年末年始営業のご案内
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2025年1月1日(水):全館休業
※各店舗の年末年始の営業についてはフロアガイドよりご覧下さい。

  • 2017.09.06
  • ジェノヴァで世界一周旅行
ジェノヴァの主要駅であるピアッツァ・プリンチペ駅の上方、街全体を見渡せる位置に、高貴な世界の名残を漂わせるだけでなく、世界中から集められた逸品が眠っている、シックでエレガントな誇り高き城があるなんて、なかなか想像しにくいかもしれません。

歴史の面影を残す旧市街地の街並みからすぐ近くに、暖色系の色づかいとスパイスの香りに満ちたアラベスク模様の私室、船室を模した部屋、あるいは星のモチーフを散りばめた天井のある部屋に迷い込んで時を過ごせる場所があります。それは、ダルベルティス城という名のユニークで美しい宮殿です。

Patrizia Moras - Photo 1丘の上の城は博物館として公開されている


丘の上というロケーションに恵まれたこのお城からは、ジェノヴァの街や港が一望できます。人工の洞窟や水遊びのできる施設を備えたロマンティックな公園、世界中の国々から集めた壁紙やエキゾチックな植物に囲まれた空間は、都心近くでピクニックをするのに打ってつけのスポットです。
閉鎖されていた数年間はジェノヴァ市民も淋しい思いをしたものですが、長期にわたる修復を終え、2004年にはめでたく再び公開の運びとなりました。

ダルベルティスというのは、この城を建てたかつての所有者の名前です。彼は船乗りから船長となり、精力的に旅に出かけては異国情緒を感じさせる品々を集めました。新たなる土地を夢中で追い求め続けた彼の旅は、正真正銘の冒険だったでしょう。

Patrizia Moras - Photo 2各部屋にはテーマが設けられている


Patrizia Moras - Photo 3船のキャビンがモチーフの部屋


1800年から1900年にかけて、陸と海の両方で旅をしてはお土産を持ち帰っていたエンリコ・ダルベルティス船長は、その思い出の品々を自分の城に飾るようになりました。
16世紀の要塞の上に、彼が住んでいた自宅と並んで佇むこの城は、言ってみれば世界文化博物館なのです。

可能性の限界を超えてみせるという一心で未知の世界への冒険に挑むダルベルティス氏に、怖いものなどなかったのでしょう。発見することの魅力が彼の原動力でした。
現在はミュージアムとなった各部屋には、世界中の文化や言語、物語、そして伝承民話などが、細部までこだわって配置されています。入り口に足を踏み入れた瞬間から、摩訶不思議な世界への小旅行が体験できるこの空間は、まさに唯一無二の存在です。

Patrizia Moras - Photo 4世界中の思い出の品々が集められた館内


ジェノヴァはかのクリストファー・コロンブスの生誕地であることも忘れてはいけません。この博物館は、船乗りたちの伝統文化がどんなものであったかについても教えてくれます。船で遠距離移動する人々が、毎日ジェノヴァ港から出ているクルーズ船を利用する観光客ばかりとなった今でも、ここジェノヴァが港町であることに変わりはありません。

異国の香りに溢れるコレクションが並び、遥か彼方の異国の世界を垣間見せながら、この城内でそれらを一つに束ねているのは、文化と伝統への愛なのです。

アラビア風唐草模様が美しいファブリックに柔らかいソファ、真鍮のランプ、金糸を使った刺繍などの展示が幻惑的なターキッシュ・ルーム(トルコ風の部屋)は、水パイプの香りとともに神秘と不思議に満ちた東洋の世界をすぐさま体感できる、私のお気に入りのスペースです。

Patrizia Moras - Photo 5ダルベルティス城のターキッシュ・ルーム Castle


ダルベルティス船長が旅先で出会った考古学的な、あるいは民俗学的・文化的・言語学的な発見を垣間見ることで、私たちは異国の文化を俯瞰して見るという感覚を養うだけでなく、物事の根源的な意味を見つめ直すきっかけを与えられます。

エレガントで魅力的な雰囲気に浸りながら豊かな時間を過ごしたあとは、庭園から広い海の眺めも楽しめます。街に栄華をもたらしたのがこの海であることが胸に刻み込まれている私たちにとって、この景色は、発見と内省に溢れた小旅行にふさわしい最高のプレゼントです。
一人の旅行者である私自身にとっても、旅の思い出を集めたこのプライベートコレクションは、海と陸両方の旅と情熱を追い求める人生を代弁してくれているような気がします。ダルベルティス船長は全方位的に知性が高く、学者肌で、植物学にも造詣が深く、好奇心旺盛なコレクターでした。

冒険に出かける果敢さと共に、生まれ故郷を忘れることなく帰ってくる賢明さを持っていた彼を誇りに思うジェノヴァっ子は少なくありません。自らの富と知識を惜しみなく共有し、死後はそのコレクションを寄贈したというダルベルティス氏に対する称賛が尽きることはないのです。

3つのフロアを駆使して展示されたコレクションでは、異なる大陸がカバーされています。アフリカ、そしてクリストファー・コロンブスが横断した大西洋の向こうの国々から船長が持ち帰った、ありとあらゆる品物や自然、膨大な数の写真を見るうちに、気が付けば私たちも彼が見たのと同じ世界を追体験しているのです。

Patrizia Moras - Photo 6クリストファー・コロンブスの記念碑プレート




特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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