社会的階層、年齢、性別を問わず広く愛されるジーンズは、おそらく世界で最も多く販売され、最も必要とされる衣料でしょう。
当初はその本来の濃いブルーの色から「ブルージーンズ」と呼ばれましたが、16世紀には青いターポリンを指す名称であった「ブルー・ド・ジェン(“ジェノヴァのブルー”を意味するフランス語)」が時を経て英語に変化したのが、この名のそもそもの由来です。
ターポリンは、船の帆や、荷物を覆うのに使われた生地です。オックスフォード英語辞典によると、この名が生まれたのは1567年とのこと。
用語としてのブルージーンズ(または単にジーンズ)は、パンツの後ろ側の生地に2つのポケットを縫い付けた、昔ながらの5ポケットカットを意味します。このタイプで作ったデニムのパンツがあまりにも大量に出回ったことから、いつしか言葉の定義がごっちゃになりました。デニムというのは生地を指す言葉で、色は必ずしもブルーに限定するものではないし、ジーンズと言えばそれらのパンツ特定のスタイルやカットを表します。
デニムは綿糸からできた生地で、白または生成り色の糸とブルーの糸を織り合わせています。化学染料が使われる前は、インディゴの色調を持つ植物から青色を取り出して染めていました。
16世紀の半ば、ジェノヴァ港からイギリスを筆頭にヨーロッパ各地に向けて、非常に丈夫で一定の品質を備え、なおかつ安価なインディゴブルーのジーンズの大量輸出が始まりました。
その起源、発祥に至るいきさつについては昔から諸説あるジーンズですが、歴史的に言えばすでにお伝えしたとおり、ジーンズが最初に製造された場所は、中世以降、ウールや麻や木綿などの原料を使った加工品を大量に輸出し始めたジェノヴァ(とその周辺)であることが分かっています。
ただ、トリノに近いある都市が、航海の際の梱包用として、また、ジェノヴァの港で荷物を覆うために使われた特定の種類の青いターポリンの一大産地となった後、それと同じ原料でジーンズを生産するようになったのは15世紀以降のことでした。
その耐久性から「ワークパンツ」とも呼ばれ、港湾労働者にも愛用されたジーンズ。
実際、ジーンズは頑丈でジャブジャブ洗えるように作られた生地なのです。
大量の移民が外国に流出した19世紀頃、ジェノヴァのジーンズはアメリカに上陸し、鉱山労働者の作業着として活躍することになります。
最初の呼び名から「ブルージーンズ」に変わったのも、まさにアメリカでのことです。1873年、サンフランシスコ地域の金の採掘者向けに店を開いたリーバイ・ストラウスによって最初のデニムのジーンズが生まれました。デニム生地を使ったテーラーカットによる初のジーンズの誕生です。
それから数十年後、極西部のカウボーイたちにより、この生地はズボンだけでなく酷使に耐えるジャケットにも使われるようになりました。
スリムタイプ、ハイライズにローライズ、ジッパー式やボタン式など、ジーンズのモデルも時と共に無限に増え、バラエティ豊かな色味と色調によってカラーも変化していきました。
トレーナーに合わせてカジュアルにも、あるいはシャツやジャケットと合わせればエレガントなアイテムにもなるジーンズは、今や毎日のように着られていると言っても過言ではないでしょう。
ジェノヴァの旧港に行くと、高さ18m、600本の古着のジーンズを組み合わせて港のクレーンで吊り上げた、ギネス世界記録にも認定済みのジーンズを見ることができますよ。
ジェノヴァで生まれたジーンズ