• 2022.12.05
  • 名物の味はペストやフォカッチャ、魚だけじゃない?
そういえばこのブログでは、リグーリア地方の肉料理のことをまだ書いていないことに気が付きました。ということで、今日はそのお話をしましょう。
今まで話題に上らなかったのは私がベジタリアンだからですが、この地方にも紹介すべきユニークなお肉料理がたくさんあるし、お肉好きの皆さんのためにも、ここで取り上げるのがフェアというものです。
つい何日か前にスーパーマーケットのお肉売り場を通りかかったとき、チーマ・アッラ・リグーレと呼ばれる、リグーリア地方を代表する肉調理品を見かけました。出来上がりまでに相当な時間を要するこの料理は、完成したものは冷蔵庫でしばらく日持ちするし、冷凍庫に入れればさらに長期保存も可能なので、「料理」ではなく敢えて「調理品」と書きました。いわゆる「コールド・カット」、つまり冷製の食べものですね。


デリの店先に並ぶ、イタリアや地域ならではの名物の数々

「ポケット」と呼ばれる仔牛の胃袋を使って作るチーマは、とにかく手間暇がかかる一品です。
ジェノヴァのあちこちにあるデリではよく見かけるものですが、クリスマスなどの特別な行事の際に作ることが多いのも、作るのが大変という理由が大きいのでしょう。
ところで、この「ポケット」には何を詰めるのかご存知でしょうか。レシピは様々なのですが、腸や精巣、さらには脳みそなどを細かく刻んだものがフィリングに入っています。
使える材料は何でも利用していた時代に生まれた、いかにも田舎風のレシピなのですが、驚くべきことに今や「富」のシンボルみたいな存在になってしまいました。現在では臓物を取り扱う精肉店がめっきり減ったことも相まって、家庭でチーマを作る人はごく少数となり、ほとんどの人は街の高級デリで購入してこの料理を味わっているのです。
このようになんとも贅沢な食べものであるチーマは、まずその材料からして潤沢なのです。
みじん切りにした臓物にズッキーニやアーティチョーク、レタス、さらにモッツァレラチーズやハムなどのコールド・カットも少量加えてボウルの中で混ぜ合わせます。伝統的なレシピに忠実に作るなら、「ポケット」の真ん中に固ゆで卵を丸ごと入れるのも忘れてはいけません。
このフィリングにローレルやタマネギ、セロリ、ナツメグ、ニンニク、マジョラム、松の実、おろしたパルメザンチーズを加え、調理用の糸であらかじめ縫い合わせておいた「ポケット」に詰めていきます。
これを2時間以上かけて茹でて、出来上がったら、薄くスライスし、冷たくしていただきます。
いわば、厚めに切ったコールド・カットのような料理ですね。調理してスライスした状態で販売されているので、デリで買うほうがお手軽というわけです。
それ以外にリグーリアの肉料理で有名なものと言えば、ウサギ料理です。
ウサギ肉はイタリアではとてもポピュラーで、コニーリョ・アッラ・リグーレ(リグーリア風ウサギ肉の煮込み)は、リグーリア州以外の地域にも知られているほどです。
リグーリア州の内陸地域にある宿屋に泊まると、このウサギ料理が必ず出てくるほどで、日曜日の昼食のメニューとしても古くからおなじみです。
ウサギは狩猟で捕獲する、いわゆるジビエ肉。リグーリア州の森林には、野生のウサギ(野ウサギ)がたくさんいるのです。
本来のレシピでは野ウサギの肉を使いますが、現代版レシピには単に「ウサギ肉」と書いてあり、この頃は養殖のウサギ肉も使われるようになりました。
今でも猟師さんが野ウサギやシカ、イノシシなどを持ち込んでいる内陸地域のレストランでは、秋のシーズンになるとよく食べられているメニューです。
テラコッタ製の鍋でスープと一緒にコトコト煮たリグーリア風ウサギ肉の煮込みは、ローストポテトやグリル野菜を添えてサーブされます。
白ワインのほかにローレルやタイム、ローズマリー、ここでもお約束の松の実、黒オリーブ、刻んだニンジンなど、地元の材料をふんだんに使い、じっくり時間をかけて蒸し煮にして仕上げます。


コリーニョ・アッラ・リグーレ

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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