この港があるおかげで、ジェノヴァは現在、新たな21世紀版シルクロード構想の戦略的起点の候補に挙がっています。リグーリア州の中心都市として、世界貿易の力学はもちろん地理的・政治的状況の力学をも変えるであろうプロジェクトがもたらすメリットを手に入れたいジェノヴァにしてみれば、この中国発の「一帯一路」構想が大いなるチャンスであることは間違いありません。
けれども実は、東洋の「趣 (flavor)」はジェノヴァの街にすでにあるものです。
街の中心部からもさして遠くないVilletta di Negroにある歴史的な建物の中に、中国や日本やタイなど、イタリア随一の東洋のアートコレクションが展示されています。
それらの展示の一角には、長らく東京で暮らしたイタリア人アーティスト、キヨッソーネの版画や絵画が並んでいます。
ここキヨッソーネ東洋美術館はその名の通り、キヨッソーネを偲んで設立された美術館なのです。日本の大蔵省印刷局で指導し、日本の美術に注いだ愛を故郷の街でも広めたいと願ったキヨッソーネ。はるか異国の地で暮らしながらも自身のルーツを忘れなかった、ひとりのジェノヴァ人アーティストの作品のコレクションを収めたミュージアムの存在ごと、彼に捧げるオマージュそのものだと言えるでしょう。
明治時代の日本でキヨッソーネが集めた日本および東洋美術の豊かな遺産が、今やここで一般公開され、私たちも見られるようになったというわけです。
美術館が所蔵する様々な年代の作品群には、絵画(11世紀から19世紀までのもの)、武器や武具、七宝焼、陶磁器、版画、楽器、能面、衣装、織物に加え、彫刻作品の豊富なコレクションが揃います。
ジェノヴァの東洋美術館
東洋美術館の他には、ジェノヴァっ子が大好きなイースタンマーケットも外せないスポットです。
ジェノヴァ市の東門に近いこと、東洋のスパイスを売っていることから「オリエンタル」とも呼ばれるこのマーケット。1699年に発足したプロジェクトによりOur Lady of Consolation修道会の女子修道院内に建設され、、1899年に開業しました。
イースタンマーケットに一歩足を踏み入れた瞬間から、絵画のように芸術的に盛られた果物や野菜、かぐわしい匂いを放っている花々や植物、エキゾチックなフルーツやスパイス類など、店頭に並ぶ多種多様な商品の香りと見た目の楽しさに圧倒されます。
それらの香りと風味が合わさって味覚を刺激されると、思わず食欲も湧いてくるというもの。
何といっても、ここはリグーリア州。UNESCO無形文化遺産の保護対象の候補にもなっているペストソースの主原料であるジェノヴァ産バジルをはじめ、リグーリア地方の特産品も販売しています。
それ以外にも、リグーリア海岸産のオリーブオイルや各種オイル、リグーリア海で採れたアンチョビの塩漬けなどの名産品が揃っています。
マーケットへはジェノヴァの繁華街の目抜き通り、ヴィア・ヴェンティ・セッテンブレ(9月20日通り)からアクセスできます。
拡張工事によるリノベーションを経て、深夜も営業する屋台スペースとなったオリエンタル・マーケットには、増設されたフロアにテーブルが並べられ、イートインスペースも出来ました。
装いも新たになった場内では、通りに面した1階に小売のカウンターと一般向けマーケットが並びます。2階は、地方自治体とスポンサーの共同出資によって新しく作られたワインと食品の大型専門フロア。300席以上のレストランとカフェ、東洋とイタリアの屋台食が楽しめる11のコーナーも併設しています。ここで扱っているのは、生産元に関して厳しく定められた基準をクリアした商品や原料ばかり。今回のプロジェクトではさらに、高床式のステージも新設。今後の新たな取り組みとして、数か月後にはコンサートやライブショーその他のイベントが始まる予定です。
「オリエンタル」な市場に並ぶスパイスたち