• 2017.07.04
  • リグーリア海、漁師たちの温故知新
夏の到来も近いリグーリア州では、いよいよ観光シーズンが始まります。
観光客のお目当てにも様々なものがありますが、その筆頭はやはり海を楽しむことでしょう。ビーチで日光浴をしながらのんびり過ごす人たちもいれば、セーリングや絶叫型スポーツ、水上アクティビティなどでアクティブに楽しみたい派も。
昔ながらのご当地アクティビティとして代表的なのは、ここでは何と言っても釣りですが、近年では、長い伝統を誇る釣りという名物と観光をミックスしたフィッシング・ツーリズムというジャンルの台頭が目立ちます。

170627margherita_p1水がきれいなリグーリアの海は魚天国

フィッシング・ツーリズムは、観光客がプロの漁師と共に一味違った体験が出来るようにと考案された企画です。フィッシング・ツーリズムのプランを売り出す企業やパッケージツアーはいくつかありますが、どれも釣りをしながらリグーリア海の魅力を堪能できる内容のものばかりです。魚屋を営むある家庭の発案からスタートしたフィッシング・ツーリズムは、当初は地域内で競争らしい競争もなかったのが、今やひとつの流行りと呼べるほどの勢いです。
観光向けのアクティビティとは言え、その内容は海と繊細な生態系を尊重するもので、魚を釣る方法も、地域の規則を守る範囲で行われます。
古い伝統的な手法で漁をする漁師が多い(が、年々その数は減り続けている)リグーリア地方のこのアクティビティは、地元民にとっても良い刺激となっています。かつてこの地方の人々の大半は漁業で生計を立てていたし、リグーリアの漁師は自分たちが受け継いだ遺産に誇りを思っているからです。
観光客の中でも熱心な釣りマニアの人々からは、漁師の仕事を間近に見てライフスタイルを知りたい、海という舞台で生きる人々の、ある意味でユニークな世界を見てみたいという熱いリクエストもあります。
というわけで、船上で漁師と共に昼食を囲む、新鮮な魚介類(自分で釣った魚でも可)をその場でグリルする、と言ったオプションも用意されているのです。

かつての漁師という仕事は、夜まだ暗いうちに船を出しては朝までに岸に戻り、地元の市場でその日の収穫分を売るという、人々と交わりの少ない生活が前提でした。
それがこの頃では、漁船がそのまま水上店舗に早変わりして、来てくれたお客さんに産地直送の魚を売る、つまり捕れた魚の直販もやってのける漁師もいます。
このシステムにしても然るべき機関の管理下にあり、中間業者のコストを省くことができるため、魚介類の値引きが可能になるのです。

170627margherita_p2波止場に船を停めて水揚げしたばかりの魚を売る漁師たち


若い世代の中には、自分の船に小さなキッチンを設置して、移動型の居酒屋に仕立てた漁師もいます。2年間のオフショア活動の末、自分たちの漁船を水上の「フード・カート」にしようと企てたのは、波止場の3人の少年たちでした。彼らは、ウィークデーには漁と魚介類の販売を行ない、週末になると海の幸を使ったご馳走をお客さんに提供しています。

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 魚とローカルワインを販売する漁師たち      海辺で味わうプロセッコ・ワインと魚介類


彼らはまた、最大12名まで参加できるフィッシング・ツアーも開催しています。リグーリア沿岸の絶景を眺める感動に加え、楽しい釣りの思い出も残せるという、素晴らしいひとときを船上で過ごせます。彼らが目指すものは、海に対する熱い思いを共有することと、地域の漁業の活性化です。その料理のメニューには、シーフードのミックスフライ、サンドウィッチやフィッシュバーガーなど、美味しそうな選択肢がズラリ。バーガーは、カリフラワーと地中海産のグリルフィッシュを使ったツナのようなパテを、トマトサラダとマヨネーズとともにバンズで挟んだもの。サンドウィッチは、地中海で捕れたパイク(キタカワカマス)やメルルーサ、イカなど季節ごとの魚介のフィレをフライまたはグリルにしています。夏の間はレストランも毎夜営業となり、店先では様々な演出を施して、海辺の通りを散歩する人々の足を止めています。




特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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