今は結婚して子どももいますが、家族も巻き込んで大好きなアートを楽しむことにしています。赤ちゃん連れで美術館に行くなんて変わっている、と思う人もいるかも知れませんが、家族はみんな喜んで私についてきてくれます。
展覧会の楽しみ方は確実に変わりましたし、今は家族みんなが同じようにアートに親しめる方法を常に模索しているところです。
ありがたいことに、最近は予約ができるファミリー向けのガイド付きツアーもありますし、子どもにも配慮した美術館を訪れるのもいいですね。私がよく行くのは、インタラクティブな展示がある展覧会です。
この夏に美術館が営業を再開して以来、私もいくつかの展覧会を訪れました。
最近行ったのは、ジェノヴァにあるドゥカーレ宮殿で開催された「エッシャー展」です。
多くの展覧会が開催されるジェノヴァのドゥカーレ宮殿
「宮殿」を意味するジェノヴァの方言、「オ・パクソ(O Päxo)」の愛称で知られるドゥカーレ宮殿は、地理的にも文化的にも昔からジェノヴァ市の中心です。
美術展や写真展、文化イベント、本の贈呈式や演劇などさまざまな企画が行われ、複数のイベントを別々の部屋で同時に開催していることもあります。
「エッシャー展」を選んだ理由は、私が前からエッシャーが大好きだから。ご存知ない方のために説明すると、オランダ出身のエッシャーは、さまざまな種類のだまし絵の作者として有名な版画家でありグラフィック・アーティストだった人物です。
美術展は子ども連れには向いていないと言う人も、誰が見ても興味深く面白い、インタラクティブな展示が並ぶエッシャー展に行けば、きっと考えが変わるでしょう。
9月にスタートしたこの展覧会は、2022年2月22日まで開催中です。
実際に会場に行けば、その内容に圧倒されるのはまちがいありません。順路に沿って鑑賞することで、アールヌーボーのルーツから幾何学的形態や視覚への関心の高まりまで、エッシャーのキャリアの出発点から円熟期に至るまでの創造性の進化を辿ることができるように構成されています。
展示作品の撮影はNGですが、エッシャーの作品の中でも特に有名なものが展示されている、ということはお知らせしておきます。宮殿内にはエッシャーおよび彼の作品を解説したパネルも掲示されていますし、とっても面白い体験型のインスタレーションもたくさんあって、来場者はそれらで遊びながら、エッシャーのアーティスティックな発想や、彼が得たインスピレーションの本質に触れることができるのです。
展示の最後、ミュージアムショップにたどり着く手前の部屋には、エッシャーが映画や音楽、出版に与えた影響に関する映像や資料を見ることができます。
小さな子どもたちにも解りやすく展示内容を楽しんでもらおうと、子どもを対象とした1時間ほどのガイド付きツアーを実施している日もあります。
ガイド付きツアーに参加すると、エッシャーの作品に通底する本質について少しずつ解説を聞くことができます。
エッシャーはシンプルな形を好み、作品に取り入れました。
インタラクティブな展示で遊べる鏡の部屋や幾何学キャラクターの部屋を出ると、プロジェクション・ルームが現れます。
案内に従って、壁に映った自分の影で遊んでみました。
このシンプルな遊びは、物体の形状はその背景なしには認識できないという意味で、「存在・非存在」の原理を私たちに教えてくれます。
床が斜めになっている部屋もありました。この部屋のどちら側に立つかによって、自分が大きく見えたり小さく見えたりするのです。
要するに、人生を決定するのは一にも二にも「視点」だということですね!