ご存知のように、哺乳類は周囲に適応するために行動様式を変えるわけですが、これにより特に人間との間に軋轢が生じかねません。
動物保護団体はリグーリア州の行政に対し、公共サービスの一環として増加する野生動物のケガや病気に対する緊急対応を申し入れてきましたが、今のところ何ひとつ変わっていません。
住んでいる地域で野生動物を目撃したり、ケガをしている動物を見かけたりした時に通報できるよう、地元の動物保護団体では無料の電話窓口を開設しています。
残念ながら、この団体の活動には多額の出費がかかり、リグーリア州から受け取れるお金では十分ではありません。
市街地で特に深刻な問題になっているのがイノシシです。イノシシは体が大きくて物を壊してしまうため、どんどん手に負えない状況になり、地元住民は早急な措置を求めて動き出しました。
ごみ箱からあふれ出す廃棄物に引き寄せられて、都心を中心としてイノシシが街や村の路地を荒らし回り、人間やペットにも害を及ぼしかねないダニまで持ち込むとあれば、悪化の一途をたどるこの状況はとても耐えられるものではありません。
昼夜を問わず、エサを求めて街の公園や往来をうろつくイノシシ。街角の至る所にごみが捨てられていて、ごみの収集サイクルが停滞中なために何日も放置されて腐っていくごみがそこら中にあることを、イノシシはちゃんと分かっているのですね。
この状況を回避・解決する対策がほとんど講じられないまま、コロナ禍とそれに伴うロックダウンにより、廃棄されるごみの増加と比例して街に出現するイノシシも増えたのです。
それでも、悪いことばかりではありません。シカやキツネ、いろんな種類の鳥の存在や、一時はこの地域ではほとんど見かけなくなっていた蝶やホタルの個体数の増加が日々、報じられるようになりました。
人間と動物両方の安全のため、動物の飛び出しによる交通事故を防止しようと運転時の制限速度を落とした地域もあります。
数年前にいなくなっていたオオカミまで姿を現し、現在ジェノヴァでは環境ガイド協会の主催で、小道や丘陵地でオオカミを追跡するツアーまで行われています。
オオカミが再び現れたことは知られていても、この地域の山間部で生きることは簡単ではないし、オオカミが保護対象であることを忘れている(または忘れたふりをしている)という人も少なくありません。
近年、リグーリア州のオオカミに関する研究への投資はごくわずかです。最新の州の推計によるとリグーリア州には少なくとも70匹のオオカミが生息しているようですが、この動物の習性を考えるとこのデータは確実なものではありません。
何年も前に姿を消したのち、この興味深い生き物・オオカミは、人間の手が加わっていないエリアを再び手に入れて戻ってきました。エサは豊富にありますが、頭数がごく少ないうえに食べ物を探して常に移動するので、オオカミを見つけることはとても難しいのです。
アペニン山脈からリグーリアン・アルプスまでやってきたオオカミたちは、狩猟目的で大量に増やされたイノシシを追って国境に向かったと考えられています。
これまでに人間を襲ったオオカミはいませんが、彼らがかつてこの地域に生息していた時代には、羊飼いや一般人が森で襲われて重傷を負ったり命を落としたりすることが何度もあり、オオカミ駆除のために軍が招集されることさえありました。
この問題は現在、アペニン山脈全域とアルプス山脈にまで影を落としていて、農家の人たちの多くはとても怒っています。というのも、保護動物であるオオカミを銃で撃つことはできないし、オオカミの被害にあった乳牛や羊、山羊の補償を受けるにはどうすればいいのかも分からないので、自分たちは見放されていると感じているからです。
今では珍しくない野生動物の姿