来るまでの1年間、神の祝福を受けた神聖な品として家で保管されます。これはふつう、家に聖母マリアの肖像があれば、肖像を飾るために使いますが、家を清める意味で玄関に吊るしたりすることもあります。イースター祭を象徴するものはたくさんありますが、卵を運ぶ伝統的なウサギというものがあり、これはキリスト教が誕生した頃からキリストのシンボルとされていたノウサギを指しています。卵は、生命と再生のシンボルとされており、卵を贈る風習は、イースター祭が自然界の繁殖と開花の時期である春に行われることに関係しています。卵はまさに生命と繁殖のシンボルであり、新たな希望を象徴しているのです。ハトのケーキはこの時期ならではの贈り物で、平和の象徴であるハトが羽を広げた形をしています。コロンバと呼ばれるこのハト・ケーキは、バニラ味のスポンジケーキに砂糖がけアーモンドをのせたり、砂糖を振りかけたりしたものが伝統的ですが、最近ではチョコレートや、リモンチェッロという名のリキュール、ヘーゼルナッツなどがかかった、新しいタイプのものも多く出ています。
リキュール、チョコレート、リモンチェッロ味のハト・ケーキ
チョコレート味のハト・ケーキ(ハトは平和の象徴)
大人同士ではハト・ケーキをイースターに贈り合うことが多いのに対して、子供にはよく卵型チョコレートを贈ります。これらの卵型チョコレートは中が空洞になっていて、大きさや味はさまざまで、ビター、ミルク、ホワイト、ナッツ入りなどがありますが、どれも中にちょっとしたジュエリーやプラスチック製の小物といったお楽しみプレゼントが隠されています。
子供向けのお楽しみプレゼント入り卵型チョコレート
イタリアの家庭で食べられるイースターの伝統料理はもちろん子羊で、さまざまな調理法があり、季節の野菜を添えて供します。その他のこの時期を代表する食べ物としては、繰り返しになりますが、繁殖と復活を表す卵があり、ふわふわのオムレツなど、さまざまな料理で食べます。一般的な前菜のうち私の住むリグーリア州で最も有名なのは、パスクアリーナというパイで、層状の無発酵の生地に葉菜や卵、リコッタチーズ、ハーブ(マジョラムとチャイブ)を中に詰め、さらに生地で包んでオーブンで焼いたものです。イースターの伝統的な遊びもたくさんあり、イースターの卵を使う遊びもあります。最もよく知られる遊びはたぶん「エッグ・ピッキング」でしょう。2人の人がそれぞれ彩色した固ゆで卵を手に持ち、丘の上から同時に卵を転がして、殻に入ったヒビが少ない人が両方の卵を獲得できるという遊びです。
固ゆで卵を自然な色合いで彩色
彩色したイースターの固ゆで卵
彩色した固ゆで卵
おそらくイタリアで最も一般的なイースターの風習は、イースターの日曜日に新品の服を着ることだと思います。多くの人がこの日、新調した服を着て外出します。これは教会に関連した何百年も前から続く風習で、復活祭の前の聖土曜日に洗礼を受ける人たちが、洗礼のために新調した白い服を着たのが起源です。カトリック教会や正教会、英国教会では、イースター・キャンドルを灯すのが習わしです。聖土曜日の夜のイースター・イブの祝祭で、祭壇近くの燭台にキャンドルを立てて火を灯します。このキャンドルから炎を取り、教会内の他の全てのキャンドルに火を灯すことで、特にイースター用にとりつけられた美しい装飾を照らし出すのです。炎の中での印象的な祝いの儀式は何世紀も前から続く伝統で、キャンドルはキリストを表し、そして炎は「この世の光」としてのキリストの復活を表しています。