サイズは小さいながらも変化に富んだ眺めが続くこの公園は、周辺地域の自然環境の多様さをそのまま体現していると言えるかもしれません。
公園には川や湖、森林、高台、牧草地もあるし、さらにはこの地域におけるアペニン山脈の最高峰である点も自慢のひとつで、オリーブ畑やブドウ畑まであります。
植物群ももちろん素晴らしいのですが、リグーリア州の自然保護区域に指定されているアヴェト渓谷はイタリア唯一の野生馬の群れが暮らす場所でもあります。
アヴェト渓谷の野生の馬
馬を愛する人がリグーリア州に来たら最初にすることと言えば、野生馬の見学ツアー。私もある団体が主催するツアーに参加してきました。大の馬好きの友人ルイーザのために、このツアーをプレゼントしたのです。
正確に言えば、この馬たちは「捨てられた馬」。数年前、何者かが10数頭もの馬を公園内に置き去りにしていきました。その馬たちが住む環境としては文句なしのこの場所で繁殖し始めた結果、野生の馬の一群が生まれたわけです。大自然が奇跡をもたらすというのは、本当のことなのです。
新しい世代の子馬たちは、人間と一切接触することなく育ってきました。
自然の中で、完全に自由な状態で生まれ育ったため、彼らは野生の馬としての行動や振る舞いを身に着けるべく変化していきました。ちょうどアメリカのムスタングやアジアの野生の馬のように。
この群れに属する馬は、現在50頭以上。美しさではイタリア屈指とされるこの公園の牧草地や森で暮らしています。この保護プロジェクトが出来たことによりいろんな活動が行われるようになり、馬を観察するツアー(もちろんある程度離れた場所から)も始まったのは素晴らしいことですね。
アペニン山脈の一部であるアヴェト公園にはアルプス原産の植物と地域固有の植物が共生しており、豊かな生物多様性をもたらしています。
ジェノヴァ、またはジェノヴァ市からほんの数キロほど離れたところにあるサント・ステファノ・ダヴェトという小さな村からツアーはスタートします。
森や生い茂る植物に囲まれた、手付かずのままのオアシスのようなこの村は、アウトドアスポーツや馬を愛する人たちが集う場所でもあり、その魅力は尽きません。
標高1,012mに位置するこの村は、すでにお話したアヴェト地域自然公園の一部となっています。
1,000人ちょっとしか住んでいない小さな村ですが、素晴らしい景色が一面に広がり、近くのモンテ・ブエの圧倒的な絶景が楽しめます。
サント・ステファノ・ダヴェトは歴史的にも常に注目の的となった場所です。戦略的位置にあることから、ローマ帝政期にはこの町の支配権をめぐってさまざまな戦いが繰り広げられました。道路沿いの標識によると、リグーリア地方における覇権を争ったローマ軍最後の戦争のひとつがここで行われたそうです。
第2次世界大戦中、パルチザンたちがここで反乱軍を組織したことで有名になったことも興味深いですね。
この辺には古い水車が多く、そのうちのいくつかは今も現役で、地元の小川の水流によって動いています。正確には3台が稼働中で、それぞれ小麦、トウモロコシとヒヨコマメ、栗を挽く水車が見学できます。
アヴェト渓谷にある現役の水車