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  • 2022.09.09
  • ストリート・アートとチェルトーザ界隈の再生
ジェノヴァではさまざまな展覧会が催されていて、最近ではドゥカーレ宮殿で開催されたバンクシー展が大きな注目を集めましたが、ジェノヴァの町そのものにも誇るべきストリート・アートがあります。
この街ではある地区をそっくりストリート・アートに捧げているのですが、その話はまたあとで。

歴史地区でアーバン・アートを楽しむなら、最初に訪れたいのがルッツァティ・ガーデンズ。ジェノヴァの路地にある古い建物に囲まれたこのカラフルな広場には、国内外のアーティストによるさまざまなグラフィティが施されています。
ルッツァティ・ガーデンズから街で一番大きいコメディ劇場の方へと向かって階段を下りていくと、「黒い羊」と名付けられた巨大な壁画が目に入ります。
広場の南側には海を描いた大きな壁画がありますが、狭くていつも薄暗い歴史地区の路地を歩いていると、ちょっと見つけにくいかもしれません。
あちこちの路地の角にもかなりの数の壁画が描かれているので、ジェノヴァの若者たちが歴史地区に夜遊びに繰り出すときには、こうした壁画を待ち合わせ場所にすることも珍しくありません。


ジェノヴァのストリート・アート

この街で一番人気があるのは、ウォーク・ザ・ライン・プロジェクトの壁画群でしょう。
数年前に始まったこのプロジェクトは、コンテンポラリー・アーバン・アートでいっぱいの道を作り、ストリート・アート・ツアーを楽しんでもらおうというもの。
イタリア国内外から選ばれたストリート・アーティスト100人がアルド・モーロ高架橋の柱に壁画を描き、旧港からランテルナ灯台まで港に沿って走る道路を、3キロ以上にわたって続くオープンエア・トンネルギャラリーに変貌させました。



高架橋の橋脚を彩るウォーク・ザ・ライン・プロジェクト

冒頭でも触れたように、地区全体がストリート・アートに捧げられた場所があるのですが、これにはとても大切な理由があります。
2018年にモランディ橋崩落事故の悲劇が起きたチェルトーザ地区では、倒壊の可能性があって危険だとしてたくさんの建物が取り壊されました。街の中心部から遠すぎず近すぎずという恵まれた立地と、街中に息づくコミュニティとしての深い一体感のおかげで、かつてチェルトーザはとても特別な場所でした。
橋の崩落によりチェルトーザ地区は町の中心部から切り離されてしまい、人々の生活は一変しました。いくつもの店や事業が閉業に追い込まれるなど、経済的にも社会的にも大きな影響を受けました。
地域住民たちは家を立ち退かねばならず、近くに新しく建てられた住宅への転居を余儀なくされました。その新しい建物群に、この地区と住民の「生活の再生」を託された地元のストリート・アーティストたちが壁画を描いたのです。
プロジェクトのキュレーターたちがアーティストに託そうと選んだテーマは、シンプルに「喜び」でした。
モランディ橋や43人の犠牲者を出した悲劇について直接触れることを避けたのは、なにか新しいもの、生命感あふれるもの、永遠に生き続けるものを提示したかったからです。
というわけで、色鮮やかで喜びにあふれた、力強い壁画が描かれました。
ある壁画には、愛と調和と快楽の象徴であるアントニオ・カノーヴァの「アモルの接吻で蘇るプシュケ」が描かれています。
また、ジェノヴァの有名な喜劇役者パオロ・ヴィラッジオ(故人)が悲しみと疑いの表情を浮かべて橋の方を「見て」いる姿を描いた壁画もあります。
3番目の建物の正面には、漁師や小さな犬を連れた婦人、金細工師など、アーティストが出会って言葉を交わしたその地区の住人たちがデフォルメして描かれています。

この屋外美術館を造り上げる過程で得られたなによりも大切なことは、アーティストとこの界隈に住む人々の間に、そしてアーティストと家々や街並み、建物との間に生まれ、育まれた親密な絆です。
現在、崩落した橋に代わってレンゾ・ピアノが設計した新しい橋が架けられ、新たな高架橋も完成し、町を出入りする交通の流れがよりスムーズになりました。このおかげで、チェルトーザに新たなチャンスが到来したのです。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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