• 2020.02.27
  • チメントとチッチョ王
1月の中旬にカーニバルシーズンの始まりを迎えるリグーリア地方では、サヴォーナ市のトレッタ塔(レオン・パンカルドの塔)まで、チッチョ王が海から船に乗ってやって来ます。
ユニークで伝統あるこのショーを死ぬまでに一度は見ておこうと、リグーリア中の人たちが集まってきます。このイベントは文字どおりカーニバルの季節の幕開けを告げるもので、在りし日の「この街の王様」が、廷臣や北西部地方のカーニバルの仮面(この伝統は残念ながら失われています)に取り囲まれていた時代にタイムトリップさせてくれる、幼心に刻み込まれた特別な思い出にもリンクしているからです。

毎年サヴォーナ県が開催するサヴォーナのカーニバルに付きものなのが「国王陛下のチッチョ」。これはリグーリア州、ピエモンテ州、ロンバルディア州、ヴァッレ・ダオスタ州など、とりわけ歴史の深い州に囲まれたこのエリアでも特に有名なカーニバルのお面です。
街の中心的なPiazza(広場)に集まったあと、人々は港の波止場へと移動します。午後になると、いつものごとくトレッタ塔の下の階段のところに「国王陛下チッチョ」が下船。この王様が上陸したら、仮面を付けた人々が町を練り歩くのがお決まりです。その後ろから、ありとあらゆるカーニバルの仮装をした子供たちも続きます。このパレードの終点はいつも市役所で、そこでは市長からサヴォーナのカーニバルの王へと、象徴としての「鍵」が手渡されるのです。


サヴォーナ市の鍵を受け取るチッチョ


ライブ演奏を披露するバンドがいて、音楽でイベントをさらに盛り上げるのが当日のお約束。
大きくて立派なお腹で、赤い帽子、水兵や船乗りよろしく赤と白のストライプのシャツを着込んだチッチョは、リグーリアの人たちに福と幸いを届けるべく海からやって来るのだと言われています。
子供たちはパパやママと一緒に船に乗り込み、王様のチッチョと一緒に「セルフィー」、つまり自撮りをすること(ちょっと新しい伝統)もできます。ただし船内のスペースに限りがあるため、これには無料のオンライン申し込みが必要です。


カーニバルシーズンのオープニングパレード


チッチョの到来と同じ日に、同じ伝統に従って催される行事で、さまざまな年代の大胆不敵な人々が参加するのがCimento Invernale(チメント・インベルナーレ)です。これは要するに、凍り付くほど冷たいリグーリアの海で、水着だけの姿で泳ぐという大会です。
Cimento Invernaleで泳ぐにあたっては体づくりなどの条件がなく、年齢の指定も特にないので、誰でも出場は可能。あくまでも常識の範囲で、総じて良好な健康状態の人の参加が推奨されているだけです。
海に入る時刻は、だいたい午前11時。その後、出場者対象の授賞式があります。海から上がった時には温かい飲み物が、授賞式終了後には軽食が、Cimentisti(チメンティスティ。このイベントの出場者のこと)に振る舞われます。
1年を通して最も寒くなるこの時期、リグーリア海岸のあらゆる都市で次々にこの寒中水泳大会が開催されます。冷え切った冬の気温も何のその、ためらうことなく水着を引っ張り出してきた老若男女が集まり、そして海に飛び込むのです。「すべての経験が人を強くする」の言葉のとおり、むしろ健康のために参加している!と嘯く人もいるそうですよ。

同じ日に同じ場所で終日行われるFiera(縁日)も、やはり伝統的なイベント。たくさん立ち並んだ屋台では、男女のスポーツウェアや冬もの衣料に靴、革製品、家具や生活雑貨、おもちゃ、地域ゆかりの食料品やワイン関連の製品が販売されます。
最高にわくわくするこのイベントはリグーリア地方の住人にとって、「放っておけば灰色の冬を、色とりどりに染めてくれる」大切なもの。仮装した子供たちが道行く人に向かってcoriandoli(紙吹雪)やstelle filanti(吹き流し)を投げながらパレードする姿も、この日ならではの楽しい風物詩なのです。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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