• 2020.03.26
  • アラッシオのキス
私たちの美しいリグーリア地方の小さな町アラッシオが大好きな理由は、二つあります。一つ目は、素晴らしい観光地で(多分リグーリア地方では私の一番のお気に入りの一つです)、いつも、とりわけ夏には活気にあふれていること、そして二つ目の理由は、アラッシオのキスがあること!
イ・バーチ・ディ・アラッシオ(アラッシオのキス)は、チョコレート・ファッジとヘーゼルナッツとで作る焼き菓子で、一般的によりよく知られているイタリアのバーチ・ディ・ダーマ(貴婦人のキス)の遠い親戚ですが、アメリカのキスチョコ(ミルクチョコだけで作る)とはまったくの別物です。
比較的近年になって生まれたお菓子で、1900年初期に海水浴が流行して、リヴィエラに初めて観光客、とりわけイギリス人観光客がやって来るようになってから作られたものです。
アラッシオは、甘さとロマンティシズムの繊細な取り合わせであるバーチ・ディ・アラッシオで有名なのです。
アラッシオのキスは楕円形で色は茶色、ヘーゼルナッツと甘すぎないチョコレートの上品な味わいが魅力です。
バーチ・ディ・アラッシオの発祥はサヴォイア王宮の菓子職人にまで遡ります。1950年代の終わりには、この焼き菓子の作り方はアラッシオの名だたる菓子店に広まり、第二次世界大戦後には、この町に関する出版物などには必ずバーチ・ディ・アラッシオを見かけるようになりました。
今日ではバーチ・ディ・アラッシオは素晴らしい海辺の町の名産品となり、2006年以降はD.O.P(原産地名称保護制度)対象の重要な食品となっています。このお菓子が他と違うのは、それぞれの材料の分量と混ぜ方に秘訣があり、そのレシピは今でも大切な秘密として守られています。
アラッシオとリグーリア地方全域にたくさんのお菓子屋さんがあって、この銘菓を手に入れることができますが、バーチ・ディ・アラッシオ作りの最高の名手はおそらく私の友人ルチャーノで、なんと彼はアラッシオ出身ですらないのです! さまざまな試行錯誤を経て、ルチャーノは完璧なレシピにたどり着き、それを公開しています。
ルチャーノのバーチ・ディ・アラッシオは非の打ちどころのないギュッと詰まった濃厚さが特徴ですが、いったん口に入れるとふわっととろけ、それでいて口の中で味がごちゃ混ぜになったり、ねっとり重くなったりすることもありません。もしもルチャーノのように極上のヘーゼルナッツを使えば、ヘーゼルナッツとココアの豊かな風味の後味を何時間も楽しむことができます。

バーチ・ディ・アラッシオ20〜22個分の材料

焼いたヘーゼルナッツ 250 g
砂糖 125 g
ビターココアパウダー 20 g
蜂蜜 25 g
卵白2個分を角が立つまで泡立てたもの
塩ひとつまみ
ダークチョコレート100 g (フィリング用)
バター 25 g (フィリング用)

ミキサーにヘーゼルナッツと砂糖とココアを入れてできるだけ細かくなるまで混ぜる。
生地をボウルに入れて蜂蜜を加え混ぜる。
卵白に塩をひとつまみ加えて角が立つまで泡立て、ヘーゼルナッツの生地にそっと加える。
生地を絞り袋(大きいもの)に入れ、オーブンの天板に間隔を置いてクルミ大に絞り出す。
天板を冷蔵庫に入れて15分以上冷やす。
その間にオーブンを160度に予熱しておく。
寝かせておいたビスケット生地を冷蔵庫から取り出し、すぐにオーブンに入れて15分焼く。
オーブンから取り出し、ケーキクーラーにのせて冷ます。
冷ましている間に、チョコレートとバターを溶かしてフィリングを作り、火から下ろして室温になるまで冷ます。
ビスケット生地を二つ(平らな面どうし)を、溶けかけたチョコレートを糊代りに間に塗って合わせる。
冷蔵庫に2〜3分入れて食べる前に固める。ただし冷たくない状態でいただくのがおすすめ。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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