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  • 2021.05.12
  • リグーリア・ブログ-みんなの民俗舞踊
今回のブログでは、リグーリア地方の民俗舞踊、そして現在の過酷な状況と現代社会の中でそれが直面している課題について書いてみたいと思います。
民俗舞踊が危機的状況にあるのはリグーリアに限ったことではなく、イタリアひいてはヨーロッパ、世界の各地域に共通の悩みのようです。
私の友人にもリグーリア地方の民俗舞踊を練習している(正確には「コロナ禍以前に習っていた」)女性がいます。
ライブ配信プラットフォームを利用したオンラインレッスンを行ったり、天気が良い日は屋外で(メンバー間の安全な距離を保ちながら)練習したりと活動は続けているようですが、彼女はダンスグループがこの休止期間中に分裂してしまうのではないかと不安がっています。
また近いうちに一緒にライブショーをしたり、ステージに立ったりできることを彼女たちは切望しています。
この手のダンスはペアを組んで踊るためパートナーとの接触が不可欠ですが、ほとんどのペアは実生活でのカップル(夫婦や恋人同士)ではないので体に触れたり一緒に踊ったりすることができず、ステップやダンスの振り付けの練習を行うのが本当に難しいとのことです。

友人によると、現在のコロナ禍とそれに伴うもろもろの制限を抜きにしても、2020年以前から伝統舞踊グループは問題を抱えていたようです。ダンスに興味のある若者は、最近では地元でおなじみの舞踊ではなくサルサやタンゴ、ラインダンスといった異国のダンスに流れているので、伝統的な歌曲や舞踊を学ぼうとする若者を取り込めない限り、彼女のところも含めた多くの伝統舞踏グループは永遠に失われる危機に直面しています。
つまり彼女の考えでは、ジェノヴァの民俗音楽の伝統は重大な「絶滅」の危機に瀕していて、1920年代に設立された彼女の民俗舞踊グループも、消えていった他の多くのグループと同様に過去の遺物として忘れ去られてしまう、というのです。
この手のダンスは若い人から見れば時代遅れで、「古くさい」、「笑える」ものであって、ショーに参加しようとか、習ってみようとか思う存在ではありません。民俗音楽の良さがわからない、あるいはライブショーで伝統衣装を着るのが恥ずかしい、などと感じ、伝統が失われてしまうのです。
何であれ、伝統が消えてしまうのは残念なことです。
彼女のグループに所属するメンバーの大半は60歳以上とのこと。この先何年かの間に新たなメンバーが現れず世代交代が進まなければ、これらのダンスも色褪せた思い出の1ページになってしまうという危機が現実に迫っています。最年少のメンバーは現在30代の女性だそうで、メンバーはみな、いつも頑張って踊り続けています。しかし、レパートリーの中でも特に複雑で技術的難易度が高く、若くて健康な踊り手しか踏めないステップは、悲しいことにほとんどのメンバーには難しいというのです。
さらに、この伝統のダンスにはお約束の衣装があります。すべて手作りで仕上げるこの衣装の製法と知識は、昔のジェノヴァではどの家にも伝わっていたものですが、現在ではフォークダンスや地域行事の際にだけ使われる衣装の伝統として次の世代に継承するために手厚く保護されています。
友人の話では、この衣装と衣装を製作できる仕立屋さんを見つけるのもひと苦労なのだとか。特に女性用の手の込んだ衣装となると、昔の女性が頭にかぶっていた、まるで花嫁さながらの大きなヘッドスカーフ(時には長さ・幅共に3mになるものも)などたくさんの小物が必要なので、作るのが大変だということです。
このヘッドスカーフはメッツァーロ(mezzaro)と呼ばれ、この名の由来や背景についてはいろんな説があります。
アラブ地方から持ち込まれた習慣だという人もいれば、インド発祥説を唱える人もいます。
このスカーフは非常にカラフルで、樹木や植物、花、果物、動物など自然をモチーフにした絵柄が入っているのが一般的です。
いろんな種類の民俗舞踊がありますが、特に複雑なダンスは前述の理由で廃れつつあります。
こうしたダンスの多くに共通してみられるのが、男性の踊り手1人、または1組のペアのまわりに男女混合で輪を形成し、中央に向かって移動するという振り付けです。
男女が向かい合って並び、男性が1人目の女性の手を取る「アンダーアーム」の形で踊り、振り出しに戻るまで2番目以降の女性へとパートナーチェンジしながら次々とステップを踏んでいくものもあります。
いつも友人が踊っているジーグというダンスは女性4人と男性1人が踊りますが、オリジナルに忠実な完全版では男性2人が左右対称にダンスを舞います。踊りの流れは2人で踊るバージョンと同じですが、踊り手は十字のフォーメーションを取り、男性はダンスの4つのパートでそれぞれの女性と踊っていきます。
ダンサーの数が2倍になれば、より複雑で壮観なダンスになります。ダンサーたちはアンダーアームの形で斜めや横方向に正確なステップを踏みます。この場合には何曲かの民謡が使われ、ステップは曲ごとに微妙に変化します。
この伝統が完全に廃れてしまうことなく、お芝居やオペラと同じように劇場で上演されて保護されることを願わずにはいられません。


民俗舞踊の女性用衣装

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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