交通革命で一変した都市はたくさんありますが、ジェノヴァ市ではこれが初の試みとなります。リグーリア州が政府のイタリア復興・レジリエンス基金(National Recovery and Resilience Fund)に申し込み、数か月前にジェノヴァ市に認可が下りました。復興・レジリエンス基金は地域の交通輸送システムのリニューアルなどに利用できるお金で、地下交通網やバス、地域の鉄道などさまざまな設備に使われます。
第一弾として、地下鉄の拡張のために既存路線に駅が増設され、続いて公共交通機関の運賃を4か月間無料とする取り組みが導入されています。
この運賃無料措置は12月1日から始まりました。公共交通機関の利用を推進することにより、自動車の交通量を減らし、ひいては二酸化炭素排出量を削減することが、この取り組みのねらいです。
この試みは2022年3月31日まで行われる予定で、地下鉄やバスだけでなく、エレベーターやケーブルカーなどのいわゆる「垂直移動手段」にも適用されます。
ジェノヴァの街は丘陵地と海に挟まれた土地にビルが建ち並び、ビルの間には無数の狭い路地や行き止まりの道、石畳の道が迷路のように交わっています。
バスが通れない道も少なくないし、街の中心部には坂が多いため、近隣地区と行き来できるようエレベーターやケーブルカーがたくさん設置されています。
バスおよびこれらの垂直移動手段は、曜日や時間に関係なく期間中いつでも無料となります。一方、地下鉄が無料になるのは毎日午前10時から午後4時までと午後8時から終電までですので、ラッシュアワーは含まれていません。
地形が入り組んだジェノヴァ一帯では、独特の道路システム(曲がりくねった狭い道や1車線道路が多いなど)もその大きな特徴で、その特殊性を機能的な公共交通機関によって補う必要があるのです。
公共交通機関はより速くより便利に、より多くの便数を信頼性高く提供できるように改善する必要がありますが、同時にサステナビリティも重視しなくてはなりません。バスが電動のものにどんどん切り替わっているのもそのためです。
電気バスの注文台数は増え続けており、2022年前半までにバス会社に納品される予定です。
2022年前半には大量に導入される電気バス
3月末に無料期間が終了した後は、公共交通機関を利用しやすくするために、高齢者やすべての学生に無料パスが支給されるようです。
そのほか、電気自動車もすでに実用化されています。ジェノヴァ市は、アプリを使って電気自動車の利用やカーシェアができる市独自のサービスの導入や、駐車して車を充電できるレンタルステーションの設置を市内各地で進めています。
ジェノヴァ市は、スクリーンと位置情報検索デバイスを搭載した自転車「スマートバイク」のシェアリングサービスも実施しています。スクリーンに道路情報や公共交通機関の時刻表が表示されるので、たとえば自転車とバスを組み合わせての移動にも便利です。
このシェアバイクは会員だけでなく、非会員でも単発で利用できます。
年間パスはわずか40ユーロ。1時間までは無料で自転車を利用でき、それ以降は1時間ごとに課金されるシステムです。
自転車のロックは会員カードで、単発利用の場合はクレジットカードを使って開錠できます。
バイクステーションは街のいたるところにあり、学生や旅行者にたくさん利用してもらえるよう、大学周辺と港付近にはとくに多めに設置されています。
自転車専用レーンについてはまだまだ拡充の必要があって、この取り組みは間違いなく次の課題となりそうです。